第27話
そしてそれぞれの年末が過ぎ新たな年を迎え、みんなで初詣に行こうと約束した日の早朝。
「あー、寒い」
里香たちと初詣に行くため、待ち合わせ場所である浜白高校の正門で他のメンバーが来るのを待っている京也の横でそう呟いたのは綾だ。
最初にきていた京也に続き寒そうながらも元気そうな綾がきて、新年の挨拶をして二人で大人しく残りの女性陣がくるのを待っていたのだった。
普段着である京也たちと違い着物の里香たちは時間がかかるようだ。
ちなみに、二人とも早く来ているので待ち合わせの時間までまだ余裕があるため、遅刻しているわけでは無い。
今日は最寄りの駅から電車に乗って神社に向かいそこで初詣をする予定だ。
新年ということで会話も弾み暇になることは無かったが外は寒いこともあり早く着物に着替えて欲しい京也たちであった。
ある程度のことを話し話のタネも減ってきた頃、里香と紗奈を先頭に女性陣がやってきた。
里香は京也たちの姿が見えると手を振ろうとしてて上げたが袖がずり落ちそうになり、慌てて腕をおろす。
着慣れない着物を着てまだ勝手が分からなさそうだった。
それを横にいた紗奈が微笑ましそうに見ていて、里香に注意していた。
年を明けてもいつも通りの仲の良さがうかがえた。
里香の着物が赤色、紗奈が白色に少し赤みがかった色で、加耶が薄紫色、真央が黒色だった。
そしてそれぞれ菜の花、なでしこ、あやめ、エーデルワイスの意匠がされている。
紗奈は髪も着物用に普段のポニーテールとすこし違う髪型に変えてきていた。
「あけおめー」
と里香と紗奈が。
「明けましておめでとうございます」
と丁寧に加耶が続き、「あけおめ」と対してめでたくなさそうにいつも通りの真央。
「おう、あけおめ」
京也と綾が返して無事に集合時間前に合流することができた。
よくそんなに着物があったなと京也が思っていると顔にでていたのか里香が「加耶ちゃんが年末に家帰った時に借りてきてくれたんだって」と教えてくれた。
加耶は「使わないで置いておくのも勿体無いしね」と付け足す。
「綾くん、どう?紗奈ちゃんの着物似合ってるでしょ」
と里香が唐突に綾に話をふる。
里香が自分の名前をだした瞬間に何を言うのか分かった紗奈は止めようとしたが面白がった真央に止められてしまった。
もう片方の当事者である綾の方は唐突にそんな話を振られ困惑してしまい呆然としていた。
なんか言ってやれよと京也は肘で小突いた。
周りの期待するかのような目線に耐えきれなかったのか渋々といった様子でその重い口を開く。
「・・・似合ってると思うぞ、その髪型も着物も」
恥ずかしいのか照れくさいのか消え入りそうな声だったか紗奈の耳にはしっかりと届いたらしく、恥ずかしいのと嬉しいのが入り混じった表情をしていた。
「どうせなら、可愛いの一言くらい言ってあげれば良いのに」
と楽しそうに事の顛末を見ていた里香が綾の苦労も知らずに言う。
「まあまあ、綾くんがこういうの言う事自体が珍しいから」
と加耶が綾を庇う。
「どうでもいいだろ、早く行こうぜ」
少し不貞腐れたように綾が言うので誰もこれ以上の事は言わなかった。
加耶達の話を聞くと初詣には電車で行くみたいなので全員でそろって駅に向かって歩き始めた。
これだけの人数、そして着物を着た女性陣。そのためにとても目立ってしまい道ゆく人からの注目を集めてしまう結果となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます