第4話

「京也」


 京也が学校への道を歩いていると、京也を呼ぶ声が聞こえてきた。後ろを向いて呼びかけてきた人物を確かめる。


「えーと、あやだっけか名前」


「そっちで呼ぶなって」


 こいつは高丘たかおか 綾りょう、二組の生徒だ。

 昨日の体育の授業で、同じチームになったのをきっかけに仲良くなった。体育の授業は二つのクラスが、合同でやる事になっている。

 綾は自分の名前が女の子の名前みたいな事を気にしている。


「俺は、良い名前だと思うが」


「別の漢字にして欲しかったよ」


「今更言ってもしょうがないけどな」


「そうなんだけどよ」


 隣を歩く綾はうなだれている。


「お前は普通の名前だし、良い妹さんも居るし楽しそうだな」


「あれ、里香の事言ったっけ?」


「お前たち兄妹は有名だからな。いろんな所から話を聞くんだ」


 目立つ事してないはずなのにと、見当違いの事を京也は思っていた。


「お兄ちゃーん」


 後ろから里香の声が聞こえてきた。

 昨日より早く学校へ向かっていたが途中から綾と会話をしていたので、後から出た里香たちが追いついてきたらしい。


「お、噂をすればってやつかな」


「おはよう、お兄ちゃん」


「おはよ、京也くん」


 後ろから里香と紗奈がやってきた。


「おはよう、二人とも」


 里香たちに京也も挨拶を返す。


「お兄ちゃん、隣の人は?」


「あぁ、こいつは高丘綾って言って昨日友達になったんだ」


 と京也が里香に説明すると、紗奈が説明を付け足してきた。


「あと、私の幼馴染だよ。・・・てか居たんだ」


「相変わらずひでーな、俺の扱い」


 紗奈はどうやら綾に対しては扱いがぞんざいのようだ。


「それは、俺も知らなかったよ」


 綾の紹介を終えた所で、京也が綾に里香の事を説明する。


「知ってると思うけど、このちっちゃいのが妹の里香だ」


「ちっちゃいとか、言わないでよ!」


「事実だし」


「そうだよ、里香は小さい所も魅力なんだから」


 紗奈も、似た事を思っていたらしく里香を弄りに参加してきた。

 まぁ、里香は背が小さい事を気にしているが紗奈の言う通り小柄な所も里香の魅力であると京也も思っている。


「もー!」


 里香が剥むくれてしまったので、京也がすかさず謝った。


「ごめん、ごめん。里香は感情が表情に出やすいから、ついからかっちゃうんだ」


 謝りながら京也は里香の頭を撫でる。


「本当仲いいよね」


「俺も妹いるけど、こんな事したら怒られるな」


「そりゃあ、あんたはキモイからね」


「お前なぁ・・・俺だって傷つくんだぞ」


 なんか綾と紗奈が言ってるが気にしないでおこう。

 里香とのじゃれ合いも終わり、学校へむかう。


 ◇◇◇


「放課後になった事だし」


「加耶ちゃん所いきますか」


 独り言のつもりだったのだが、京也が言い終わった後を里香が引き継いだ。

 京也が立つと、里香が加耶に声をかけた。


「かーやーちゃん、部活とか教えて」


「気になってる部活とか委員会とかある?」


「紗奈ちゃんの入ってるサバゲ部が気になるかな」


「それなら、サバゲ部から紹介してくね。京也くんも、それでいい?」


「ああ」


 返事を聞いた加耶は、サバゲ部へ向かうため教室を出て下駄箱に向かう。

 京也と里香もその後に続く。


「サバゲ部は、三年前まではいっぱい部員が居たらしいよ」


 昔マナや契約者の犯罪が増えた事に対し、政府はいろんな対策に乗り出した。

 NSGもその対策の中で生まれた組織である。

 そして六年生前に魔法に対抗出来る方法が出来、魔法犯罪に一般人が立ち向かえるようになった事をきっかけに、サバゲ部ができた。(ただし、魔法の存在は一般人には知られていない。NSGなどの組織がサバゲ部の大会ですぐれた成績を残した者を組織にスカウトし、そこで魔法の存在が初めて教えられる。NSGも表向きにはただの警備会社になっているのだ)


「今は何人ぐらい居るんだ?」


「詳しくは知らないけど二十人くらいじゃないかな」


「そうか」


 三人で雑談しながら話ながらサバゲ部の下へと、向かった。


「確かここが、サハゲ部の活動場所だよ」


 周りを見て見ると、サバゲ部の部室と思われる小屋がありその奥に恐らく旧校舎であろうサバゲのフィールドがある。

 恐らく今はあの中で模擬戦をしているのだろうと京也は考えた。


「とりあえず、部室に行きましょう」


 里香と共に部室に向かう加耶について行く。

 加耶が扉の前に立ちノックをする。

 少しすると扉が開き中から迷彩服を着た小柄な人影が現れる。


「あれ、夏海先輩?」


「こんにちは、武部たけべくん。今転入生に部活紹介してるの」


 武部と呼ばれた男がこちらを向いた。


「他の人たちは、中にいるの?」


「今部員全員で模擬戦やってて、被弾した人から部室に戻ってくる事になってるんです」


 どうやら部室をセーフティゾーンとして使っていて、武部は最初に被弾してここで待機していた。


「まだ終わらないと思うから校舎内に設置されてるカメラを見てましょう」


 武部が部室へと、案内する。

 京也達が中に入るとエアガンやBB弾、迷彩服などが置いてあるのが見えた。


「これがモニターです。どうぞ」


 武部がモニターの前の椅子を引いてくれたので、お礼を言ってそこに座りモニターを見る。

 するとそこには紗奈と思われる姿が映っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る