第17話

「うぅ、日が落ちてきて寒い・・・」


 NSGから外に出て寒さに堪える里香。


「ああ、そうだな」


 里香は寒そうに手をこすり合わせたり息を吹いたりしている。


「今度マフラーでも買ってやろうか?」


「え、いいのお兄ちゃん」


「たまにはな」


「やったー」


 思わぬ京也の提案に里香は寒さも忘れて喜ぶ。


「じゃあそれが俺からのクリスマスプレゼントって事で」


「私もお兄ちゃんにプレゼントするね」


「毎年言ってるけど別にいいって」


「いつも、貰ってばっかだと流石に悪いし。たまには素直に貰ってよ」


「そこまで言うなら今年は貰うよ」


「やった」


 弾むような声で答え、里香は京也に何をあげようか考え始めた。


「そんな真面目に考えなくても良いぞ」


 真剣に考える里香に苦笑しながら言う。


「だってお兄・・・痛っ!」


 会話に集中していた里香は目の前に迫っていた電柱に気付かずに衝突してしまった。


「ほら言っただろ」


「危ないなら危ないってはっきり言ってよね!」


 頭を痛そうにさすりながら文句を言う。


「流石に気付くだろうと思ったんだが」


 若干涙目になった里香をなだめつつ足を進める。

 里香も歩き出した京也の後を追う。

 NSGの拠点があるのは田舎では無いが、都会とも言えない中途半端な場所なので電車の本数もあまり多くない。

 そのため、道中で時間を食って電車に乗り遅れてしまうと寒い中次の電車を待たなければならない。


「みんな変わりなかったね」


「ああ、それが一番だ」


 長期間の任務などを終えて戻ってくると、怪我をした同僚の姿を見かける事がある。

 それはしょうがない事だし今までに何回も見てきた事なのだが、そんな事は関係なく嫌な気持ちにさせられてしまう。喧嘩別れになってしまった時などは最悪であった。


 ◇◇◇


 駅に着き電車が来るまでの時間を適当につぶし、場内アナウンスと共に駅に入ってきた電車が止まると外の寒さから逃れるように中へと入ると、二人は適当な席に座った。

 しばらく電車の揺れに身を任せていると幾つかめの駅に着き扉の周りには出入りする人が行き来する。

 何気なしにその様子を見ていた京也はその中に見知った顔―――綾と紗奈を見つけた。

 京也達は後方に座っており綾達が入ってきたのは同じ車両の前の方だったので二人は京也達には気付いていない様子だった。


「奇遇だな、ちょっと声かけてくるか」


 そう言って腰をあげると横から綾達を眺めていた里香が手を出して止める。


「ちょっと待って・・・」


 突然手を出されて動作を中断せざる終えなかった京也は、不思議そうに里香を見つめる。


「なんか・・・いい感じじゃない?」


「そうか?」


「うん」


 里香にそう言われ改めて見てみるとたしかに普段よりなんだか距離が近い感じがする。

 そう納得した京也は再び腰を下ろし、目的の駅に着くまで綾達が楽しそうに話たりちょっとした口喧嘩をする姿を微笑ましく眺めて過ごした。

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