第25話

 綾と紗奈はそのまま合流し次の撃ち合いのことを考え二人で交互にリロードをし、草や木が生え高低差がある場所を歩いていく。

 木の根っ子や凸凹した地面に足を取られないように足元にも注意をむける。

 時折何処かで銃声が聞こえたが綾たちに向けて撃たれたことは無くむしろ平和であった。

 そして、その銃声もしばらくすると聞こえなくなり足音しか聞こえなくなった。


「あとどのくらい残ってるかな?」


 紗奈が綾に近づいて小声で話しかける。


「銃声もやんだし、もしかしたら俺たちともう一組のペアだけかもな」


 辺りを警戒しながら返事をする綾。

 先ほどの後ろをとってきたペア以降どのペアに会うことも無く時間だけが過ぎていた。

 そして二人が歩いていると、目の前の茂みからキラリと何かが光るのが見えた。

 綾は咄嗟に紗奈の腕を引っ張り自分の方へ引き寄せる。

 紗奈は突然の事にドキッとし顔を赤らめるが銃声がし、さっきまで自分がいたとこに弾が撃ち込まれたのを見て綾の意図を理解した。

 そして二人はその場所から少し走って移動しコンテナの中に入り込んだ。


「今さっき何かが光るのが見えた、恐らくダットサイトか何かだろう」


「てことは、私たちと同じエアガンを持参してきた人って事だね」


 貸し出していたエアガンの中にはダットサイトなどがついた物は無く、自分のエアガンを使っていることが分かる。


「一人しかいないみたいだから一応周りも気にしていくぞ」


 銃声が一つしかなかった事に気付いていた綾は紗奈にアドバイスをする。


「でも、二人でいたならさっき同時に撃ってきたんじゃない?」


 と、紗奈が綾のアドバイスにもっともなことを言う。


「確かにそうだけど、さっきのは俺が誰かが隠れていることに気づいた事に反応して相手がペアのやつが準備し終わる前に撃ったのかもしれないし、俺たちが気づかなかっただけで動作音が小さいエアガンで撃ってきていたのかもしれない。理由なんていくらでもあるさ」


 へぇー、と自分が考えもしなかったことを考えていた綾に感心しながら「わかった」と返事をした。

 そして、外の様子を顔だけ出して確認し敵を探すが発見できなかった。

 銃撃されることもなかったので、二人はタイミングを合わせてコンテナの左右から同時に飛び出し物陰に隠れた。

 相手がこちらを見失ったのか身を潜めて機会を狙っているのか、わからないが場所替えをしても相手はなんのアクションも起こすことはなかった。

 しかし、先ほどの光の反射がスコープの物だとすればそれなりの距離からでも狙えるはずなので油断はできない。

 ただ、綾は相手がハンドガンにつけているなんらかの物はあまり使い慣れた物ではないのだろうと考えていた。

 普段から使っている物なら光が反射しないように気を使うはずだ。

 それなのに、光の反射で綾たちに待ち伏せがばれてしまったと言うことはサバゲで使うのは初めてのことなのかもしれないと予想が簡単につく。

 つまり相手の懐に入り込めれば使い慣れたエアガンを使っている綾たちの方が有利だ。

 なので、綾たちはまず相手に近づくのが一番の目的になる。

 目立たないように紗奈と合わせて密かに移動し、人影を探す。

 間も無く綾が少し開けた場所に出ると、突如銃声がして綾に弾が当たる。


「ヒット」


 そういって綾は紗奈の方を一瞥いちべつしてセーフティゾーンへ歩いて行った。

 残された紗奈は綾にあたった弾が飛んできた方に目をやる。

 するとよく見なければ分からないが微かに伏せている人の形が見える。

 姿を確認し近くにある遮蔽物をうまく使い、近づいて行く。

 相手も撃ってくるが右に左に動きながら遮蔽物を使っているので近くには当たるが紗奈自身に当たることはない。

 伏せていた相手が立ち上がるまでの隙を狙い紗奈は一気に近づく。

 相手が立ち上がったときには肉薄してPx4を撃っていく。

 相手もうまくかわしていく。

 紗奈が相手が回避行動をとっている間にさらに距離を詰め、目と鼻の先にまで近づく。

 すると、突如後ろ側から銃声がし紗奈の近くの地面から土煙があがる。

辛くも被弾しなかった紗奈は方向転換して木の影に隠れる。


「綾の言ったとおりね」


 このタイミングで現れたと言うことは紗奈が追いかけていた相手のペアとみて間違いない。

 これまで一人だったのは油断させた所で挟み込む作戦だったのだろう。

 綾が言っていたことが現実になったのだ。

 さっきまで有利だったのが一転不利な状態に陥おちいってしまった。

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