第21話

 ジェットコースターが終わり二人はアトラクション乗り場から離れる。


「お前、すごく楽しそうだったな」


 綾が隣を歩く紗奈に話しかける。


「久しぶりに乗れたからね」


 乗り終わった今でも紗奈の嬉しそうな表情は変わらずにいた。

 そんな様子を見て綾は、紗奈に得意でない場所に連れてこられたけど来て良かったと思った。


「幸せそうだな」


「まあねー」


「それで次はどうすんだ?なんか時間気にしてたみたいだけど」


「あと一つなにかやれるくらいの時間はあるかな」



 目の前にあった園内に設置されている時計を見て答える。


「私はとりあえずいいから、あんたがやりたい事でいいよ」


 紗奈に無理やり連れてこられた綾にやりたい事などあるはずもなく、辺りを見回し始めた。


「急にそう言われてもな。・・・あ、あれでいいや」


 そう綾が言い指差す先にはおどろおどろしい見た目をしたお化け屋敷があった。

 紗奈もその指先が示す方を見る。


「なに、私を怖がらせようって魂胆?」


「いや別にただ目の前似合ったからって理由」


「ま、別になんだっていいわよ。それじゃ行きましょ」


 ◇◇◇


「・・・」


 お化け屋敷から二人無言ででてきた。

 二人とも中で起きた驚くはずであるポイントでも驚く事なく冷静になって見ていたので盛り上がりにかけたのだった。

 おかげで、お化け役の人も気まずそうにしていてばっかだった。


「お化け屋敷ってもっと騒いで楽しむものじゃなかったか?」


 綾が率直に思った事を言う。


「そんな事言われても、あんなんじゃ全然驚けないって」


「それもそうか」


 お化けに扮した人間の気配が二人には分かってしまったため、楽しめなかったのだ。

 そもそも二人はお化けが怖いわけではないというのも理由の一つとしてあったのだが。


「それで、次の場所なんだけどそろそろ行きたいとこがあるんだけど良い?」


「良いもなにも俺は元々お前に連れてこられただけなんだから問題なんてあるわけねーだろ」


「それはそうなんだけど、行ってから文句言われたくないし」


「俺が文句言うような所なのか」


 少し考えてからはぁ、と大きく息を吐く綾。そして諦めたかのような顔をしていた。


「お前がそんな言い方するって事はそこにどうしてもいきたいんだろ。いいよ、別に」


 綾が素直に言う事を聞いてくれると思ってなかった紗奈は一瞬呆然とするがすぐに気を取り戻す。


「あんたがそんな事言うなんて珍しいじゃない。・・・ありがとね」


 頭の中に園内の地図が入っているらしく、迷うことなく紗奈の目的地へとついた。


「・・・ほんとにここなのか?」


 紗奈が行きたがっていた場所について綾が初めて口にした言葉がこれだった。


「ええ、そうよ」


 二人がついた場所にはどう見てもサバゲをやるフィールドだった。

 ドラム缶やバリケードなどが置いてあったりサバゲ最中の映像を撮るためのカメラが設置されていた。


「なにこれ」と、素直に思ったことを言う綾。


「なにって私たちにピッタリの場所じゃん」


「確かにそうだけどさ」


 サバゲの大会の賞品が遊園地だなんておかしいと思ってたんだと呟く綾。


「ん、なんか言った?」


「なんでもねー・・・今日はここでサバゲのイベントがあるのか」


「あれ、その事言ってないよね?」


 否定せず疑問を口にした紗奈に綾は「ほらあそこ」と言いながら指差す。 その先にはサバゲの受け付け場所らしきところに旗が設置されていた。


「あ、あそこに旗あったんだ」


「てかサバゲやるのはいいけど、おまえスカート大丈夫なのか?」


「なに、そんなに気になっちゃう?」


 紗奈の服装を心配して言った綾に冗談を言って返す。

 綾はからかわれると思っていなかったので言葉につっかかりながら否定した。


「大丈夫だよ、下にスパッツはいてるし」


「だったらいいけどよ。なら受け付けしちゃおうぜ」


その言葉を合図に二人は受け付けにむかった。

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