第94話 vs戦いだけの世界

 さて、これまで散々新生物の脅威について語ってきたが、そもそも彼らが人類と敵対する可能性はどれほどであろうか。

 前述しているが、私はほぼ確実にぶつかりあう運命にあると思う。

 悲しいかな。人類は今、大きく二分された状態だ。旧人類だ、新人類だと騒ぎ、どちらが優秀かそうでないかで争い、戦争にまで発展している。

 子供は先人を見て育つものだ。果たしてこんな理由で戦争に明け暮れる人類を見て、新生物が最初に何を学ぶのか。想像するに容易い。


 分かり合えないとは、悲しい事だ。

 例え見よう見真似であったとしても、現在の地上のトップワンに君臨している人類から学ぶであろうことが、戦いだなんて。

 同じ星に生まれ、同じ時代に生きる仲間の筈なのに、なぜそうなるビジョンが思い浮かぶのだろう。

 誤解を与えるかもしれないので、一応断っておくが、人類は決して悪い生物ではない。諸君らも経験があるとは思うが、誰かを愛したり、敬う気持ち。あるいは熱い友情を育み、感動で涙する事もあるだろう。それらは決して悪い物ではない。

 だが、同時に良い生物でないのも確かだ。そもそもにして善悪で分けようとするのがおかしい話で、人間は誰にでもいい一面と悪い一面があるもんである。


 ある程度知能が発達したからだろうか。

 人間は時に、残酷な事をやってしまう。

 殺人。強盗。恐喝。裏切り。陰謀。etc。

 悪意に取り込まれた人間は、常識では考えられない事をしでかしてしまうものだ。そう言う意味では、彼らは異常者かもしれない。

 だが、安心するな。君たちも、そして私も、常に彼らと同じ様になってしまう可能性を孕んでいる。

 そうなってしまえば、我々は自分の意思で戦いに赴く事だろう。


 戦いは生物として生まれた以上、必然だ。

 野生動物の多くは群れを守るために戦い、あるいはハンティングの為に攻防を繰り広げる。

 例え凶行に行きつくまでのプロセスにどんな悲劇があったとしても、我々は戦いから目を背けることなどできない。

 

 そして時として戦いは、悪意を生む。


 新生物は可能性の塊である。

 もしも彼らが人類を見限るか、もしくは見よう見真似で戦いを仕掛け、そして滅んだ場合。我々は自分たちの手で殺してしまったと言う事を決して忘れてはならない。

 大人でも子供でも、男でも女でも。皆が意識するべきだ。

 

 新生物が人類によって滅ぼされた時。

 人類の飽くなき戦いへの欲望が勝利した結果となるのだ。

 それは同時に、人類の持つ悪意が勝利したともいえよう。


 もしもこれが、戦いと悪意が結びつくメビウスリングによって描き出された、動物の変わらない習性なのだとしたら。

 私たちは、戦いを止めることなどできるのだろうか。

 今、この瞬間にも。我々人類は争っている。


 悪意を撒き散らしながら。



 シュミット・シュトレンゲルの自伝、『アイラブ、終末論』より抜粋。








 戦い。


 戦い。


 戦い。


 上を見ても、横を見ても、真下を見たって戦いだ。振り返ってみても、そこには新生物との戦いが記憶に残っている。

 視界の周りには、戦い以外に何も無かった。

 マリリス・キュロは獄翼の後部座席から送られてくる光景から、思わず目を逸らす。

 カメラアイから送られてくるタイラントの怒りの咆哮。

 そして彼女の号令によって向けられた無数の銃口が、マリリスに無言の圧力をかけたのだ。

 もちろん、レオパルド部隊の一人一人に聞いて回ったとして、マリリスに恨みを持つと答える人物は一人もいない。メラニーに至っては命の恩人ともいえる人物だ。


 だが彼女たちは、問答無用で戦いを仕掛けてくる。

 そして銃口を向けられれば、人は否応なしに嫌悪感を覚える。引き金を引かれたらどうなるかなんて、子供でも知っている事だ。

 真っ向から矛先を向けられたスバルは、額に一筋の汗を流しつつも叫ぶ。


「寄ってたかってさぁ!」


 ブレイカー単位で数えれば、1対30である。

 機体ダメージも大きい中、これだけの数を相手にするのは辛い。いや、辛いどころではない。

 

