なかまの章
第11話 地割れより生まれし?
俺たちは和やかに会話を交わし、たまに妙な新種を倒しつつ進んでいた。
街道近くに出る新種は殆どが虫っぽいのとにょろにょろしたやつで、女性二人はもちろん獣人のヴァローネも強がっているが嫌悪感が強いようだ。
確か猿は蛇が天敵だったか?
日本猿はそうだった気がするけどワオキツネザルもそうなのかそれとも異世界?だからか…。
まあ器用にクナイのような短剣で倒していたけど。
更に全員が討伐後に消えないことを不思議がっていたことから、やはりこれも
毒袋などとれそうなものはとり後は埋めていく。
解体は魚をさばいたことぐらいしかない俺より少年二人の方がうまかった。
半分ほどを踏破し巨大ミミズを倒した辺りまで来た時、地鳴りが轟いた。
地震にグラグラと揺れる馬車に驚きいななく馬たち。
「ブルルルル!」
「よーしよし、大丈夫だ。落ち着けー」
ゲントが御者台を降りて馬をなだめる。
森の方から逃げる鳥たちのギャアギャアという鳴き声も聞こえてくる。
俺も降りて周りを警戒していたがいっそう大きな揺れで立っていられず膝をついた。
ドーンと爆発音のような重く大きな音が響くと目の前の地面がばかっと割れてしまう。
「…ッ!下がれ!」
馬を馬車からはずして少年二人と女性二人を乗らせて俺とゲントは己の足で走った。
横目に振り返るとみるみる大きくなる地割れに背筋が冷える。
五百メートルほど離れると地震も地割れも収まったらしく静かになった。
恐慌状態で走ったため異常に疲れを感じるなか、地割れに車輪が落ちそうになっているが何とか引っ掛かっている馬車を引きずり戻すとそれぞれへたり込む。
「も、もう動きたくないわ…」
「うう…疲れた…」
肉体疲労より精神疲労が勝っているのだろう。
みんなぐったりしてしまった。
ゲントも馬車に寄りかかるように胡座をかいて溜め息を吐いており、俺も辛うじて立っていたが内心では同様だった。
だがそんな俺たちを嘲笑うように地割れから蛇型の魔物が這い出てくる。
「ギョギョギョギョ」
「イヤーもういい加減にしてー!」
にょろにょろした身体中についた無数の目がギョロッと俺たちを見て小さな牙だらけの口をかぱっと開けて威嚇していた。
「ギョギョ!」
「うるさい!」
「休ませてよねッ」
「ギョエーッ!」
重なるストレスにキレたヴァローネとレイヤに瞬殺されていたが。
さすがにその後すぐには動けず警戒しつつも軽く休憩をとってから移動を再開することになった。
貴重な水をみんなで分けて飲み一息つく。
「そろそろ行くか…っと、なんだ?」
微かに気配を感じて辺りを見回すがここにいる仲間以外に動くものはない。
ふと背後の地割れを見ると黒い影が蠢いていた。
大きく割れた地面は亀裂の範囲こそ広いが深さは人の身長ほどで落ちても死にはしないくらいのものだった。
「ッな、…あ?」
「また!?って、あれ?」
警戒する俺に気づいた面々はうんざりしつつ戦闘態勢に入ったが、直ぐに警戒は緩む。
黒い影は小さな
しかも何匹もいる黒い獣のうちたった一匹だ。
「ぴぃ、ぴいっ」
よろよろと動くその獣は悲しげに鳴いていたがやがて声もなく震える。
兄弟たちがもう二度と動かないことを理解したのだろう。
「…………」
俺は無言で地割れに飛び込み黒い獣の子を抱えあげた。
「ピゃッ?ぴーっ!?」
じたばたする体を抱き締めると優しく撫でる。
悲しみに寄り添うようにただ無言で何度も撫でた。
「ピゅい…ぴい…」
おとなしくなった獣と目を会わせるとそらさずじっと見上げてくる。
「お前、一緒に来るか?」
「ぴっ!」
小さな尻尾をピルピルと振って答えた獣は一度だけ振り返ると兄弟に向かってきゅんと鼻を鳴らし、後はもう見なかった。
俺は獣を懐にいれて兄弟を埋めてやり、ゲントたちのところに戻る。
「おっ、そいつどうするんだ?」
「さっきの地震で一匹きりになったらしいから連れていく」
多分村の冒険者が話していた獣はこいつらだったんだろうな。
地割れに落ちたせいで弱い子供は死んでしまったのだ。
一匹だけ生き残ったのは兄弟がクッションになってくれたからだろう。
本来厳しい旅にこんな目も開いたばかりの子を連れていくべきじゃないだろうが、せめて俺の定宿にでも預けたいと思った。
村の番犬役にでもなればみんなで面倒を見れるだろう。
そう説明すればゲントも納得してくれた。
まあまだ自由に動けるほど大きさはないから馬車の中に乗せておけば戦闘の邪魔になることもない。
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