第14話

 無事NSGの敷居をまたいだ京也達はまず射撃場に行く事にした。

 射撃場はCQBなどの訓練所と同じく正門から見て左側の外にある。

 射撃場の受付の建物に着くと中に入ると受付には見知った顔があった。


「おう、久しぶりだな」


そこには、がたいの良い中年と呼ぶにはまだ少し早い年頃の男がいた。


「まだ任務中のはずだろ。なんだ逃げて帰ってきたのか?」


「そんなんじゃないよ、ただちょっと暇になってな」


「そうか、ここに来たって事は撃っていくんだろ?」


「ああ」


「里香ちゃんの方は良いけどお前の銃の弾は、他に使ってる奴がいないんだからお前がいない間は邪魔になってしょうがない」


「はいはい」


 軽い挨拶を終え京也はMP7、里香はAWPを、そしてそれぞれマガジンを貰い建物を出て野外にある射撃場に行く。

 京也と里香は間を空け隣に並ぶ。


「分かってるとは思うけど、急所を狙うなよ」


 京也は撃つ準備をしている里香に声をかけた。

 NSGでは止むを得ない場合以外は犯人を生きたまま捕獲する事を信条にしている。

 なので射撃練習の時も急所を狙う事は無い。


「そんな事分かってますー」


 若干むくれつつも答えた里香はヘッドホンをして、早速P2000を構えて白い板に黒い人の形が描かれた目標を狙いトリガーを引く。

 するとP2000から銃声がし、薬莢が飛び出る。

 その隣で京也も準備を終えブレンテンを構えて撃つ。

 弾が無くなってリロード、そしてまた狙いをつけて撃つ、それを繰り返す。

 ハンドガンの弾を撃ち終わった二人はそれぞれNSGに保管されていた銃に持ち替える。

 そして、里香はプローンと呼ばれるうつぶせの状態になり800メートル先の目標に合わせてスコープの調整をする。

 マナである里香は、風向きを測ったりなど観測手スポッターが本来やることを魔法を使って一人でこなしている。

 そして、そのまま調整し終わったスコープを覗きこんだ。

 大きく息を吸い、吐く。また息を吸い、そして止める。

 里香の引き金にかけていた指に力が入りやがてけたたましく銃声が鳴る。


「あ・・・」


 スコープ越しに目標を見ている里香の口から声が漏れる。


「なんだ外したのか」


 横で見ていた京也が口を出す。


「外れたっていっても、横の白いふちの部分には当たったもん」


 スナイパーは普通にやっても、その射撃距離のため当てるのは難しい。

 なぜなら風や重量の影響を受ける事を考慮しなければならないからだ。

 そのうえ里香が狙ったのが面積の大きい胴体ではなく腕を狙った事も関係している。


「そうか、まあ頑張れよ」


 そう言って京也は自分の銃を構える。

 標的にアイアンサイトの狙いをつけてトリガーを引く。

 里香の時とは違い複数の銃声か鳴り響き、いくつもの弾痕が目標に刻まれる。


「・・・こんなもんか」


 そう納得して京也はリロード、構える、撃つをブレン・テンの時と同じ動作を繰り返す。


 ◇◇◇


 京也が先に撃ち終わり里香が撃ち終わるまで待ち、一緒に射撃場を後にした。

 その後二人は昔馴染みの仲間が暮らしているNSGの寮へと向かう。

 寮は射撃場の反対の右側に存在する。


「みんな居るかなー?」


「いや、流石に何人かは出払ってるだろ」


 任務があれば京也達のように長期間帰ってこれない事もありメンバー同士でも合える機会はそう多くない。

 寮には京也達の部屋もあり、二人はまず自分の部屋に向かう事にした。

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