 無理だ。

 

 スバルの脳裏に、その一言が渦巻いていく。

 だが、例え無理だと分かっていても。不思議と身体はエネルギー機関銃のトリガーを引いていた。

 獄翼の頭部に備わっている機関銃から無数の弾丸が発射され、真正面にいるブレイカーに襲い掛かる。

 だが、所詮は威嚇用の低威力。近くで発射すればそれなりの威力にはなるが、遠くから狙うには向いていない。当然、相手のブレイカーに命中しても火傷の痕跡が着いた程度で終わってしまう。


「くそっ!」


 スバルは憤りを隠さないまま叫ぶ。

 今にもモニターに殴りかかるのではないかと思える程、彼は苛立っていた。後部座席から見守るマリリスが、目を背けたいと思える程に。


 マリリスは思う。

 どうして彼らは戦うのだ、と。

 色々と事情はあるのだろう。先程のカイトとタイラントのやり取りを聞く限り、彼らの間には浅からぬ因縁があると思われる。

 だが、ついさっきまで同じ敵に立ち向かった仲ではないか。スバルとメラニーに関して言えば、それは見事に当てはまる筈だ。


 にも関わらず、彼らは獣のように叫びながら戦いを展開していく。

 まるでそうしなければならないのだという、脅迫概念があるかのように。


 獄翼のカメラアイによって送られてくる映像に、改めて視線を向ける。

 先ず目に入ったのは、六道シデンによる単身特攻だった。彼は新生物にやったのと同じようにして吹雪をお見舞いし、ブレイカーを凍りつかせている。


 だが、疲労の色が激しい。

 いかに彼も超人とは言え、生身でブレイカーの攻撃を避けながら能力を酷使するのは体力を消耗するようである。

 無論、そのお陰で獄翼は今も立っていられるといっても過言ではない。

 シデンが狙うのは、基本的に獄翼に銃口を定めたブレイカーだった。


 次に目に入ったのは、やはり生身で単身ブレイカーに立ち向かうカイトである。彼はタイラントからの恨みを買われている為か、多くの攻撃を貰っていた。だがエネルギーピストルや機関銃を華麗なステップで避け、瞬く間に真っ二つにしていく勇士は流石と言える。

 まだ彼にはシデンをカバーする余裕もあった。


 だが、


「神鷹カイトおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 憎悪の籠った叫びが、荒野に轟く。

 振り返るまでもない。タイラントだ。彼女は御柳エイジとやりあいながらも、カイトを狙うことを諦めていない。


「お前の相手は俺だ!」

「退けぇ!」


 カイトに襲い掛かろうとする女傑の前に、エイジが立ち塞がる。

 彼は既に全身血塗れだった。破壊のエネルギーを身に受け、我慢するにしても限界があるのだ。当然と言えば当然なのだが、それでもエイジは我慢することを止めようとしない。

 幾度目かとなるクロスカウンターを炸裂させ、エイジはタイラントを後退させる。

 だがそれから数秒もしない内に、攻撃を受けた個所から肉が弾け飛ぶ。


「ぐぁっ!」


 膝をついた。

 最初に受けた場所と同じ、脇腹に食らったのだ。そこを支えながらも、エイジは歯を食いしばり、タイラントを睨む。


「が、我慢……!」

「エイジ!」

「まだまだ行けるぜ、俺は!」


 カイトが心配そうに声をかける。

 彼もマリリス同様、これ以上見ていられなかった。エイジの下に駆け寄り、傷を見る。


「もう立つのもやっとだろ。後は俺が――――」

「お前じゃ、ダメだ」


 片手でカイトを制し、エイジが前に踏み出す。

 

