《04-11》

「まるで舞台劇みたいだね」

「舞台劇か。いいね。実に詩的な表現だ。ボクも使わせてもらうことにするよ」

 

 そう言いながら、眼鏡を掛ける。

 

「随分と話し込んでしまった。そろそろ時間のようだ」

 

 時計は十七時少し前、もうすぐ鈴奈が戻ってくる時間だ。

 

「転校生、君はこの安っぽい舞台劇を続けるべきだと思うかい?」

「正直なところ解らないよ。でも、漠然とだけど、何かが間違ってる気がするんだ」

「その直感にボクは好意を覚えるよ。だから、君に一つヒントをあげよう。ライブラリに行ってみるといい。そこにはこの学区の出来事を記録したデータがある」

「うん、ありがとう」

「だが、条件がある。決して一人で行かないことだ。君は余りに儚い存在だ。この学区で君を護れるほどの強い力は一つしかない」

「それはまろみたんのことを言ってるの?」

 

 春乃の声に険しさが混じった。

 彼女を危険に巻き込む事には抵抗を感じる。

 

「違うよ。まろみも君と同じ。か弱い存在に過ぎない。ただ君達の絆は、想いは強い。それが君達を敵から護ってくれる最大の力になるはずだ」

 

 らしからぬ発言に、春乃が驚きを浮かべた。

 

「意外にロマンチックなんだね」

「ボクだって夢見る……夢見る若者だからね。ロマンチストを気取るのもいいだろう?」

 

 踵を返すと、軽く手を挙げる。

 

「じゃあ、転校生。次に会う時は、少し違った形になると思う。その時を楽しみにしているよ」

「うん、じゃあまた」

 

 静かにドアを開き、サトリはその向こう側に消えていった。

 

 

                    ※ ※ ※

 

 

 ドラゴンはその巨体を震わせて咆哮した。

 

 周囲は荒野。身を隠す場所もない。

 

 絶体絶命のピンチに純白のロングドレスに身を包んだまろみは、二歩三歩と後ろに下った。

 その顔は強気さを残しているが、やはり恐怖が色濃い。

 

「姫、ここは僕が」

 

 西洋甲冑姿の春乃が腰から剣を抜き放ち、まろみを庇うべく竜の前に立ち塞がった。

 

「さあ! 来い!」

 

 勇ましい言葉とは裏腹に、切っ先は不安気に揺れて実に頼りない。

 

 ドラゴンが腕を振り上げた。

 人くらいの大きさはあろう手を、一気に叩きつける。

 

 咄嗟に剣で受け流そうとした春乃だが、その威力は想像を絶していた。

 剣はまるでガラス細工のように砕け散り、春乃は地面を転がる羽目になる。

 

「春乃!」

 

 まろみの悲鳴にドラゴンが首を向ける。

 短剣ほどの牙が並んだ口を大きく開け……。 

 

「そこまでです! それ以上の狼藉は、この私が許しません!」

 

 白馬に跨った白銀に輝く騎士が姿を見せた。

 右手には複雑な紋様の描かれた剣を携えている。

 

 

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