《04-10》
「そんなに多いの?」
「決して無視できない数だろう。そこがポイントだ。彼ら『ハルベルデ』が存在する限り、まろみは学区を完全に掌握したことにならない。つまり、他の学区と争うことも、人類の解放とやらも始められない」
サトリの説明に春乃は首を捻った。
「うがった見方をすると、『ハルベルデ』が、まろみたんを助けているとも言えるね。でも、まろみたんはどうして『ハルベルデ』を放置しているんだろう」
「そこだよ。それがこの学区の奇妙な点の四つ目だ」
ようやくにして核心に辿り着いたのだろう。
サトリの目が輝きを増した。
「敵対するグループがあれば排除する。それが支配者のやり方だ」
「待って。話し合って譲歩する場合だってあるよ」
「平和的に解決するならね。でも、まろみと撫子の間に、その路が存在すると思うかい?」
二人が望んでいるのは学区の頂点。
その椅子に座れるのは一人だけなのだ。
「『ハルベルデ』は桔梗家の財力と撫子の魅力で支えられている。だが、その結束は磐石じゃない。まろみがその気になれば一気に捕縛。学区から強制的に転校させることもできるはずだ」
「なおさら、放置する意味が見えないね。どうして放っておくんだろう?」
「ルールがあるからさ。君も転校して直ぐに教えられたはずだ。戦闘に関するルールを」
始業開始から部活終了まで、校内で戦闘は禁止。
そして寮内は常に非戦闘区域となっている。
「このルールのお陰でまろみは大規模な攻勢には出られない。そして『ハルベルデ』も思うように動けない。互いが束縛される奇妙なルールだよ」
「それならルールを変更すればいいのに」
「できないんだ。戦闘に関するルールを変えることは、まろみにも許されていないからね」
「また、その言い回しなんだ。まるでルールを決めた人間がいるみたいな」
「当然だよ。ルールというのは自発的にできる物じゃない。誰かが決める物だからね」
「でも、それだとまろみたんより、その誰かが上位の存在ということになるよ。そんな人がいるなんて信じられないな。君がその誰かを知っているって言うなら別だけど」
春乃の問いに、サトリは答えなかった。
数呼吸の間を置いて、再び口を開く。
「ボクの上げた四つの点。この奇妙な点が学区の絶妙なバランスを作っている。ルールがあるから『ハルベルデ』が存在し、『ハルベルデ』がいる為にまろみは動けない。まろみが動かないから、そのハリボテに過ぎない主張は疑問を持たれず。結果、まろみの支配する世界ができあがっている。四つの点が繋がると、歪な形になっているのが解るだろう?」
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