「折角腕が直ったんだ。またぶっ壊されたくねぇだろ」

「待て」


 エイジの肩を叩き、無理やり振り返らせる。

 彼はされるがままだった。


「まさかお前。それだけの為にこんな身体張ってるんじゃないだろうな」

「悪いか?」

「アホ」


 心底そう思った。

 確かにいい義手を手に入れたと思う。だが、身体の付属品を気にされて身代わりになるなんて馬鹿らしいにも程がある。


「腕なんて壊れてなんぼだ。俺は特に」

「アホはお前だ。アキハバラでお前が意地張った結果、どうなったか忘れたのか」

「お前も今、意地を張ってるだろ」


 エイジが言いたいことはわからんでもない。

 確かに、アキハバラでは結構な無茶をしたと反省している。結果として、腕も無くした。

 だが、それを気にされて同じことをエイジがしたら、それこそ自分以上の大ダメージが残るだけだ。


「ああ、意地を張ってるな」


 脇腹を抑え、再びエイジがタイラントへと向き直る。

 彼女も体勢を整え直したようだ。眼光をぎらつかせながら、ゆっくりと近づいてきている。


「でもよ。お前が俺ならどうする?」

「……」


 カイトは返答しなかった。

 口を閉ざし、ただエイジの顔をまっすぐ見据える。その表情の裏にどんな感情があるのか、エイジにはわからない。

 ただ、首を傾げないからなんとなく言いたいことは伝わってくれたんだな、と思った。それだけで十分だった。


「何とかギリギリまで殴り合って、アイツの体力を削ってみる。その後は、頼む」


 肩に置かれた腕を払いのけ、エイジは一歩踏み出す。

 そのまま前進していくと、彼は走り出した。

 カイトは拳を握りしめ、歯噛みしたままだった。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」


 どちらが叫んだのかも分からないような、獣めいた雄叫びが荒野に響き渡る。

 エイジかタイラント。もしくはシデンか、スピーカーからスバルが叫んだのかも分からない。

 カイトはその叫び声に導かれるようにして、エイジへと視線を向けた。


 二匹の獣が、丁度衝突した瞬間だった。

 二人を中心に、砂塵が舞いあがる。目を凝らしてなければ、彼らの様子を見る事さえできない。


「……ん?」


 だが、そこでカイトは気づく。

 お互いに拳を突き出す二人の間に、小さな影が見えたのだ。


 まさか、あの中に誰かが割って入ったと言うのか。

 タイラントの能力は触れた物を破壊する力である。ソレに加え、御柳エイジも怪力で名をはせた男だ。

 そんな二人の拳の間に入り、しかも身体の造形を保っていられる人間がこの場にいる。


 その事が、カイトには信じられずにいた。

 タイラントとエイジも同じだ。二人は拳を受け止めた『少女』に驚愕の眼差しを送りながらも、その姿を見る。

 出で立ちは全身をコートで覆っていた為、詳しい特徴を見ることは出来ない。精々、乱入者が自分たちよりも頭一つ分くらい身長が小さいくらいだ。


「新人類王国のライタント・ヴィオ・エリシャル。そして元XXXの御柳エイジ様。そして――――」


 フードによって覆われた表情が、僅かにエイジの方を向いた。

 その瞬間、彼は見る。フードの中で輝く、黄金の瞳に。嫌でも目立つであろうその瞳には見覚えがあった。


「お前は!」


 トラセインの墓地で、彼女と出会っている。

 カイトの無事を予言し、マリリスがチューリップに襲われることを言い残して去った謎の少女。そいつが今、目の前に再び現れたのだ。


「貴様、何者だ!」


 だが、タイラントからしてみれば初めて遭遇する謎の乱入者に他ならない。反射的に、名乗りを求めた。

 少なくとも彼女の部下で、破壊の力を受け流せるような人材はいない。新人類王国を探しても精々何人か見つかる程度だろう。

 ところが、この乱入者は破壊のオーラが充満しているタイラントの拳を右手で受け止めて、平然とした様子だった。

