第18話

 浜白高校に帰ってきて里香と別れた後、京也は散歩(と言う名の巡回)をしていた真央に今日一日の加耶の行動を聞きだす代わりとしてNSGの仲間が元気に過ごしていた事を話す。

 それを聞いた真央は安堵の様子をうかべる。

真央は人に教えるのが好きで基本的な事を陸達などに教えたりしていて、NSGの教導隊に入るのが夢らしい。

 そんな彼女は自分の教え子達が特に気になっていたのだ。


「こっちは、特に無かったよ」


 いつも通りの無愛想な表情で言う。

 しかし、表情とは裏腹に真央の声には安堵の色があった。


「・・・貸し一つ」


 真央は続けてそう言った。突然今日一日加耶の護衛を任されたのだ、それくらいは当然と顔にでている。


「さいですか」


 散歩を続けると言う真央と別れ、京也は部屋に戻る事にした。

 寮に入り階段を上がり部屋へと向かっていると綾を見つけた。


「よう」


 京也が後ろから綾に声をかける。

 声をかけられた綾は少し驚きながら後ろを振り向いた。


「どこかいってたのか?」


 厚着をしていた京也を見て気になった綾が問いかける。


「ああ、さっき電車に乗って帰ってきたんだけど、お前も紗奈と一緒に居たよな?」


 う・・・と言葉につまる。


「まぁ・・・な」


 無意識に目を逸らしながら言う。


「どうかしたか?」


「いや、見られていたとは思わなかったからちょっと驚いたんだ」


「紗奈と二人で買い物に行ってたのか?」


 京也は電車に乗っていた時に綾達の近くに少し大きめの袋があった事に気づいた。


「ああ、部活で使う物をちょっとな」


「ほんとはクリスマスデートなんじゃないのか?」


「そ、そんなんじゃないって」


 綾は京也の軽い冗談に言葉を詰まらせる。


「そういえば、深条の部活は聞いたけど綾のは聞いてなかっな・・・何やってるんだ?」


「紗奈と同じ部活だよ」


「てことはサバゲ部か。前に見に行った時には見かけなかったけど」


「ああ、あの時は用事があったんだ。後で紗奈が里香ちゃんがサバゲ部に入った事を嬉しそうに語ってくれたよ」


 その時の紗奈の様子を思い出した綾は少し笑いながら言う。


「そうだったのか。・・・サバゲ部で使う物ってエアガンでも買ったのか?」


「紗奈の奴に勧められてな。最近変えようと思ってたんだ」


「それで何買ったんだ?」


「G36cって奴」


「へー」


 銃の名前を聞きドイツのG36という名の銃を小さくした物だったなと思い出す。


「それじゃ、里香の様子も気になるし今度またサバゲ部に見学しに行こうかな」


 綾がサバゲをやっていると聞いて興味が湧いた京也はそう言った。


「あんま、期待すんなよ」


 苦笑気味に綾はそう言い返す。


「てか前から思ってたけど京也って、わりと過保護だよな」


「里香の事か?自分ではそんなつもりはないんだがな」


 里香の事も気になると言ったのは里香が本気でサバゲをやっていないか心配になったからだ。

 里香が本気でやったら恐らく当たり前のように勝ってしまうと予想していた。事実、過保護な場面も少しはあるのだが。


「そう言う事は本人は自覚してないってよく言うしな」


「そうか?」


「ああ」


 綾に断言され渋々認める京也。


「それじゃ、京也が見学しにくるの楽しみにしてるよ」


 眠くなってきたのだろう、あくびをしてそう言い残し綾は自室へと帰って行った。

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