3.インターネット以降流行した表現たち

店員、おかわりのコーヒーを持ってくる。

読子さん、さっくん、届いたコーヒーをそれぞれ口に運ぶ。


すこし間をとってからBGM ややボリューム下げて


読子さん:続きだけど……すこし、インターネットでここまでに生まれた「文化」をちょっと振り返ってみたいと思うの。「文化」という言葉の使いかたも、どんなことを取り上げるかも、インターネットとそれ以外を区別することも、ニュアンスの問題はあるけど……この先につなげるために例を挙げるくらいの目的だから、あまり掘り下げたりはしないつもり。


さっくん:うん。それこそ、キリがないもんね。創作に関することに絞ったほうがよさそうだ。


読子さん:そうするつもりだよ。インターネットの普及によって、マスコミ産業やメディア産業とはかかわりのない、ふつうの人が情報を発信することのハードルが大きく下がった。……結果、インターネットでは、たくさんのひとが自分の創作物を発表するようになった。一次創作も、二次創作も。


さっくん:それこそ、オリジナルの小説や、カクヨムでも扱われるような二次創作小説、いわゆる「SS」だったり、エッセイもたくさん出てきたよね。


読子さん:うん。「ソードアート・オンライン」がweb小説だったことは有名な話だし「カクヨム」で二次創作が許可されている「ゼロの使い魔」の著者、ヤマグチノボルさんが「片桐彩子日記」という「ときめきメモリアル」のヒロインの名を冠したタイトルでコラムを書いていたこともある。みんな、作品を作って発表していた。


さっくん:海外にも目を向ければ、最近では「オデッセイ」がweb小説原作から映画化されているよね。


読子さん:あらたな形態をとった創作物もたくさん出てきたよね。たとえば、アスキーアート。「モナー」みたいに、掲示板でよく使われていた、文字や記号を組み合わせて作られたキャラクターたちを役者みたいに動かして、物語を作ったり。動画を作ることができるGifやFlashも、作家や作品がたくさん現れた。


さっくん:……読子さん、意外と、……インターネットのこと、詳しいんだね?


読子さん:(ちょっと笑って)小説に限らなくても、わくわくするような物語はどんなものでも大好きだよ? 小説も、インターネットが普及してから、いままでになかったような形のものが出てきたよね。たとえば、ケータイ小説。「恋空」みたいに映画になったものもあったし、当時はたくさんケータイ小説の本が出ていたよね。


さっくん:そうか……最近、たくさん出版がされている「なろう系」や「異世界転生もの」とくくられるような小説も、いままでになかった形のもの、と言っていいのかもしれない。


読子さん:うん。厳密には、もともとあったものがインターネットに移ってきたのかもしれない。でも、そういう「流行」が生まれた、ということでいいと思うの。それで、最後に……これから「カクヨム」と並べて考えてみようと思っている「ニコニコ動画」でも、たくさんの新しい表現や流行を見ることができる。厳密に言えば「ニコニコ動画」が発信元のものではないことも多いけど……「ニコマス」「歌い手」「ボーカロイド」「実況配信」なんかは、ニコニコ動画の普及後に大きく流行した、特徴のある表現、と言えると思うの。


さっくん:「カクヨム」も、そういう新しい表現、特徴ある表現が生まれるかもしれない、っていうことかな?


読子さん:ありうると、思う。だから、「カクヨム」と結びつきが強くて、インターネットの歴史のなかではいまも現役である「ニコニコ動画」と比べてみると、面白いと思うの。


さっくん:インターネットと創作の歴史を簡単にたどって「カクヨム」と「ニコニコ動画」の対比に戻ってきたんだね。


読子さん:うん。でも、まだここからもしばらくは、材料あつめ、かな。

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