6.サイトデザインから考える読者との相互作用

読子さん:すこし別のお話になるけど……さっくんは、本や小説を選ぶとき、どうやって選ぶ?


さっくん:え? うーん……本屋で平積みになってるものや、ポップを読んだり、賞を受賞していると、気になるかな。あとは友達に薦めてもらったり……前に読んでた作家さんの新作とか、帯の紹介文とか、たまに表紙やタイトルのデザインで買ったりもするかな?


読子さん:うん、わたしもおんなじ。それをさかさまにしてみると、つまり「有名じゃない」「薦められてない」「親しみがない」ような作品は、そもそも手にとってもらうことが難しい、ってことだと思うの。そして多くの小説サイトにある作品は、読まれずに埋もれてしまう作品がとっても多い。「カクヨム」も、例外じゃない。


さっくん、うなづく。


さっくん:そうだね。ランキング上位のもの以外は、何を読んでいいかわからないし……ランキング上位でも、文字数が多いとちょっとしり込みしちゃうな。


読子さん:うん。でもきっと、作品を作っている人が見てもらいたいと思っているのは、いっしょうけんめい作った長編。とくに、サイトオープンとともに始まったコンテストの参加条件は十万字以上だったから、さいしょに投稿されたのは長編に固まっていると思う。けれど、この作品たちはいずれも、コンテストが過ぎてしまえば手に取ってもらえる要素がとっても、弱いよね。


さっくん:うーん、そうだね。ランキングの上位だと、ちょっと読んでみようかなって思うこともあるけど……


読子さん:それはきっと、多くの小説サイトが抱えている悩みだと思うの。トップの作品しか読まれない。だから、なにかの手段で埋もれた作品を読んでもらいやすいものにする。疑似的に「薦められた」「知っている作家の」「親しみがある」作品に変えていくの。そのために、カクヨムのトップページにある十二個のレビュー枠をどう使えるかを、考えてみたい。


さっくん:でも、読んでもらえないと、レビューはつかない……よね?


読子さん:うん。けど、たとえば「カクヨム」について書かれたエッセイや小説を読んだ人は、きっとほかの「カクヨム」について書かれたエッセイや小説を読んで、比べたくなると思うの。つまり、トップページに表示されているレビュー作品と関連性の高い作品は、きっと読まれる確率が少しずつ上がってる。


さっくん:あ……なるほど。てことは、たとえば「料理」に関連する作品のレビューがトップにあるときは、料理についての作品が一時的に読まれやすくなるんだ。


読子さん:そういうこと。検索やタグをたどって、ジャンルを横断して読み比べができる。そうして作品に触れると、その作品と紐づいている作者にも触れることになる。もし、辿って読んだ人の作品がとても素晴らしいものだったら、こんどはその作者さんの別の作品を読んでみたくなるよね?


さっくん:うん。いわゆる「作家買い」状態になるんだ。


読子さん:そう。そのためにはきっと、入口は短編や掌編、エッセイくらいのほうがいいかもしれない。「ニコニコ動画」でたとえてみると、動画の長さが二十分とか、一時間とかだったりすると尻込みしちゃう。だけど、一分や二分の動画で、話題になっているものはちょっと見てみようかなって思える。その動画のテーマに興味がわくと別の作品も見るし、動画自体が面白ければ作者のほかの作品、もっと長い動画でも見てみたくなる。生放送までおっかけちゃったり、して。


さっくん:あるある。興味が沸くと、その関連の動画をどんどん見ちゃうなぁ。


読子さん:だから、自分の作品を読んでもらうためには、トップページにあるレビューの傾向に相乗りすることが大事だと思うの。そして、その傾向にみんながお祭りみたいに乗っかって、同じテーマのものが書かれ、同じテーマのものが読まれる。読まれたうえで選別されていったものは、ジャンル別にランキングに蓄積されていく。そうして読み手が「作家」に興味を持ってもらえれば、今度は「作家」単位で読んでもらえるようになる。


さっくん:なるほど……「レビュー」で流行や傾向を表して「ジャンル」ごとのランキングで、お祭りの結果を表示するんだね。そういえば、レビューにはプロの編集のひとが参加したりするから……それはとくに、効果が高そうだね。


読子さん:うん。その流れはきっと、これまでに現れてきたたくさんのインターネット上の流行みたいに、作家と読者の相互のやりとりや共犯関係のようなもの、サイトの機能をつかった遊びから始まるんだと思う。こういう相互作用が、あのトップページのデザインのねらいなんじゃないかな? そして、もっと盛り上がったなら、その流行がサイトの外……ニコニコ動画に持ち込まれたり、逆にニコニコ動画の流行が持ち込まれたりする、かも。たとえば「カクヨム」で書かれた脚本がニコニコ動画で朗読劇になったり、キャラクターが映像になったり。……それは、予想の域を出ないけれど、ね。


さっくん:うまくそうなるかなぁ……ところで、レビューとランキングで読子さんが考えていることはわかったけど……コンテストを、読子さんはどう見ているの?


読子さん:それは……次からの章でね?


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※舞台暗転

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