《04-09》

 まろみが定期的に行う朝礼。

 そこに集まった生徒達が口々に叫ぶ「まろみ様!」という声が、彼らの陶酔した眼差しが、狂信に近い雰囲気を作り出しているからだ。

 

「でも、こういう可能性はないかな。まろみたんには人を従わせる特別な力があるとか」

「例えば、人を言葉で支配する超能力のような物が、かい?」

 

 サトリの言葉に春乃は確信した。

 この少年はまろみの力を知っている。

 

「ハッキリ言わせてもらうよ。そんな力は存在しない。超能力なんて、ただのフィクション。もしくは巧妙に擬態した嘘だよ」

「でも」

「現にあの時、君はまろみの言葉に従わなかったじゃないか」

「どうしてそのことを?」

「ふふ、ボクはこの世界に起こる全てを悟ることができるんだ」

 

 絶句する春乃に、サトリの声が跳ねた。

 

「冗談だよ。ボクはこの衛星に存在する全てのセキュリティに入り込む術を持っているんだ。超能力ではなく、科学にカテゴライズされる物だよ」

 

 凄い事をさらりと言ってのけるサトリに春乃は愕然となる。

 

「そんなに驚かないで欲しい。道具があれば誰にでもできることなんだから。さて、少し話がずれてしまったね。話題を戻そう」

 

 そう宣言して続ける。

 

「この学区で奇妙な点は四つある。まずはさっき言った、『菜綱 まろみ』という存在。次は彼女の掲げる主張だ。君は彼女がいつも繰り返しているフレーズを知っているね」

「うん。世界に十一学区の力を見せ付ける。人類を解放する。だね」

「そう。実に漠然として曖昧だ。具体的に何をするかは語らない。いや、語れないんだよ。おそらく、まろみ本人すら考えたことはないだろう」

「そんなの有り得ないよ。ビジョンがないのに支持されるはずがない」

「そうだね。君の主張は正しい。ボクもそう思う。だから奇妙な点なんだ」

「変な言葉遊びをしてる気分になってきたよ」

「点は線にならないと見えないからね。だから次に進もう。第三の奇妙な点は、『ハルベルデ』の存在だ。彼らは桔梗 撫子をリーダーとする反まろみ勢力だ」

「まろみたんに替わって、学区の支配者になろうとしているんだよね」

「そうだ。ところで、『ハルベルデ』の規模はどれくらいだと思う?」

「かなりの数がいるんじゃないかな。百人とか」

「そんなもんじゃないよ。『ハルベルデ』の構成員は全生徒の二割、千人に達する」

 

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