すなのうみの章
第21話 砂漠の旅。
ざあっと風が吹くと全身に砂が叩きつけてくる。
もうブロウには騎乗せずエルフにもらったマントをかきあわせながらなんとか前のめりで歩いている。
隣を歩くライトがか細い鳴き声をあげる。
ライトは俺の膝を越すほど大きくなりもう懐にいれることはできない。
成長速度は、ゲーム仕様です多分。
一緒に頑張って歩く他ないが日陰になる場所も見えずこの先にある王都もまだ見えない。
「もう少し、もう少し」
「ぴぃい~…」
「ブる…」
エルフの集落を出て王都へ向かった俺たちは
日の高い内は熱風が舞い砂が叩きつけてくる。
俺の
夜は逆に凍えるほど寒い。
昨夜はブロウとライトと寄り添って寝た。
もふもふがたまらんかったです。
「ぽ、ぽ、クルるる」
朝は新しく仲間となったエルフポッポ、ぽーが翼で鼻を叩いて起こしてくれた。
くすぐったさで起床。
現在ぽーは水先案内人として俺たちより先を飛んでいる。
まあたまに蠍とか蟻地獄とか遭遇戦はあるけれども。
ぽー自身なら空中を行くから関係なかったんだろうな。
しかし俺自身地上を行くしかないので付き合ってもらっている。
「シャーッ」
「ふんッ」
砂漠の魔物が相手なのでめり込むサックを水流のカトラスに持ち替えて戦っていた。
今度は砂蛇だ。
砂でできた蛇のようなんだが拳で対応したところで散開した砂が再び戻ってくるだけで意味がなかった。
水流のカトラスに魔力を込めると刀身に纏った水流が砂を固めて斬れるので簡単に倒せる。
だが回りは砂だらけの砂漠だけに数が多い。
ここ数日はしばらく戦闘続きだ。
「うりゃあ!」
十匹ほどを纏めて斬ったのでやっと戦闘が終わった。
暑さと激しい動きでだらだら垂れてくる汗をアイテム袋から出した手拭いで拭くとカトラスをベルトにつけた鞘に納める。
この砂の海では水流のカトラスが大活躍で助かっている。
エルフたちに感謝だな。
距離をとって牽制に参加していたブロウ、ライト、ぽーと集合する。
「はあ、さすがにきついな」
「ぽ、クル、ぽー」
高度を下げブロウの頭に降りたぽーがバサッと翼を広げて鳴く。
「ん…?」
ブロウは動じないがライトの方は鼻をひくひくさせてどこかを見ていた。
つられるように視線をたどると揺らぐ蜃気楼が見えた。
いや…あれは幻じゃなく本物か。
「よし、あそこで休憩するか」
「ぽー!」
「ブルん!」
「がウっ」
みんな喜びの声をあげて尻尾、あるいは翼を振って見せた。
ライトは砂漠を進む間に成長し、声変わりを果たしたようです。
成長速度は、ゲーム仕様です多分。ええきっと!
今ではもう腰に届きそうなほどで、後ろ足で立ち上がれば俺の身長と同じかちょい越えそうなくらいです。
でかくなったもんだ。
でも尻尾を振ってじゃれついてくる様子は相変わらず可愛いのだった。
ヤシの木によく似た植物に囲まれたオアシスにたどり着くとまずは水が飲めるかを確認する。
「…クッ、旨い!」
ブロウ、ライト、ぽーも水に口をつけるのを横目に皮袋を取り出してたっぷり補給しておく。
何個か水を満杯にして閉じたらアイテム袋に収納だ。
ざっと一周したところ危険はないが、水場を求めてくる魔物もいるだろう。
長居はできないか。
…と思ったが疲れていたらしい体は眠りを求めている。
少しだけ、と目を閉じたのがいけなかった。
「ぽーーーーーーーーーッ!!」
「!?」
ぽーの尋常でない叫び声で飛び起きると、隣で寝ていたライト、ブロウも警戒体制になっている。
一緒に寝ていたはずのぽーの姿だけがそこになかった。
「ぽー!?」
見回してもヤシの木の上にもいない。
あの叫び声は異常だったと思う。
「ライト、ぽーの匂いを追えるか?」
「グルルるる…がウ!」
地面を嗅いで吠えるとライトが走り出す。
俺はすぐにブロウと共にライトを追いかけた。
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