第26話

 相手ペアに挟まれたままで撃ち合うのは不利なだけなので位置が割れている前方の相手にむけて牽制射撃をし、右側に走る。

 それを好機とみた紗奈の後方にいた相手が前進し始める。

 紗奈も標的を変え牽制射撃をして、少しでも追い詰められないようにし始める。

 そのすきにもう片方が前進し、また狙いを戻すという千日手の状況に陥ってしまう。

 その状況に業を煮やした相手ペアは被弾も辞さないと言った覚悟で紗奈に詰め寄り始めた。

 その状況を見て紗奈も負けじと応戦するが手数が負けている状態ではどうしても後手に回ってしまう。

 このままではいずれやられてしまう。

 何かこの状況を切り抜ける方法を考えるが良いアイディアは思い浮かばなく、その後徐々に追い詰められながらも一人は弾を当てられたが結局は生き残ったもう一人の撃った弾に当たってしまい綾と紗奈のペアは負けてしまった。

 そして、紗奈が撃たれたあとサバゲ終了のブザーが鳴りサバゲのイベントは終わりを告げられた。


 ◇◇◇


「残念だったな」


 手に袋を持った綾が紗奈に声をかける。


「確かに残念だったね、二人でサバゲなんてあんまり無いのに」


「そうだな、でも賞品も貰えたし」


 そう言って手に持った賞品をぶらぶらと揺らす。


「でも本当に俺が貰って良いのか?」


「私にはSCARがあるしせっかく貰っても持て余しちゃうだろうし」


「俺だって自分の持ってるんだけど・・・。まあ、いいか」


 自分を庇かばってくれたことが嬉しかったからそのお礼も込めて・・・とは口が裂けても言えない紗奈であった。


「それじゃ体動かしてお腹も減ったし何か食べに行くか」



 そう言われて紗奈がビクッと反応するが、声を発することはなく綾も回りの店を見ていたので気づかなかった。


「あ、あそこなんて良いんじゃないか?」


 綾が示した所にあるのはパスタの店だった。

 パスタは紗奈の好きな食べ物であり、長い付き合いでそれを知っている綾が気を利かせたのだ。

 その事に紗奈は気付く。


「本当にあそこでいいの?」


 紗奈は綾が食べたい物を我慢しているのではないかと、確認をとる。


「別になんでもいい」


 綾から素っ気ない言葉が返ってくるが特に気にはせず、それじゃとその店に入って行くのであった。


 ◇◇◇


 その後も色んなアトラクションを楽しみ日が暮れ始めたので帰ることにした。

 遊園地の出入り口から出ると紗奈が名残惜しそうに後ろを振り返る。

 それに気付いた綾も立ち止り紗奈に話しかける。


「今日は疲れたな」


「でも楽しかったでしょ?」


「最初は嫌々だったけどな、悪くはなかった」


「ふふっ、ならそういう事にしとく」


 少しさみしそうにしていた紗奈の表情もほぐれ、柔らかくなる。

 そして、二人でバスに乗り来たときに降りた駅に戻る。


「日が暮れてきても結構人がいるね」


 辺りを見回した綾がふと呟く。


「私たちの住んでるとこより色々あるからね、まだ活気があるんだと思うよ」


 そう紗奈が答え賑わっている商店街から離れ駅に行きホームに入ってくる電車に乗った。

 この駅で降りる人も多く二人は席に座ることができた。


「いつ以来だろうね、こうして二人で出かけたのって」


「さあな、かなり前じゃないか?」


「そうだよね、みんなと出かけるときはあっても二人ってのは久しぶりだよね」


 昔を思い出し切なそうな目をしている紗奈に綾は思わず「今度機会があったら俺が誘うよ」と言ってしまった。

 言い終わってから、らしくないことを言ったと後悔したが紗奈が心なしか嬉しそうだったので訂正することはしなかった。


「じゃあ、約束ね」


 二人は約束をし、バスは駅に到着した。

 切符を買い駅のホームへ行きそのまま電車が来るまで待って駅に入ってくる電車を見守って、停車と同時に乗り込み空いていた席に座る。

 その後もたわいのない話をし、話すことがなくなった後は景色を見て時間を潰したりしていた。

 すると突然綾は肩に重みを感じた。

 横を見てみると紗奈が静かな寝息をたてながら寝ていて、こちらに寄りかかっていた。

 どうやら、電車が揺れた拍子にこちらに倒れかかったようだ。

 サバゲで頑張っていたことや、幸せそうな顔で寝ていたので目的の駅に着くまで起こさずにいることにしたのだった。

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