第12話 新たな仲間。

その後も何度か新種と既存の魔物との戦闘をしつつ、村に辿り着いた。

小さな獣は道中ほとんど寝ていたが寝相が豪快にヘソ天の開き状態で笑いを誘い、癒しとなっていた。

びっしりと黒い被毛に覆われた子獣は狼のようだった。

全身黒いが尻尾の先だけ白いので俺はペンライト尻尾のライトと名付けた。

未来を照らすライトの意味を込めて。


「ぴい、ぴい♪」


村に着く頃には目もぱっちり開いて、俺になついてくれた。

瞳は猫のように縦に虹彩が入っており、きれいなマリンブルーだ。

子狼の鳴き声は子猫のようなものだったと思うけどここだとちょっと小鳥に似た声だな。

もふもふ。もふもふ。かわええのう。

狼と言えば大きな三角耳にしなやかでフサフサの尻尾筋肉質ながっしりした脚や鋭い牙だと思うが、ライトはまだ小さく殆ど大型犬の子みたいな感じでコロコロとしている。

俺の尻尾にじゃれるライトめっちゃかわいい。

あ、こけた。


「ライト、これからはこの村がお前の家だぞ?良い子にしてろよ」

「ぴ…?ぴい、ピぃー」

ひょいと抱き上げて村を指差してライトに言うと頭をぷるぷる振る。

「うん?嫌?」

「ぴっ!」

「村が嫌なのか?」

「ピい、ぴーっ!ピゅい!」

「イテテ食い込んでる食い込んでる」

ぎゅうっとしがみつかれて爪が腕に食い込む。

ちっちゃい爪痛いけどかわいい。

かわいいけど言葉はやっぱりわからないな。

ライトの方は俺の言葉がわかるみたいだが。


「そいつハルキと離れたくないんじゃない?」

ディアナの苦笑混じりの言葉に目を見開きライトを見つめる。

「!そうなのか、ライト」

「ぴいっ」

俺の言葉に激しくうなずく様子に高揚する。

ただ村に増援の冒険者を案内したら再び出発するつもりだった俺は逡巡する。

聖獣と女神を探し封印を解くということはきっと魔物が邪魔をしに来るだろう。

危険の中へ飛び込んでいくのだ。

そこに生まれたばかりのライトを連れていくのは…。

しかしライトは俺を見つめ続けている。


「…危ない時は懐にしまっとくか?」

「ピゅいっ!」

元気に鳴いたかと思うとライトはシュシュっと前足を振る。

急に前足を動かしたために落ちそうになるライトに慌てて支えると再びしがみついてきて笑みがこぼれる。

「ヤル気に満ちてんな」

「ぶっとい脚だし、すぐでかくなるって!」

ゲントとヴァローネも面白そうな顔で後押ししてくれるが、小さいうちは戦闘させないぞ?

「…頼もしいけど大きくなったらな。うん」

「ぴ!」

かわいいもふもふを仲間に加え、俺は村の入り口へ立った。


「あ!ハルキ、戻ってきたかっ」

「ジョンさんただいま。ランクBパーティー連れてきたよ」

門番のジョンに声をかけるとあからさまにホッとした様子で、俺もホッとする。

俺がいない間に魔物との大きな戦闘はなかったようだ。

「じゃあ早速ギルド行こう」

「おう、俺たちが来たからには安心しろ。伊達にAランク冒険者やってないからな」

「えっAランク!?」

「ああ、リーダーのヘルズゲントと剣士のディアナがAだって」

「ありがたい…よろしくお願いします!」

「こちらこそしばらくお世話になるよ、よろしくね」

「は…はいっ」

ディアナに見蕩れるジョンに苦笑し、村にはいると広場脇の簡易の馬車止めに馬車を預けてギルドへ向かった。


小さな村のメインストリートに行くと直ぐに俺たちに気づいた村人が声をかけてくる。

既にみんなに追加戦力の事は知れているからだろう。

歓迎、歓喜の声ばかりだ。

村に常駐の冒険者ですら嫌がっている様子はなかった。

高ランク冒険者は憧れだからな。

にわかに人だかりができた中を進みギルドに着くと今や遅しと待ち構えていたらしいギルドマスターが立っていた。

相変わらず熊のような図体で右往左往。

隣に立つサラさんは迷惑そうに耳を伏せていたが、俺たちの姿を見つけると嬉しそうに手と尻尾を振る。

「ハルキさん、お帰りなさい!」

「ただいまサラさん、村長」

「おお、帰ったか!助かった………ところでそれは?」

嬉しそうに出迎えてくれたが俺の懐に入ったライトに揃って首をかしげた二人に、俺はいたずらっぽく笑って答えた。

「こいつ?こいつはライト。俺の新しい仲間ですよ」

「ぴい!」


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