第16話

 京也と里香は兄妹という事で同室となっている。

 二人の部屋は真央や陸達の部屋よりも奥にあり知っている仲間がいるか探しながら行くが見知った顔を見つける事はできなかった。

 どうやら私用で出かけている仲間もいれば任務で部屋を空けている仲間もいるようだ。

 前者の方が数が多く後者の方に分類される人は少なかった。


「みんないないね」


「忙しいんだろ、しょうがないさ」


「ざんねん」


 一通り見て回った後二人の部屋に到着した。

 京也は懐から鍵を取り出し鍵穴に差し込みドアを開ける。


「やっぱり自分の部屋が落ち着くね」


「そりゃあな」 


 苦笑気味に京也は返事をした。

 中に入って早々里香が自分のベッドへとダイブし転がり始めた。

 それを見た京也は一瞬注意しようかと思ったが普段おちゃらけて見える里香も気を 張っていて疲れているだろうと思い何も言わない事にした。

 そして京也はというと自分の机の引き出しを開けて中を漁っていた。


「確かこの辺に置いておいた気がするんだが」


 少しして机の中から探していた物を見つけだす。

 用は直ぐにすんだが里香を見て京也はこの後は特に重要な用事も無いのでもう少しここに居て落ち着いていこうと思った。


 ◇◇◇


 それから幾許かの時が過ぎた。


「いいかげん行くか」


「・・・ぅん」


 ゆっくりし過ぎて眠くなってきていた里香の目を覚ましていよいよ藤堂の所へ向う事にした京也達は、藤堂のいる執務室へと足を向ける。

 先頭を行く京也が何気なしに後ろを振り返ると後ろから着いてきていた里香が悩んでいるような様子だった。


「どうした?」


「・・・ん?ちょっと考え事。大した事じゃ無いから気にしないで」


「そっか」


 対した事じゃないと里香に言われた京也はそれ以上深く聞く事もなかった。

 ほどなくして二人は藤堂が普段仕事をしている部屋に着いた。

 京也はノックして扉を開ける。


「あれ、留守か」


 だがそこには藤堂の姿は見えなかった。


「いないんじゃ仕方ないね」


 里香の言うとおり藤堂がこの部屋にいない時は帰りが何時になるか分からないので、あまり時間に余裕の無い今はここで藤堂の帰りを待ってるわけにはいかない。


「置き手紙でもしておいたらどうだ?」


「えー・・・」


 里香は不服そうにしながらもなっとくしたのか紙をとり手紙を書き始める。


「お兄ちゃんも、書いてよね」


「ああ」


 二人で手紙を書き部屋を後にした。


「他に行きたい所、あるか?」


「うーん、一通り行きたかった場所は行ったかな」


「やることがないならいつまでも学校を空けたままにしたままにもできないし、帰るか」


 今やれることをやり終わった京也達は浜白高校の寮へと帰る事にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る