4.コンテストはアイドル総選挙に似てる

  ――第1回カクヨムWeb小説コンテストの読者選考って、わたしは、一般的な小説の選考よりも、アイドルの総選挙に似てるな、って思ったの。

 読子さんは、とくに思わせぶりにでも、慎重にでもなく、ごくふつうに、そう口にした。


 ということは、小説のひとつひとつがアイドルっていうこと? とぼくが尋ねると、読子さんはうーん、と迷ったような声を出す。

 ちゃんと定義できるかはわからないけど、と言って読子さんは続ける。ひとりの票数は制限されていないし、どの作品もオープンにされているし、技術だけが求められているわけじゃない。むしろ、たくさんの支持者がいて、じょうずに共感を集めて、好かれることがだいじ。それって、アイドルの総選挙みたいじゃないかな。


 それは……小説の選考としては正しいのかな? とぼくは尋ねる。読子さんはシンプルに、そういう考え方でやってみるのも面白いんじゃないかな、と答えた。ぼくはさらに尋ねる。でも、そのやりかたで不満を持つ人もいるみたいだよね、と。読子さんはんー、とあいまいな声を漏らしてから、続ける。これまでも繰り返してるけれど、不満がある、っていう現実は受け止めなきゃいけない。どういう選考をします、という情報の開示も十分じゃなかったかもしれない。けれど、それでも、参加する瞬間は、不十分であることも納得して参加するっていう約束を交わしていたはずだったんだよね。……けっこう、忘れちゃうものだけどね。読子さんは微笑む。それに、おおきなお金が賞金としてあったり、出版されます、みたいに明確に利害が出てくると、いろんな思いが現れちゃうからね。読子さんは穏やかな顔で、すこし遠くをみてそう言っていた。バランスって難しいね、と読子さんはつぶやく。


 でも、単純に考えるとするなら、わたしはこれは、アイドルの総選挙みたいなものなんだと思う。作品もそうだけど……作者も。読子さんがそう言ったので、ぼくも、そうかもしれない、と相槌を打った。


 ということは……と、ぼくは思い至る。ほかのアイドルよりダンス技術や歌唱力、容姿が劣っていても、人格やその辿ってきた道筋が好かれればアイドルとしてトップに立てるように、web小説もまた、単純な小説としての技術の巧拙とは違う基準で判断されるかもしれないのか。


 たぶん、そうなるかもね、と読子さんは頷いた。好きな人、親しい人の作ったものなら応援したい。それは自然な気持ちだと思う。ちょっと不思議かもしれないけど……ものづくりって、ほんとはそっちのほうが、基本的な考えかたなのかも。


 そう言ってから、読子さんは、技術が伴っているにこしたことはないと思うけどね。と付け加えた。


 じゃあ「カクヨム」は、今後はどんなふうになっていくんだろうか、とぼくが言うと、読子さんは、すこし笑って、それは次からの章でね、とぼくを焦らせた。

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