第13話

 ―――クリスマスイヴ


 静かな男子寮にコン、コンとノックする音が響く。

 自室のドアをノックされ部屋の主である京也はめんどくさいと思いつつもドアを開けた。

 するとそこには微笑んだ里香がいた。


「クリスマスイヴに一人だと寂しいだろうから可愛い妹ちゃんが来ましたよー」


「・・・」


 それを見た京也は面倒な事になりそうだと思いドアノブから手を離す事なくドアを閉めた。


「え・・・ちょっとお兄ちゃん!」


 予想外の事に里香は叫びながらドアを叩く。

 里香が大きな声を出しながらドアを叩いたので他の部屋にいる生徒の迷惑になってしまうと思った京也はドアをしぶしぶ開ける事にした。


「なんだよ、他の奴の迷惑になるだろ」


「ごめ・・・って元はと言えばクリスマスイヴに一人で寂しいだろうなって思って来てあげたのにドアを閉めるお兄ちゃんが悪いんでしょ!」


 お前が変な事言うからだろうと京也は思ったが口には出さなかった。


「すまんすまん」


 軽く里香に謝りながら里香を部屋の中に招き入れる。

 里香は我が物顔でソファーに座った。

 京也はそれをとがめる事もせずに里香に話を振る。


「それで何のようだ?」


「さっき言ったでしょ、お兄ちゃんが寂しいだろうと思って」


「つまり寂しかったから俺ん所に来たと」


「ち、違っ・・・」


「はいはい」


 里香が図星を言われて赤くなった顔を背ける。

 紗奈達が用事で出払ってしまっているので一人で部屋に居てもやる事がなく京也の部屋に来たのだ。

 京也も長年の付き合いだけあってそのうち来るであろうと予想はしていた。


「何かやりたい事でもあるか?」


「んー、特に無いかな」


「そんじゃ久しぶりにNSGに行くか?年末年始もどうせ行けないだろうし」


「銃の練習とか久しぶりに会いたい人とかもいるし・・・そうしよっか」


 いくら潜入先で鍛えているとは言え、銃を撃ったりする事はできないのでたまにNSGに戻るなどして練習するしかない。

 だが加耶の護衛がある為加耶が外出時などの限られた時にしかNSGに行く事はできない。


「じゃあ支度するからちょっと待ってて」


 京也達の愛銃は京也の部屋に置いてあり、何かあった時反撃しやすいように買い物に行く時などを除いて荷物は持たないようにしているため京也達は普段軽装で動くため持って歩く物は財布と携帯にPDA、それとハンドガンぐらいだ。

 京也はそれらを数分とかからずに用意した。


「ほれ、里香の銃」


 そう言って待っていた里香にP2000と弾の込められたマガジンを渡す。

 里香は久しぶりにふれた愛銃の感触を確かめる様にさわる。


「それじゃ行くぞ」


 京也が歩き出すとその後を里香が着いて行く。

 学校の敷地を出た京也達は駅までの道のりを紗奈に教えてもらった道を通って向かう。

 道中で野良猫を見つけた里香が可愛がって時間をとってしまったが無事駅につく事ができた。

 NSGに行くにはここから電車に乗って向かう必要がある。

 運良く電車が来る時間についたので無駄な時間をすごさずにそのまま電車に乗りこんだ。


「ちょうど乗れて良かったね」


「そうだな」


 ◇◇◇


 電車に乗って着いた先の人気ひとけの少ない駅からNSGまで歩いて向かう。

 NSGは公には犯罪に対抗する国営の企業という事になっている。

 スナイパーライフルの射撃場もあり最長で二キロもある為NSGの敷地は巨大だ。


「あんな長い所使う事なんて無いのにな」


「まあねー」


 歩いて数分、NSGに到着した二人はそのまま正門へ向かい警備をしていた人に許可証を見せ中に入って行った。

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