《04-16》

「二人は仲良しさんなんですね」

「違うぞ。ただの腐れ縁だよ」

「違います。ただの腐れ縁です」

 

 タイミングまでぴったり。

 

「あはは。それより凛華さん、体調はどうです? 倒れたと聞いて心配してたんですけど」

「ご心配ありがとうございます。概ね良好です」

「原因はなんですか?」

「原因、ですか?」

 

 まろみ様の料理です。とは言えない。

 

 まろみの料理、それはもう凄惨を極めた。

 経験値の低さもあるが、何かとアレンジを加えたがる。

 しかもその方向が、ジャムや生クリームといった乙女らしい甘みに偏っているのが問題だ。

 更に調味料の加減が掴めず、かなりの量を適当にブチ込んでしまう。

 料理の才能が著しく欠如しているのは間違いない。

 

「いえ、特に春乃様にお話するようなことではありません」

「でも」

「本人が大丈夫って言ってんだから。まあ、こいつは殺しても死なない奴だしさ」

「その台詞はそっくり貴方にお返しします」

「感謝の言葉を期待してたわけじゃないけどね。あんまりな言い草にガッカリだよ」

 

 大袈裟に溜息をつく。

 

「とりあえず、お粥食べるだろ」

 

 キッチンに向かう函辺を見ながら、凛華と春乃は腰を下ろした。 

 

「ハコベさんは、ああ言ってますけど、凄く心配して」

「解っています。長い付き合いですから。小鬼田という人間は、素直さに欠ける不器用な人間なんです」

 

 噛み締めるように呟く。

 普段とは違う穏やかな表情に、春乃は一瞬見とれてしまう。

 

「ん、どうしました?」

「あ、いえ。凛華さんって部屋ではジャージなんですね」

「自室でも堅苦しく制服で。と思っておられましたか?」

「そういう訳ではないですけど」

 

 そんなはずはないと思いつつも、そういうイメージを抱いていたのは事実である。

 

「私も普通の人間です。ご期待に沿えず申し訳ありません」

「とんでもない。でも、今の方が可愛くて素敵だと思いますよ」

 

 他意も下心もない。解っていてもシンプルな褒め言葉はくすぐったい。

 

「春乃様、前にも忠告させて頂きましたが」

 

 やや頬を上気させながら、それでも冷静さを崩さないように注意する。

 

「女子に対して、そういう言動は誤解を招くことになります」

「すいません」

「そうやってすぐ謝るのも良くありません。どうにも頼りなく見えてしまいます。もちろん、非がある場合は素直に謝罪せねばなりません。だからと言って……」

 

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