第9話

「明日・・・?」


「うん、一緒に行こうよお兄ちゃん」


「私欲しい物あるしこの辺の案内も兼ねてどうかなって思って」


 寮の京也の部屋に部活を終えた里香が紗奈を連れてやって来ていた。


「つまり買い物の荷物持ちが欲しくなったと」


「まあ・・・正直に言うとそれもあるかな・・・」


 紗奈が苦笑しながら素直に言う。


「ま、里香が世話になってるしそれぐらいならお安い御用だ」


「そう言ってくれると助かるよ」


「それで俺達だけで行くのか?」


 京也は言語外に加耶は大丈夫なのか?と里香に問いかけた。


「さっき加耶ちゃんも誘ったんだけど家の用事があるから行けないって言ってた」


 里香は京也の意図した所を汲み取り京也の求めた質問に答えた。

 加耶の護衛を頼まれているのは校内だけだ、恐らく校外は他の護衛がついているのだろう。

 それにこの間、紗奈を襲ったマナも気になっていた。


「そっか、それじゃ明日は俺達三人か・・・」


 人数の確認を終えた京也はそれなら荷物もそこまで多くないだろうと安堵した。

 昔里香や真央達と買い物に行った時は重たすぎて最終的には里香にも手伝って貰らった事があるのを思いだしていた。


「両手に花状態で嬉しいでしょ?」


 紗奈がからかってそう言ってきた。


「いや、両手って言っても片方は妹だし・・・」


 そういう京也だが、京也自身も唯一の肉親(親が死んだと確定したわけではないが)という色眼鏡を抜きにしても整った顔立ちで小柄な里香は小動物のイメージを彷彿とさせ世間では十分可愛い方に分類されるであろうと思っている。


「じゃあもう片方は?」


 紗奈は京也を困らせようと更に追求してきた。

 確かに紗奈は部活で動き回っているせいか引き締まった体をしており背が高い事もありモデルのような体型で活発そうな印象を受けるポニーテールをしていてそれが本人の性格ともあっていてよく似合っている。


「そうだな・・・」


 京也は改めて紗奈を品定めするような視線で見る振りをしてから「ポニーテールが似合っていて魅力的だと思うよ」と言った。

 京也はNSGなどで同じ様な経験があったので特に慌てず冷静に答える。

 京也に普通に答えられて紗奈はつまらなそうにしている。


「お兄ちゃん割りとそうやってからかわれる事多いからもう慣れちゃったみたいだよ」


「なーんだ、つまらないの」


 どうやら類は友を呼ぶというのだろうか、京也の周りには似たような性格の持ち主が集まるようだ。


「ま、それじゃ明日はよろしくね、京也君」


「おう」


 また明日、と言い紗奈達は自分の部屋へと帰っていった。


 ◇◇◇


 京也が支度して外にでると外は晴れていた。

 昨日降ったであろう雪がまだ少し残っているが時期に溶けてしまうだろう。

 まだ集合時間に余裕があるので京也はゆっくりと集合場所である校門に向かう。

 今日も部活がある所もあるらしく部活動をしている声が聞こえてくる。

 そういえばこの学校は部活動に力を入れているらしい。

 寮も元々は部活に勤しむ生徒のために建てられた物だと京也は藤堂から教えてもらった。

 そんな事を思い出しながら校門へ向かう。

 校門につくと京也が早く寮をでた事もありまだ誰もいなかった。

 暇を潰す為にもNSGで配布されたPDAを眺めて新しい情報がないか確認する。

 PDAを見ていた京也は後ろから聞こえてきた足音に気付き顔をあげる。


「あれ、京也君何してるの?」


 するとそこに居たのは里香達では無く、


「里香達が来るのを待ってるとこ」


 加耶だった。


「ああ、そういえば昨日里香ちゃんに誘われたっけ」


「加耶は今から家に帰るのか?」


「・・・うん」


 加耶はなんでその事を?という顔をしていたが少しすると里香に聞いたんだろうと当てをつけた。

 ・・・それにしては複雑な顔をしていたのだが目の前に加耶を迎えに来た車が止まり京也の意識はそっちにそれて気付く事は無かった。


「それじゃまたね」


 そう言い車に乗り去って行く加耶を見送った。


(あの車は確か・・・ランドクルーザー・・・)


 加耶は護衛が必要とされた身だ。つまりあの車は普通のランドクルーザーではなく防弾、耐爆仕様の方のランドクルーザーだろう。

 そして、加耶が車に乗る時見覚えのある人影も見えた気がしていた。


「お兄ちゃーん」


 後ろから里香の声が聞こえて来た。

 京也は声のした後ろを振り返る。

 パーカーを着てキュロットスカートにニーハイソックスをはいた里香がそこにいた。

 その後ろには紗奈がニットジャケット、ショートパンツにタイツを合わせたいでたちで立っている。


「お待たせ」


「早いな」


 京也が早めに来ていただけで実はまだ集合時間には余裕があった。


「里香ちゃんが京也君は待ち合わせの時は早く来てるって言ってたから」


 京也も里香もNSGで任務に当たる際に慌てないですむように早めに準備をする習慣がついている。


「人を待たせるのは嫌いなんだ」


「良い性分してるじゃない」


「それじゃ行こっか」


「そういえば聞いてなかったんだけどどこに行くの?」


「あ、言ってなかったっけ。ショッピングモールだよ、割りと大きいんだ」


 そう言い歩き始めた紗奈についていく京也と里香なのであった。

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