第2話 思い出の賛美歌 その5

 私は何もすることが見つからなかったから、せわしなく動く直哉の姿を見つめた。

 直哉は賞金検索サイト『ギルド』の依頼状のリストを睨むように見つめている。

 現在、世界中にはネットが張られている。ネットにおける情報は局地的に集まる傾向がある。お互いのサイトにアドレスを載せ合って情報は集め易くしているのだ。一般人も賞金を懸けてくるので何万件の賞金リストが存在してビジネスとして成立している。

 ネットには国境がなく国家間を跨いで情報の行き来が容易にできる。仮にある国家が情報の漏洩に規制を張ったとしても、別の国家の中で規制された情報を扱われたら対応は難しい。対応を間違えれば国家の干渉と見られて外交問題にまで発展するからだ。常任理事国の大統領を暗殺依頼とか大事でない限り規制は難しい。更に国家もそれを利用している一面があるから余計に規制が甘くなる。この仕事はその隙間を突いて行われているのだ。

 とはいえ私自身、暗殺等に興味がないし、その手の仕事をする気もないのだけど、私がやった仕事の内容でのちに何万人死のうと私の知ったことじゃない。

 直哉がキーボードを放し、こちらのほうを振りむいた。

「リリティアさんが気に入りそうな依頼を二つほど見つけたのだけど、どうしますか」

 ベッドから離れてパソコンを見つめた。そこには二つ懸賞金の情報が書き込まれていた。

 一つはグロッセル王国の中にある人の手によって整備されてないために立入禁止されているカルバッタ郊外にある軍事施設を見つけて施設で行われている研究、あるいは実験等の資料を回収、あるいは撮影する等を行い、収集した情報を依頼主に提供すること。

 もう一つは同じ王国のマフィアが経営しているセントナース地区の地下施設の調査を行い、資料を回収、あるいは撮影する等して収集した情報を依頼主に提供すること。

 結局のところ二つとも依頼主が知っている以上の情報を持ってこい、という内容である。

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