第2話 思い出の賛美歌 その4

 片づけは思っていたより簡単に終わった。黒い布は押しピンで留めてあっただけで、外に出していたベッドは部屋に入れ易く積んでいたので思っていたより簡単に運び込めた。

 私がベランダで一息ついている時に見かけてないから外で待っている間に出したのだろう。そう考えると一瞬感心してしまうが結局、面倒な仕事を一つ増やしただけでしかない。

 直哉は押し入れから回線の付いたままのパソコンを取り出し、慎重に机に置いた。

「ふぁぁ、疲れた」

「全部あんたがしたことでしょうが」

 直哉を睨みつけたが彼は何食わぬ顔で別の作業に移った。直哉の服はフードが付いた白の長袖と半ズボンに着替えさせた。私が朝飯を買いに行っている間に着替えさせたのだ。

「ねぇ直ちゃん、なんかいい仕事とかない」

「前の仕事で大金が入ったから当分は寝て暮らすって言っていませんでしたか」

「言ったけど、なんか一日中ボーとしていると、色々考えたくないことを考えちゃうのよ。だからなんでもいいから仕事がしたいの」

「じゃあ、今すぐパソコンで検索するから待っていてください」

 直哉はパソコンに電源を入れた。

 私は賞金稼ぎをしている。ネットには国際指名手配犯の居場所の特定から犬の捜索等、幅広い目的で賞金が賭けられた仕事がある。その中から好みの仕事を選んで稼いでいる。

 仕事内容を一見すると何でも屋がやっていそうな内容だけど根本的な違いは依頼されての仕事ではない。自分から探して仕事を行う。探すのも面倒なので代わりに直哉に探させている。昔は直哉の父親である和人がやっていたが現在はその息子の直哉の仕事だ。

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