第10話

 紗奈に案内されてる道中紗奈と京也達はたわいない話をしていた。


「そういえばさ、里香達は真央とどこで知り合ったの?」


「あいつとはバイト先で会ったんだ、そん時に仲良くなって友達になった」


 NSGの仕事で知り合った京也達なのでまるっきりの嘘という訳では無い。


「私はてっきり彼女かと思ってたよ」


「どうしたらそういう発想がでてくるんだ・・・」


「なんか気が置けない仲みたいだったから」


「もう長い付き合いだからね私達と真央ちゃん」


 NSGで最初に仲良くなったのが真央だ。

 真央も京也達と同様に子供の頃からNSGに在籍しておりお互いが遊び相手であった。


「長い付き合いだけあって喧嘩も結構したけどな」


「喧嘩するほど仲がいいって言うじゃん」


 紗奈がそれぐらいは当然でしょと言ってくる。


「だから紗奈ちゃん、綾君とよく喧嘩するんだね」


「い、いやそれは・・・」


 急に自分に話を振られ紗奈が困った声色をだしている。


「・・・まあ彼奴とも長いし、良い奴である事は間違い無いから・・・ね」


 何時も綾を馬鹿にしている紗奈だ。

 認める様な発言をするのが恥ずかしいらしくそっぽ向いていた。


「・・・やっぱ紗奈ちゃんってツンデレだよね」


 里香が紗奈に聞こえない様に言う。


「そうか?」


「・・・はぁ、こういう事に疎いお兄ちゃんには分からないか」


「?」


 里香になんの事を言われているのか京也には心当たりが無かった。


「里香と京也君は喧嘩とかしないの?」


「最近はしないな。昔はあったけど」


「昔は些細な事で喧嘩したよね」


「幼い頃なんてそんなもんだろ」


「あ、目的地が見えて来たよ」


 三人で話しながらショッピングモールへの道程を進んでいると店の一部が見えてきた。

 それから少し歩き京也達は店の中に入った。


「それで最初はどこに行くの?」


「私は服買いに行きたいんだけど、京也君と里香は行きたい所ある?」


 案内板を見ていた京也と里香に聞き


「本屋と食材」


 と京也が短く答え、


「私も服欲しいかな」


と里香が答えた。


「そっか食材は最後にして・・・まず本買いに行こうか」


 本屋は二階にあるので三人そろってエスカレーターに乗り、向かう。


「そういえば、京也君も本読んでるよね」


「そうだな」


「どういう本読むの?」


「専門書とかSFの小説とかだな」


「専門書?」


「ああ、自分の知らなかった事とか分かって楽しいぞ」


「難しくない?」


「何回も読んでると少しずつ分かってくるよ」


 本屋に着き京也は目的の本があるか探す。


「お、あったあった」


 京也は目的の本を見つけ手に取る。


「それって割りと有名な奴だよね?色んな所で聞くけど」


「ああ、なんかの賞とったらしいからな」


「お兄ちゃんって本好きな癖にそういうの全然知らないよね」


「評判が良いのと俺が面白いと思えるかは別だからな。この本だって昔から好きな作者の本だから買うだけだし」


 そう言いながら目を引かれた本を手に取り気に入った本を持ってレジに向かう。


「そんじゃ次行こうぜ」


 本を買い終えた京也は紗奈や里香と共に服を買うために次の店へと向かった。


 ◇◇◇


「まだか?」


 服屋に来てから数十分がたった。

 里香も紗奈も店内にある色んな服を見てまわっていた。

 たまに後ろに着いてまわっている京也に振り向いて意見を求めてくる。


「あとちょっと」


 それさっきも聞いたんだけどなと京也は思いつつも口には出さない。

 何回か里香達の買い物に付き合った事があるが京也は一向に慣れなかった。


「お兄ちゃん、これとこれどっちがいいと思う?」


 里香が両手に服を持って見せてくる。


「右」


 ここで、どっちでも良いとか言うと色々言われる事は体験済みなのでちゃんと見て考えた振りをして墓穴を掘らないように簡潔に答える。

 ・・・結局他の服に目移りして決まらないのだが。

 その後も京也に意見を聞いて他の服を見ての繰り返しが続いた。


 ◇◇◇


「そんじゃ、食材買って帰るか」


 やっと買う服が決まった里香達が買い終えたのを見て待ちくたびれた京也はそう言った。

 それから一階に降り、肉や魚、野菜といった必要な物を見て回る。

 その中で紗奈にじゃがいもはりんごと一緒にして置くとりんごからでる成分が芽の成長を抑える事や玉ねぎは冷蔵庫に入れないで風通しの良い日陰において置くと良い事などを教えてもらった。

 京也や里香は料理はできるが保存方法などは知らない為京也達はしきりに感心していた。

 紗奈曰く「一人暮らししていれば自然と覚える」らしいのだが話を聞いていた京也は「そんなわけない」と思っていた。

 帰りは前日に言われた通り荷物を両手に持ち来た道を帰って行く。

 帰路についた京也に横を歩く紗奈が声をかける。


「荷物大丈夫?」


 京也の買った本、紗奈と里香が買った服、全員分の食材を一人で持っている事を気にかけているのだろう。


「これぐらい大丈夫だ。それに元々俺が持つ予定だっただろ?」


 なんともない事を表す為に荷物を上下に動かす。

 そんな京也を見た紗奈は微笑みながら「ありがとう」と礼を言った。

 寮の自室に着いた京也は紗奈に教えてもらった方法でじゃがいもや玉ねぎなどを保存した。

 最近していなかった銃のオーバーホールをしたり筋トレをしたりして寝床に入るのであった。

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