第17話 エルフの森へ。

腹ごしらえがすんで二人が気に入ったらしいご飯を追加でもらってからサイオウを東へ抜けることにした。

ちらっと魔法屋のオジジに声かけたらライトに目を細めていた。

孫みたいな目になっちゃってライトにプレゼントだと脚輪をくれた。

有料でしたが。

ついでにブロウにも同じのを買いました。

二人とも脚輪を揺らして喜んでいたので良し、である。

それぞれの目の色の石がはまった細身の銀の脚輪は二人の黒い毛並みによく合っている。

しかも魔道具らしく防御を少し上げてくれるのだ。

良い買い物をした。


サイオウのギルマスに聞いた方角へブロウの足を向ける。

「よろしくな、ブロウ」

「ブルん」

「ピい!」

「うん、ライトもな」

ブロウのたてがみとライトの背中を撫でて、森を目指した。


エルフの森は魔物が出る森と違って、草木が鬱蒼と茂っているにも関わらず明るい。

「これは、エルフが精霊と親和性が高いからかね…」

「ぴ?」

針葉樹がみっしりと生えた森の中へ少し進んだ所でバサバサと羽ばたくものが降りてきた。

「…クルる?」

ブロウの頭上にとまりせわしく首をかしげている。

鳥類は左右離れた位置に目があるから正確に認識するために首を傾げるようにして視る必要があるんだったかな。

こんなとこまで来て、鳩に出会うとは思わなかったけど。

「くるッポー」

冠羽のある黒っぽい鳩はしっかり視認したあと俺に向かって一鳴きして、今度は俺の頭上に飛んできた。


「うおっと」

驚いた拍子に耳がピクピクと動く。

獣耳が気になるのか鳩がつつくがその嘴が当たったのはエルフ友情の証と言われた銀のイヤーカフだった。

『旅人のハルキ殿とお見受けいたす』

「は…」

突然しゃがれ声が聞こえて目を瞬く。

『エルフ一同歓迎いたす所存。エルフポッポに先導させますゆえ続いて集落へお越しくだされ』

エルフポッポって、この鳩の事だろうか。

というか声はそのエルフポッポから出ているような?

「ぽー」

しかし疑問には答えることなく鳩が飛んで行く。

少し離れた木にとまるとこちらを見下ろしている。

見上げると更に先に進んでしまうので俺たちは慌てて追いかけた。


気がつくとひらけた場所に出ており、迷いそうな針葉樹の森を抜けたみたいだ。

振り返ってみるとやはり木はみっしり生えて獣道すらあったかどうかと言う具合で道順はもうわからない。

ブロウの背からおりて前を見れば所々に大きな木があるが風通しの良さそうなここが集落らしい。

「ようこそエルフの集落さとへ。同胞の窮地を救ってくださったと聞いとります。心より感謝を」

野趣溢れる風情に見とれているうちに現れた老人が一礼してくる。

「いえ、成り行きで偶然助けただけですよ。とはいえ、彼女…仮にスカイと呼んでいるんですがその情報があればと思います」

こちらも礼を返しスカイの事を聞いてみるが老人は顔を曇らせた。

「こちらとしても助けになれればと思いますが…集落さとのもの全員に聞き込んでみても誰もそのような娘を知らぬと」

「そうですか…」

サイオウのギルマスにも期待薄なことは聞いていたのだがやはり少し落ち込む。

しかし続く老人の言葉で切り替えることに。


「ですがその娘…エルフ族の伝承にある方に似ておる気がするのです」

「…伝承?」

いにしえからの言い伝えといいますかうたといいますか…」

「唄、ですか」

頷いたあと老人はにっと歯を見せて笑った。

「その唄は宴で披露するのが習わしでして。まずはこちらへどうぞおいでなされ」


老人は長老だった。

背はさほど高くはなく頭頂部はやや寂しいものの豊かな白い髭をたくわえた姿は俺のイメージする長老そのものである。

案内されたのは集落の中心にあるらしい集会場になる広場らしかった。

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