 しかも破壊の力が浸透する様子もない。明らかに彼女の能力が通用していないのだ。


「……皆さん、お引きください」

「ああっ!?」

「何を!?」


 だが少女は返答をせず、停戦を申し出てきた。

 冗談じゃない。ここまで来て、むざむざ恩師の仇を逃して堪るか。

 タイラントは怒りを露わにしながらも、一言。


「ふざけるな」

「ふぅ」


 その返答をある程度は予想していたのだろう。

 少女は軽く溜息をつくと、タイラントの拳を払い退けた。もう一方の左手はそのままゆっくりと降ろし、エイジの身体を脱力させる。


「誰だ、お前」

「私は――――」


 少女がフードを脱ぎ棄てる。

 そこから露わになった長い髪がふぁさ、と空気に舞い上がると同時。彼女の黄金の瞳が見開かれた。


「イルマです」

「イルマ? イルマ・クリムゾンか!?」


 その名前に、カイトは反応する。

 彼の一言に反応し、エイジが振り返った。


「知ってるのか!? というか、知り合いか!?」

「直接会ったことはない。だが、今の右腕を提供したのはソイツだ」


 その為にわざわざ脱走したエレノアを雇い、(多分)大金を払って素材を用意させ、義手を完成させた。

 本音を言えば、それだけでも十分不思議な行動なのだが、更に彼女の不思議さを加速させる要素はもう一つある。


「後、ソイツはアメリカ大統領秘書だ」

「秘書!?」


 その単語が、どれだけ凄そうな役職なのかはエイジには想像がつかない。

 ただ、アメリカで一番偉そうにしている大統領。その横で何かメモってたり、スケジュールの把握なんかしてる、有能な人なんだ程度の認識である。


「ま、待て。え、マジ? すっげー幼く見えるんだけど」

「マジです」


 イルマが感情を表に出さないまま、そう呟く。

 そして視線をカイトへと移し、続けた。


「こうして会うのは始めてですね」

「ああ。お前には感謝してる」


 偽りない本音である。義手に関して言えば、これ以上ない最高の物を用意してもらった。その恩を忘れなかったからこそ、新生物やトラセットの反乱に対して動いたのだ。


「だが、何故俺に接触してきた」


 目的は何となく分かる。

 恐らく、旧人類連合でも新生物の存在をキャッチしており、それに対する戦力が欲しかったといった所だろう。

 だが、ピンポイントで自分に接触してきた理由が判らない。

 カイトが腕を切断してから、1週間程度しか時間は経っていないのだ。にも関わらず、彼女は最初からカイトの為に義手の素材を集めていたかのような準備の良さだった。

 最初から当てにされていたのだとは思うが、そこまで買われた理由が判らなかった。


「貴方が最も信頼できると判断したからです」

「初対面の筈だが」

「貴方はそうかもしれませんが、私はそうではありません」


 カイトが首を傾げる。

 なんだ、こいつは。エレノアに続くストーカーじゃあるまいな、と怪訝な顔になるが、当の本人は全く気にした素振りもみせないでいる。


「詳しくお話をする前に、こちらを沈黙させた方が良さそうですね」


 一応、説明する気はあるらしい。

 イルマはタイラントに視線を向けると、構えをとった。


「……なあ、何する気?」

「勿論、帰って貰うために戦います。これ以上ここで戦闘をしては、トラメットに甚大な被害が出るだけです」

「いや、そりゃそうだけど」


 言う事はもっともだ。しかしタイラントの相手をすると言っても、イルマはあまりにも小柄である。

 傍から見れば、スバル達と同じく16歳程だろうか。

 無駄に幼さを残したシデンに比べれば多少マシかもしれないが、それでもタイラントの相手としては心もとない。


「ご安心ください」


 そんなエイジの心配を察したのだろう。

 彼女は何の表情も浮かばせないまま、ただ己が事実だと感じた物だけを呟く。


「私は負けないようになっているので」


