《05-18》

「どうした、函辺。連れて来いと言っているのだ」

「武装風紀委員委員長、小鬼田 函辺はまろみ様に絶対の忠誠を誓っています。そして、その身をお護りすることが最上の使命と考えています」

 

 いきなりの発言に、まろみが眉をひそめる。

 

「自分が主と仰ぐのは本物のまろみ様のみ。偽者の命令など断じて聞かない!」

「なんだと! 貴様!」

 

 胸を張って断言する函辺を、まろみが鬼の形相で睨みつける。

 

「余が偽者と申すか! 良く見てみろ! どちらが本物かは一目瞭然であろうが!」

「草陰はお前が偽者だと言っている。こいつがまろみ様を間違うはずがない!」

「ハコベさん、ありがとう。なんて言ったらいいのか……」

「自分は一番信じられる物を信じただけだ。しかし、この人数が相手では分が悪いな」

 

 警棒を油断なく構え、猛禽の如き瞳でまろみを射抜く。

 

 無言の威圧にまろみが一歩二歩と下がった。

 

 戦力差があまりに大きい場合、頭を叩くしかない。

 自分の脚力なら、数秒で間合いを詰められる。

 周囲の部下達では追いつけないだろう。

 問題は二斑、三斑の二十名。どうやって突破するか。

 考えていた函辺が頬を緩める。

 

 あれこれ考えるのは性に合わない。

 一気に距離を詰め、邪魔する奴をなんとか振り払って偽者を倒す。

 それだけでプランは十分だ。

 

「委員長、支援します!」

 

 意外な一言に函辺が目をやった。

 図書館の乱闘で頬を腫らした少女だった。

 

「委員長の判断に私達も従います」

 

 他のメンバーも続いて頷いた。

 

「助かる。これで戦力的には圧倒的に有利になった」

 

 武装風紀委員の中でも第一班は、函辺が自ら鍛え上げた精鋭部隊。

 二斑、三斑の言わば二軍組とは戦闘能力が違う。

 

「えぇい! 無礼な! 武器を捨てて投降しろ!」

 

 まろみの怒声に函辺達の肩が跳ねる。

 手から逃げそうになる警棒をぐっと握りなおした。

 

「武器を捨てろと言っているんだ!」

 

 つい先ほど、あれほどの効果を見せたまろみの言葉が、何の効果も及ぼさない。

 その事実にまろみの顔に焦りが浮かんだ。

 

「いけるぞ」

 

 戦いは流れだ。

 それは明らかに自分の方にあると函辺は感じた。

 

「桜木、前に出るぞ。二人で敵を薙ぎ払い。偽者を捕縛する。他はまろみ様と草陰を護れ」

「待ってよ、委員長。ホントにまろみ様に逆らうの?」

 

 いつもご機嫌な桜木にしては珍しく困った様子だ。

  

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