第20話

 紗奈と綾が二人で無駄話をしていると何時の間にか目的地の近くまで来ていたらしく紗奈が「そろそろ降りるよ」と教えると綾はバスの窓から辺りを見回した。


「あれ、この辺って確か・・・」


 そして綾はある事に気付いた。

 その後バス停に着き扉が開いたので紗奈は綾を連れ立って料金を払いバスを降りた。


「ほら、あそこだよ」


 目的地がすでに目の届く所にあり、紗奈はそこを指差した。

 指差した場所には新しめの普通の遊園地より少し大きいぐらいの遊園地があった。

 すると隣にいた綾はあからさまに顔をしかめた。

 それに紗奈は何とか言おうとしたが、綾の人混み嫌いは昔から知っておりこうなる事は予想済みだったので黙っておくことにした。


「なんでここに連れてきたんだ?」


「前にみんなで出た大会で賞品として、ここのチケット貰ったじゃん?」


「ああ、そういえばそんな事もあったな」


 この遊園地の経営者とサバゲの大会の主催者が同じで賞品の中にこの遊園地のチケットがあったのだ。


「あれ、今日までしか使えないんだよね」


「本当にそんな理由か?それだけだったら別に俺じゃなくてもいいだろ」


「なんとなくよ、なんとなく」


 不満そうな顔は変わらなかったが一応納得したようでそれ以上はなにも言わなかった。


「それじゃ、行こ」


 何時の間にか手に持っていたチケットを綾に見せるようにして遊園地に向かった。

 中にはいるとクリスマスイヴだからだろう、カップルと思われる男女が多くいた。少し戸惑いながらも気にしないで進む綾と紗奈。


「そんで最初はどこに行くんだ?」


 綾がそう聞くと紗奈は腕時計を見て時間を確認した後あたりを見回してから答えた。


「まだ時間あるからとりあえずあそこにあるジェットコースターかな」


 時間があると言う言葉が少し引っかかったが綾は特に気にしないことにした。


「おまえ、ジェットコースター好きだったっけ?」


「それなりにはね」


 そこまで人の並んでいないジェットコースターの列の最後尾に着き自分達の番がくるのを待つ二人。

 ここのジェットコースター他の遊園地と比べて少し大きいだけで他には特に特徴といえるものはなかった。

 そして、人が少なかったこともあり少し待っただけですぐにジェットコースターに座れることができた。

 席はジェットコースターの一番前という景色の良い場所だった。


「やった、一番前だ」


 楽しそうな顔で、嬉しそうな声でそう言った紗奈とは反対に普段となんら変わりない表情で座っている綾。


「どうしたの、もっと楽しみなさいよ」


「だって別にジェットコースター好きじゃないし」


「あれ、そうだっけ」


「そもそも、遊園地自体こないから」


「一緒に来てくれる相手がいないもんね?」


「うるせー」


 そんな軽口をたたいた後、ジェットコースターが動きだしたのでお互いに自然と口を閉ざした。

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