第10話 ランクBパーティー。

女神像に向かってなんとなく手を合わせて無事に聖獣を見つけられるようにと念じて俺は教会を出た。

祈りのしぐさは日本人丸出しだったのでわずかに注目を浴びたがキニシナイ。

目に入った表にある像を眺めて呟く。

「それにしても…白エルフ?」

「違いますよ」

独り言に返事があり振り向くとNPCのシスターらしい白い僧服の女性が立っていた。

「女神様は姿こそエルフの方に似ておられますが、地上に存在するいかなるものより強いお力を持つお方です。あの像は仮の姿を象ったものですの」

「仮の…なるほど」

「参考になりましたかしら」

列整備のついでに観光ガイドもしてくれたシスターに俺は会釈を返す。

「…どうも」


このゲームメタモルモフモフワンダー、本筋のストーリーはなくあらすじも適当だったしあまり気にせず日常プレイをメインにしていたのだが…。

設定としては女神が創り見守る獣天国、だったはずである。

獣たちとの日常もふもふ、ご近所から魔物のトラブル解決…そして女神の依頼などといった小さなイベントの繰り返し。

この依頼のとき女神イベントの姿がこれだったのか。

だが前にイベントで見たときは顔や姿が不鮮明だった気がするが…今ははっきり見えるということだろうか?

うーん、これ以上は今考えても意味がないか。

俺はとりあえず門へ向かうことにした。


門を出てすぐに馬車止めがあり、そこに何人かの冒険者がたむろしている。

あれがおそらくランクBパーティーだろう。

彼らのうち一人が俺に気づき手を振ってきた。

「おおい、あんたが村の冒険者か?」

「はい。ハルキです、よろしくお願いします」

五人の冒険者のリーダーは禿頭の重戦士タイプ。

他は兎系の獣人弓士にレイピア持ちの女剣士におかっぱ魔法使いに盗賊(シーフじゃなくレンジャーの方だと思う)、の四人。

リーダーの戦士はヘルズゲントと名乗った。


「よせよ敬語なんか。若そうだがあんた旅人なんだろう?ならランクなんて関係ないしな」

「そう?じゃあ遠慮なく。ヘルズゲントって長いからゲントでいいかな?」

早速ため口で話すと一瞬あっけにとられたように呆けていたが、直ぐに笑って了承してくれる。

中年に見えるけど(禿頭は剃ってるらしい)声の張りからは若そうなゲントは、気さくな人柄のようだ。

兎獣人の弓士はレイヤと名乗り女剣士はディアナと名乗った。

レイヤは全体的に白く先端が黒い冬のユキウサギの耳が生えている。

前から見えないけど白くて短い尻尾があるんだろう。

ディアナはベリーショートのボーイッシュな髪だが唇がつやっとしていて女らしい感じだ。

妙齢の女性二人は幼馴染みらしい。


魔法使いはタッセ、レンジャーはヴァローネと元気に名乗った。

「タッセとヴァローネも幼馴染み?」

「ちがわい!」

「そうだ、むしろ悪友の腐れ縁だ」

「「………フンッ」」

少年二人格好は違うが双子のように息ぴったりなんだが。

ちら、と他の三人を見れば苦笑して頷いている。

いつものことらしい。

喧嘩友達みたいなものか。

タッセは色白でそばかすがあり、ヴァローネは…ワオキツネザルっぽい。

頭部には毛足の長い灰色の耳と臀部にしましまふさふさの尻尾があった。

もふもふの尻尾がゆらゆらしてかなり…触りたい。

じっと見ていたら尻尾をきゅっと抱いて隠されてしまった。

惜しい、がその仕草が可愛いので許す。


「ヘルズゲントとあたしがランクAで、レイヤがB。タッセとヴァローネはCだよ」

ディアナの説明に頷き俺も自己紹介をした。

と言っても旅人で格闘術メインの戦士ってことくらいだが。

「今回は村の戦力追加のための調査と防衛ってことだけど…気に入ったら定住も考えてくれよ。ここより不便はあるかもだけど長閑な良い村だよ」

「ははっ考えとくよ」


普段なら歩きで行くのだがついでに解毒や回復アイテムの物資もということで二頭立ての馬車を使う。

女性と少年が幌でおおわれた中へ乗り、俺とゲントは御者台に乗った。

「一応街道沿いの魔物もピックアップして討伐していくぞ。調査もあるからな」

「「おー」」

ゲントが声をかけ少年二人が元気に答えると馬車が進み始めた。

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