第1話 雨
――頭の上に集まり始めた
大の字になって転がる地面から、容赦ない熱が伝わる。
獲物を捉え、猛って鳴く猛禽たちのさらに真上には、その地面をカラカラに照らす真っ赤な太陽が輝いていた。
自分の体以外何もない荒野の地表には、乾いた風ひとつ吹くことはない。太陽の熱がたまって、ただただ温度が上がっていくだけ。
煮え湯から立ち上るような歪んだ熱気が、辺り一面を包んでいた。
体中の水分が干上がって、空へと還っていく。
今はそれが分かるだけで、それ以上のことは何も考えられなかった。
頭がぼんやりしていた。
乾いた体には、汗の玉さえ、もはや結ぶことはない。上がりきった体温が陽の光と一緒になって、倒れた体を焼くだけ。
ここがどこかも自分がどうなったかも分からず歩き続けてしばらく。最後のときは確実に近付いていた。
出口のない灼熱荒野に、青年の足はついに止まり、そのまま地に倒れ、あとは目を閉じれば全てが終わる。
天に向かって立ち上る陽炎が、嘲笑うかのように視界を滲ませていた。
頭の中は、もうずっと前から耳鳴りのような不快な音に支配され続けている。
その音の他には、時々かすかに花火が打ち上がるような――それにしては随分派手な――発砲音のようなものが辺りに響くだけ。頭の上の鳥たちは気にする様子もなく、騒がしく弧を描いて飛びながら獲物が弱るのを待っていた。
今さら心に波風は立たない。ここが終わりなのだと、諦めとも自失ともつかない思いは、体を突き抜けて指一本動かすこともなかった。
そうして薄ら目を開いたまま、青年は、ゆっくりと訪れる最後を待っていた。
……やがて、灰色の雲が天を覆って、大粒の雨の雫が、乾いた彼の口元を通り過ぎていくまでは。
雨粒がまぶたを流れていく。
青年はもう一度、その目を開けた。
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