第2話 轟刈太は意味もなく釣りをする。
「釣れねーなぁ・・・。」
そうつぶやいても、誰も返事をくれるわけでもない。まあ、一人で釣りをしているわけだから当然だ。
「そうねぇ・・・。ちなみに釣りって何が楽しいの?無駄な時間が長すぎるように思えるんだけど。誰か代わりの人に釣らせて、釣れそうな時だけ交代っていうわけにはいかないのかしら。」
返事が返ってきてしまった。これが木漏日光でなければ問題なかった。いつもは人と話すのが嫌いな俺でも、嬉々としてお話をしたであろう。木漏日でなかったなら。
「なんでここにいるんすか?」
「そりゃあ釣りしたかったからに決まってるでしょ?釣り以外でここに来る人なんていないじゃない。」
「はぁ・・・・。」
木漏日は非常に嬉しそうだ。俺をびっくりさせることができ喜んでいるらしい。そんなこと早急にやめていただきたい。この女に出会って疲れることが多い。
「それで、なんであたしがアンタを見つけられたか知りたくない?」
「いやーーーー、まったく知りたくないですね。知ると寒気がしそうで怖い。」
とてつもなく嫌な予感がする。俺の逃げる先にコイツはいつも現れる。
「もしかして、この前のスマホすか?ありがたく使わせてもらってますけど、GPS機能は除去したはずなんですがね・・・。」
そう、なんか知らんが俺はこの前木漏日に俺はスマホをもらった。なんか集団を組織するらしい。あの時はまた面倒事が増えたものだと憂鬱になった。
「そうなのよ、だからあなたの方を使ったわ。」
「は?」
意味が分からず気の抜けた顔をしてしまった。
俺の方?どういう意味だ・・・。すこし考えたが、答えを思いついてしまった。あちゃあ、答えはひとつしかないじゃないか。
「まさか、右腕に?」
「そう、ついでにね。」
木漏日は得意の悪魔の笑みをしている。
「そうっすか・・。もう逃げれないっすね。」俺は呆れた顔で言った。
「あんたは私の右腕になってもらうんだから!」
仕方ないな、と思った。この女には大きすぎる恩がある。できるならその辺に捨ててしまいたいものだが、木漏日は決して許してはくれないだろう。
「右腕っすか・・・、確かにもらいましたからね、右腕。」
「そうそう、だから頼んだよ、カッター!」
なんて屈託のない笑顔をするんだろうと思った。この人はいつもこうである。
「わかりましたよ、でなんなんすか?用件は。」
「ロボット作るわよ、ロボット。ちょっと必要なのよね!」
まぁ、ロボットなら得意分野であるからやぶさかではない。俺は、これからの無駄に忙しくなるであろう日々を想像し、微笑んだ。
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