第14話 同志。
身体の方はなんともないということなので、ざっと村の案内をすることにした、のだが…。
「……もふもふ!」
「ぴゃぅ!?」
「か~わ~い~い~!」
「ぴ、ぴい…」
同志ですねわかります。
魔物に丸呑みされたときの原因もアレだし。
病状というか現在の状態の確認を終えてじゃあ外へ、といって出ようとした時に俺の胸元に入ったライトに気づいた彼女の様子が激変した。
目がきらっきらに輝いて生きた表情になった。
これが本当の彼女なんだろう。
「それじゃあまず村長に挨拶に行こうか。ここはマーケットの端だから反対端の村長がいるギルドまででだいたい主要な場所はまわれるよ。ええと…どうしようか、呼び名だけでもつけた方が…」
「…妾も名前がないと会話が不便に感じる」
少し考えた後で彼女は頷く。
俺がつけていいというので彼女を改めて見た。
やはり印象的なのは色素の薄さ。
色素が薄いというとアルビノを思い出す。
兎とかだと目は血管の所為で赤いんだっけ?
彼女の場合は青だけど。
ライトの青い目と比べると薄い、…そうだ。
「スカイ、ってどう?俺の世界の言葉のひとつで空の事」
瞬きをひとつして彼女…スカイは笑って頷いた。
「ここがドワーフの親爺がやってる武器防具屋で、そっちが回復アイテムや食材の店。それからあっちは魔法屋で…」
指し示し挨拶を交わし、その度にスカイは感心したように頷き覚えようと耳を動かす。
その仕草はとてもエルフっぽい。
俺の胸までもない身長も相まって子どもらしく見えて微笑ましい。
エルフであればその見た目より年齢は上なのだが。
記憶がない所為かますます見た子どもにしか見えないからそれが可笑しく、込み上げる笑いをこらえると俺の尻尾が震える。
「……………」
うん、ごめん。
凝視しないでクダサイ。
「…触っても」
「…駄目、いや、まあ…ちょっとだけなら」
「ありがとうもふもふ!」
美少女の涙目には勝てません。
ギルドに着くと受付作業が終わるのを待ってサラさんに声をかけた。
「こんちは、サラさん」
「あっこんにちはハルキさん!そちらは?」
サラの茶耳がピンと立ってスカイに注目しているのが分かる。
「スカイだよ。しばらくリャンさんのとこで暮らす予定なんだ。こっちにも顔を出すかもしれないから、よろしく」
「…よろしく頼むもふもふ!」
「よ、よろしくお願いします?」
うん、語尾が定着してきたよね。
結局村長に会えるまでスカイはサラの尻尾をなでなでしていた。
…羨ましくなんかないよ?俺がやったらセクハラです。
村長に会ったスカイは残念そうな顔をした後は黙ってお茶を飲んでいる。
熊みたいに大きいけど人だからね。
「まあそういうわけなのでしばらくお願いします」
「…わかった。色々復調すれば戦力になる可能性もあるか?」
「そうですね。ただで生活できる訳じゃないですしできる範囲でお手伝いなんかはするってことで」
「妾、自分の事は覚えておらぬが生活のために働くということはわかる。よろしく頼む」
スカイは丁寧に頭を下げた。
村長も笑顔でそれを受け取った。
「ああ、よろしくなお嬢さん」
スカイはリャンの診察の手伝いや買い物、手の空いているときにギルドで自分の身を守るくらいはできるように色々やってみるということになった。
あと、村にいる獣人と交流したいとか…うん、モフラーです。
農耕馬とか乳牛の世話とかも彼女の日課となりそうだ。
村人とも問題なく接しているので大丈夫だろう。
さて、これで心配ない。
俺は俺でやることをやらねば。
「スカイ、俺は出掛けるから…もし君の故郷がわかったり情報があったら手紙を書くよ」
この世界に便利な通信手段というのはほぼない。
魔道具にはなくもないが値段も高いし使用条件が厳しくこの村にはない。
俺としても魔力はあっても魔法が使えないからとれる手段は手紙だけだ。
「…妾はまだ整理がつかぬが、待っている。よろしく頼む。…元気でなライト、ハルキ」
「うん、スカイも」
「ぴい!」
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