めがみのこの章

第16話 ご飯事情。

ユラさんの無事を確認したあと、サイオウのマーケットで補給をした。

ポーションなどはもちろん、食材の確保もだ。

メタモルモフモフワンダーでは俺たちプレイヤーに空腹度はなかったが、現在の俺は腹が減っている。

これはひどく重要なことであった。

俺は魔法が使えないから水も出せないんだ。

俺は大量の水と食料を買い求めアイテム袋に詰めこみ、更にブロウにも荷袋をかけてホッと息を吐く。

無制限にものが入るアイテム袋があって本当に良かった…。


以前空腹が起きないシステムだった時はアトラクション的にこの世界の食事を楽しんでいたプレイヤーもいたが、俺はアイテムであるポーションや水以外にはあまり積極的に摂取していなかった。

だがしかしこうなったからにはこちらの食事をとらないわけにもいかない。

この世界では野菜、魚、果物、穀物、が主で肉はあまりないんだったか。

もともと少なかったのが、今はもっと減っている。

魔物が獣を襲っているのだ。

モフラーとしても甚だ遺憾であります。

マーケットの噂話だと今の肉は豚か羊が主要なところらしい。

羊は意外とらしい。

番犬ならぬ番羊なんてのもいるという。

豚はぶっちゃけオーク肉も混じった話のようだ。

討伐したオークからのドロップに肉があったのを思い出す。

俺もギルドに納品した事があったっけ。

自分では食べなかったが好評だった。


村で食べたクラブハウスサンドは野菜サンドだったから抵抗なかったけど…、そろそろ肉がほしい。

ブロウの手綱を引きながらマーケットの食事処を覗く。

サイオウのマーケットが結構大きくて食事処も数があって迷ってしまう。

「うーん、どうしようか…」

「ぴっ、ピい~い?」

「ライト?」

「ピい!」

「ブルん」

「ここ…?」

ライトとブロウの声に促されひとつの店に入った。


「いらっしゃい!」

広く清潔な店内にはカウンター席とテーブル席がある。

テーブルには鉄板が据えてあった。

大衆食堂らしく農民や商人が大半で身なりの良さそうな人はせいぜい稼いでそうな商人が一人いるかどうかだ。

羊肉と言うと癖がありそうな気がするがただただ美味そうな匂いが店内には満ちている。

「お兄さん一人ですかー?」

「ああはい…羊と豚と半々で」

「はいよー!」

「あー馬におおかみ…でなく犬、にもご飯をあげたいんだけど…」

「ああ!じゃ、多目に用意しますんで動物には表でやってください」

「ん、どうも」


店表に繋ぎ止める場所があったのでそこにブロウを待たせ、ライトは離れるのが心配だったが荷袋に入ってもらった。

さほども待たず出されたのは焼き肉。

たっぷりのネギと塩のタレがさっぱりとして旨い。

ここでの羊肉はむしろ鶏肉に近い味だ。

というよりワニっぽい?

淡白な感じだが…旨い。

味わいつつしっかり食べるとライトとブロウのぶんを受け取り、持ち帰り用にうつわ代も含めて銀貨一枚を支払って店を出る。


「ぴ…ピいピィ!」

「ブヒヒんっ」

お腹が減っているのに更に待たせてしまったので二人は大声で訴えてきた。

うん、すまんかった。

「お待たせ…ほらご飯だぞー」

馬と言えばニンジンと思うが例のごとくここでは関係なく肉も食べる。

ブロウも旨そうに羊肉を食べている。

ライトの方はと言えば肉はまだ食べられず野菜を柔らかく煮たものをあむあむと食べている。

まあ離乳食のようなものだ。

まだ子狼、いや子犬だと言ったらじゃあ柔らかいのが良いだろと作ってくれた。

ありがたいことです。


味の違いなど意外なことがたくさんあるけど、この世界の食事もなかなか。

食わず嫌いをしていられる状況でもない。

いつまで続くかわからないからこそ、挑戦を楽しもう。

こっそり教えてもらった離乳食も…挑戦である。

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