たびだちの章
第6話 新種。
サイオウには今までにも何度か行ったことがある。
物も人も多く豊かな町だ。
またいくつかポーション等を買ってから、村を出た。
門番のジョンに挨拶して街道を歩く。
村を少し離れたところで街道を少しずれ、魔物を狩りながら進んだ。
「…やっぱり多いな…」
噂通りの状況に拳をふるい、あるいはナイフを投擲しながら思考を加速させる。
女神に創られた聖獣を探して封印を解く。
まず封印を解く力かアイテムか。
その次が聖獣の現在の居場所、か。
先に女神を探すべきか。
…
いやもふもふの女神だったらいいけど。
後半から空転しつつ魔物を踏み越えていたら突然何かの液体が飛んできて、咄嗟にサイドステップでかわす。
なんだ?
集中し気配を探るが通常の感覚ではとらえられない。
視界のマップモードからエネミー反応を探し、ターゲットマーカーをそこにふる。
森方向とは逆の村を背にして左手に沼地があった。
そこに魔物が潜んでいる。
街道からそこそこ距離があるのにさっきのような中遠距離攻撃ができるのか。
まだサイオウには遠く村の方が近い場所だ。
これが多分ギルドで聞いたミミズのでかいの、だろうな。
小さいがスライムも生まれている。
従えているのかミミズの周囲に集まっていた。
放置するとまだ増えるかもしれない。
ここでこいつらを殲滅しておくべきだな。
俺は装備をもう一度チェックしてから沼地に近づいた。
「ギュアアオオオオオ!」
ナイフの射程距離に入ると同時に魔物が沼から飛び上がってくる。
露になったミミズの体は泥の塊のように黒く、動く度に剥がれ落ちている。
しかも剥がれた部分から粘液が垂れており落ちた地面は焼け焦げるような音をさせる。
「…酸か!?く、行け!」
ナイフを投擲しながら跳びすさる。
しかしミミズは刺さるナイフを気にも留めずこちらに酸を吐き出す。
「っチ!痛覚鈍いのかよ?」
十本ほど続けて投げるがまったく痛痒を感じないかのごとく動いている。
周りを飛び跳ね触手を伸ばすスライムも鬱陶しいが、こっちはまだ弱いのでローキックを当てれば豚のような悲鳴をあげ動かなくなる。
俺は酸を避けながら雑魚スライムを倒しきった。
これで巨大ミミズ一匹に集中できる。
ナイフは決定打には全く程遠いが、できれば直接さわりたくはない。
だが無限ナイフとはいえ無駄打ちするのも癪だ。
アイテム袋からサブウェポンを取り出すと、鋭く飛ばされる酸を避けショートソードを振り抜く。
「ギュオオオオオ!?」
ミミズの泥と粘液の皮膚が裂けて青緑色の体液がこぼれた。
目鼻はないがでかい牙を剥き出しにして怒り狂ったように叫ぶミミズ。
手応えもかなり重かったから分厚い皮膚にダメージは通ったようだ。
「よし、行くぞ!」
「ギイイイッ!」
飛んでくる酸をバク転して避け首とおぼしき所を一気に貫く。
「ギ、ギ…」
刺さったナイフを斜めに抜き様頭を斬り落とした。
まだ暴れる尾を叩き斬って漸く静かになった。
「ふう…」
さて…この沼、多分魔物の発生ポイントになってるよな。
西に行く前に村へ知らせなきゃな。
その前にドロップアイテムを拾おうと魔物を見遣る。
「………?」
通常なら少し待てば消えるはず、なのだが。
「…消えない?」
そういえばスライムも細かくはなったがその辺に散らばっていた。
これはゲームのシステムが効かなくなった部分なのだろうか。
それとも新種の魔物ゆえだろうか。
見回しても変化はなく、ドロップも出ない。
俺は腰のアイテム袋からネタアイテムだったシャベルを出して大きめの穴を掘り、気持ち悪いミミズをスライムの残骸共々地中に埋めた。
「…んじゃ、村のギルドに戻るか」
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