5.新着レビューに注目する

読子さん:レビュー、だけど、じつはいま「カクヨム」というサイトの核をなしているのが「新着レビュー」だとおもうの。


さっくん:突然に核心に迫ったね。小説サイト、というくらいなら、中心は小説じゃないのかな?


読子さん:それも、もちろん間違ったお話じゃない。けれど「小説」を中心にお話をすると、なにかを見失うような気がする。だから、これまで、ニコニコ動画との類似しているところや、いままでのインターネットの歴史を振り返ってきたの。現在のカクヨムのトップページのいちばん目立つところには、新着のレビューが掲載されてる。(※)これが担う役割を考えてみたいと思うの。


※2016/04公開当時


さっくん:なるほど……ニコニコ動画でレビューと対比できるのは、コメントだね。コメントの機能、機能か……うーん(しばらく悩む)……自然に使っちゃってたけど、どういうものか、って考えると、難しい気がするね。


読子さん:ニコニコ動画における「コメント」が果たした一番大きな役割は、ばらばらの場所、ばらばらの時間で動画を見ている人たちを疑似的に同期させたことだと、わたしは考えてる。たとえば、アイドルのライブでコール&レスポンスをしたり「天空の城ラピュタ」をテレビで観ているときに、ツイッターで実況をしたり……これらはどちらも、その場所やその時を共有していないと、できない。けれど、ニコニコ動画のコメントは、観る時間がばらばらでも、まるでみんなが同時に観ているかのような臨場感を作ることができたよね。


さっくん:でも「カクヨム」のレビューは、読んでいる最中には表示されないよね?


読子さん:そうだね。だけど、トップページにいちばん大きく表示されている。「カクヨム」というサイトは「誰がなにを書いたか?」よりも「誰がなにを読んだか?」のほうを前に出しているサイトなの。「いま、さっき、このひとがこの作品を読みました」ということを明示してる。


さっくん:なるほど……そういえば、ほとんどの小説サイトは、コメントやレビューは作品のページのなかに格納されていて、コメントだけを表に並べるような機能は持っていないね。


読子さん:うん。そして、この新着レビューは、スマートフォン版では五つ、PC版では十二個が表示されている。この十二個のレビューが、いま「カクヨム」で読まれているカクヨム内の小説の「直近の傾向」を示しているの。これが「カクヨム」が持ちたい、情報の速度なんだと思う。


さっくん:傾向を表すのは、ランキングではないのかな?


読子さん、すこしテーブルを見つめて間を取る。それから顔をあげて


読子さん:……わたしは、ランキングが表すのは傾向とはちょっと違うものだと、思う。読まれた結果、よかったものを表すのがランキング。だけど「よかった」ものを読むのは、「いま、読んでいます」という時間を共有することとはちょっと違う。……さっくん、わたしはきっと「カクヨム」のなかで、いままでの小説投稿サイトとはちがう新しい面白さをつかむには……さっき誰かにレビューされた作品を読み、あらたなレビューを書き、そして生まれた傾向、テーマのようなものにみんなで乗っかって、たくさんの作者が同じテーマを共有して遊んでいく、そんな体験がいいんじゃないかなって思ってる。たとえば、ニコニコ動画でみんなで「弾幕」をつくったり、リアクションを共有したり、ニコニコ動画ならではの同じ文脈を共有するように。


さっくん:それって、競作みたいなこと?


読子さん:うん。もっと、ちょっとしたおふざけみたいなものでも、いいかもしれない。「いま」をつかんで、いっしょに遊ぶことが大事だと思うの。


さっくん:ううん……でもそれって、ランキングやコンテストにとって、いいことなのかな?


読子さん:たしかに、影響はあると思う。良し悪しもあると思う。でも、もうすこしだけこのお話を、続けさせて?

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