第11話
紗奈や里香と買い物に行った日から数週間が無事に何事もなく過ぎ冬休みが間近に迫ったある日の事だった。
「みんなは年末年始どうすんの?」
今日は珍しく里香達が寝坊し弁当を持って来ていなく、京也も食堂で食事を済ませようとしていたので綾・加耶・真央を誘って食堂に行く事にした。この頃になるとクラスは違えどこのメンバーで過ごすのが普通となっていた。
さっきまでクリスマスはどうしようかと話し合っていたが用事が入っているメンバーのが多いらしく特に何もしない事にになった。
そんな中、紗奈がこの場にいる全員に切り出した。
「私は・・・家に帰らずに寮に残るかな」
加耶が少し言い淀みながらも最初にそう言った。
少し気になったが話の腰を折る事もないだろうと京也は思い口にはださなかった。
「俺達も別に用は無いよな?」
京也が里香に確認を取る様に言う。
「そうだね、あの人には年賀状でも送っとけば良いかな」
本人とうどうが聞いたら悲しむだろうが護衛対象である加耶が寮に残ると言う以上京也達が新年の挨拶をしにNSGに戻る事はできない。
次に「俺もここに残るかな」と綾が言い「みんなと一緒」と真央が言った。
年末年始だと言うのに誰一人として家に帰らない事に京也は疑問を持ったがここに居るのは寮で生活しているメンバーなので家が遠かったりするなどのなんらかの理由があるのだろうと思う事にした。
「それじゃみんなで初詣行かない?」
「行きたい、行きたい!」
里香が元気に飛び上がりそうな声をだす。
「行った事ほとんど無いしな、たまには良いか」
「俺もいいぞ」
続いて京也、綾の男組も行く事に承諾した。
「行く」
真央も相変わらずの様子で答える。
いつも通りの声だったが楽しみにしている事は付き合いの長い京也には分かっていた。
「じゃあ元旦はみんなで初詣行こうね」
「みんなで初詣行くの楽しみだな」
「里香は初詣行く時に着物きて行く?」
「着物か・・・着てみたいけど持ってないしね」
「幾つか持ってるけど里香が着れそうなのあったらかしてあげようか?」
「でも着付けが・・・」
着物を着る機会が無かったため京也は勿論の事里香も着るやり方が分からない。
「大丈夫だって私分かるから」
「よく着物の着付けなんて出来るな」
京也が感心したように言う。
着物を着る習慣が減っていく現代に置いて着付けが出来ない人は珍しくない。
「実はね、桜庭さくらばさんに教えて貰ったの」
「・・・真央が?」
真央の方を見ると、すごいでしょ?と言わんばかりにこちらを見返していた。
京也は気になる事があったが真央の様子を見る限り話てくれそうに無い。
昔から器用な方で色々やっていた事は京也も知っていたが着付けまでできるとこは知らなかった。
「うん」
「なら初詣の時は着物きて行こうかな、紗奈ちゃんよろしくね」
「任せといて!」
京也は里香のサイズの着物を紗奈が持っているのか疑問に思ったが紗奈自身が言い出した事なので心配しなくても大丈夫だろうと一人納得していた。
◇◇◇
その日の放課後、京也は自室に里香を呼びだした。
「元旦の日の事だが襲撃される可能性がある以上、ハンドガンは持って行った方が良いだろう」
藤堂には外の護衛は他がやると言われているが元旦に行く以上、人混みがすごいと予想されるので見ず知らずの護衛をあてにはできない。
それに友達と言っても問題ないほど仲良くなった加耶を危険な目には合わせたく無かった。
なので一緒に出歩く時ぐらいは自分達でも守れるようにしようと考えていた。
ハンドガンを直接持って行くのは私服で行くので銃を隠せる用に工夫できる事などな理由があるためだ。
「ん・・・そう・・・だよね」
友達と初詣に行く事を楽しみにしていた里香だが冷静になって少ししょんぼりしてしまう。
「でも少しぐらい羽目を外すのは良いぞ。真央に手伝ってもらうし・・・」
「なんか気になる事でもあるの?」
と言い里香は京也を心配そうに見つめる。
「いや・・・大丈夫だ」
京也の気になっている事は初詣とは関係無く深刻な問題というわけでも無い。
それに里香に全く関係がない訳ではないがまだ予想の域を出ないのも理由の一つだ。
なので、京也は今のところは里香にも伝えないでおく事にしたのだった。
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