第12話
「そんな・・・」
京也は里香と初詣の時の打ち合わせを終え寮の自室に戻した後、初詣の事を藤堂に説明していた。
電話越しに聞こえてくる藤堂の声にうんざりしながらもしっかり答える。
「初詣が無くてももともと任務なんですから帰るわけないじゃないですか」
「真央も居るし問題ないかと思って・・・」
「そんな能天気な」
「それじゃあせめて里香とも話をさせてくれ」
今まで藤堂も本気で言っていた訳ではなく、譲歩した振りをして里香と話をしたいだけなのだ。
藤堂が直接里香に直接電話してもでてくれないらしい。
重大な事がある時は里香の一応上司に当たる京也に話が行くため任務に支障はない。
「嫌ですよ、本人が嫌がってるんですから」
実際は藤堂にきつい事を言った後「言い過ぎちゃったかな?」的な表情をする時もあるのだが京也もその事は知らなかった。
そもそも里香自身も自分がそんな表情をしていることに気付いてはいない。
「少しは大人しくしてて下さい」
「そんな事言われたも無理な事は無理!」
藤堂の言葉に返事をするのが面倒になった京也はそっと電話を切る事にした。
「・・・・・・」
「あれ・・・聞こえてる?もしもーし」
だがその事に気付かず藤堂は声をかける。
しかし声は離れた京也の耳には届かないのであった。
京也は携帯をズボンのポッケへとしまい座っていた椅子から立ち上がる。
「さてと・・・走って来ますか」
一週間前にこのままほとんど何もしないでいるのも体力の低下に繋がると思い暇な時には走るようにしていた。
何かあった時のために体が動くようにと思ってのことだった。
流れる暗くなってきた景色を横目に一定のリズムで呼吸をしスピードを緩める事無く走り続ける。
10分ぐらい走ったぐらいだろうか、目の前に武部の姿を捉えた。
「よう、何してんだ?」
「あ、京也先輩こんばんは。これからランニングしようかと思いまして」
「なんだ俺と一緒か」
「先輩も走ってたんですね」
驚いた風に武部が言う。
運動部でもない京也がランニングをしていたのが意外だったのだろう。
「ああ、昔から走ってたんだけどな最近やってなくてな」
「僕は部活の為にです。紗奈先輩凄いですし里香先輩も入部したてですけど上手いですし、正直嫉妬しちゃいますね」
里香は長年本物の銃を扱ってきたのだ、その経験がエアガンを使うサバゲでもいかされているのだろう。
といっても里香は本来は狙撃手スナイパーなのだ。
だが狙撃手としての出番があるのは少なく京也達と前に出る事も多く狙撃銃スナイパーライフル以外の銃もある程度扱える。
「・・・そうか、がんばれよ」
「はい!」
そういうと武部は走り去っていった。
「さてと、俺は帰るか」
武部と会って話をした地点から寮までそんなに離れているわけでは無いので帰る事にした。
日も落ちて寒いので自動販売機で体が温まる飲み物を買い部屋へと戻る。
部屋に帰った京也は本を読み始めた。
◇◇◇
「さて・・・」
本を読み始めてから時間がたち眠気を覚え始めた頃、京也は晩ご飯を作って風呂に入り今日の疲れを落とす事にした。
冷蔵庫にある物を適当に選び料理を適当に作りシャワーを浴びに風呂へ向かう。
―――温かいお湯を浴びでてきた京也は空いた小腹を満たすため軽い料理をして食べ、一息入れたところで初詣の時の事を考え始めた。
当日の護衛の方法や相手が攻めてきた時の対処法、相手の中にマナがいた時の事など多岐にわたる可能性。
護衛は何時も後手に回ってしまう。たとえ相手の潜伏場所が割れても護衛対象を放っておけない以上攻めに回ることもできない大変な任務なのだ。
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