 直後、イルマの姿が僅かにブレた。

 彼女だけがレンズの中に入ってしまったかのように、姿がぼやけて見える。

 だが、それも長くは続かなかった。

 徐々に焦点が安定を保ち始め、再び視界に女の姿が露わになる。


「うえっ!?」


 ところが、だ。

 エイジの目の前に再び姿を現したのは、イルマ・クリムゾンではなかった。

 タイラント・ヴィオ・エリシャル。

 暴君の名を欲しいがままにしている新人類軍屈指の女傑が、エイジたちを守るかのようにして『タイラント』と相対している。


「新人類か……!」


 カイトは理解する。

 イルマにタイラントの能力が通用しなかったわけを。

 タイラント本人になることができるからだ。彼女本人ならば能力の使い方は分かる。破壊の使い方も、消滅も。

 そうやって彼女は本物のタイラントの攻撃をやり過ごしたのだ。


「コピー能力者!」


 突如として現れた自分自身の姿を目の当たりにし、タイラントは僅かに狼狽する。

 だからと言って、引くわけにはいかなかった。

 イルマがどれ程自分をコピーしたのかは知らない。どのタイミングでコピーし、どういった条件でコピーするのかなども興味があるが、今だけは意味のない話だ。


「お前たち。こいつ等は私がやる!」


 タイラントは部下たちに命令する。

 例えイルマが自分の全てを模造していたとしても、相手が自分自身である以上、抑え込む自信はあった。

 ゆえに、彼女は命ずる。


「ブレイカーに攻撃を集中させろ!」


 標的を壊れかけのブレイカーに絞る。

 既に満身創痍の機体では、一斉攻撃を捌ききれまいと言う判断だった。

 例え六道シデンや神鷹カイトがカバーに入ったとしても、30ほどの猛攻撃を生身で捌ききるなどできはしない。


「やはりそう来ますか」


 だが、その辺はイルマとて百の承知だ。

 タイラントが徹底抗戦に出るであろうことは、彼女とカイトの因縁を聞いた時から予想していた。

 だからこそ、彼女も呼び出す。タイラントの姿を映しだしたまま、自身の味方へ。


「出番です」


 短く紡がれた言葉。

 だが、その一言は獄翼の手前にある物を召喚させた。


「うお!?」

「きゃあ!」


 前方を警戒していたスバルとマリリスが驚き、その動きに合わせて獄翼が後ずさる。

 まるで透明の壁が崩れ落ちていくかのようにして、彼らの前に一体のブレイカーが姿を現したのだ。ステルスオーラを解除しただけなのだということはスバルにも理解できる。

 だが、この混戦の中、何時の間に自分たちのド真ん前に。

 少年の疑問は、目の前に聳え立つ巨大なブレイカーへと向けられた。


 全長は大凡30メートル。

 獄翼の1.5倍程はありそうな巨大ロボットは、全身を鎧で覆ったような大きな図体をしており、静かに腕を組んでいた。

 一見しただけで分かる武装はなし。

 この手の装甲重視機体は基本的に内蔵武器で戦うのがセオリーなのだが、見たところそんな物は見当たらなかった。

 強いて言えば、両肩からやけに目立つ突起物がでてきていることくらいだろうか。だが、古今東西様々なブレイカーを(趣味で)調べてきたスバルの知識の中でも、このような武装は知らない。

 それは同時に、青でカラーリングされたアーマータイプのブレイカーが、自分の知らない系統に属することを意味している。


 要は獄翼と同じく、世間で公開されていない新型なのだ。


「そちらはお願いします、ゼッペル。退かないようであれば、全機破壊していただいても構いません」

『了解した』


 鎧で覆われたブレイカーから、男の声が響く。

 彼はイルマからのリクエストに了承の意を伝えると、自身が駆る巨人を稼働させる。

 組まれていた腕が、解かれた。


『ゼッペル・アウルノート。鬼、掃討を開始する』


 

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