第5話 冒険者ギルド。

女神の創り出したも、聖獣を封印から解き放てばきっと変わる。

どこにいるかどんな姿かもわからないもふ…聖獣をもふ、いや探さなくては。

うちのもふもふたちに再び会うために!


取り敢えずとはいえできた指標に拳を握り、ギルドへ向かう。

何しろ情報はいくらでもある方がいい。

婆さんに聞いても最低限の事しか出てこないのも、ゲームの仕様だしな。

ギルドで冒険者たちの噂を拾い西の大きな街へも行ってみよう。

まあまずは村のギルドからだ。

村の中心より北…森寄りに建つのが冒険者ギルドだ。

酒場も兼ねているからそこそこ大きめなんだけど、たしかこの国では小さい方だった。

木の匂いと手作り感の漂うぼろっちいギルドが俺は気に入って、拠点ホームタウンに登録してる。

もうちょっとで外れそうなスイングドアを押して受付へと足を進めた。

いつも通常であればプレイヤーアバターが俺以外にも幾人かいて、挨拶を交わしたものなんだが。

今は俺以外には村人とこの世界の冒険者しかいない。


「いらっしゃいませ、ハルキさん」

「こんちはサラさん。変わった事とかある?」


馴染みの受け付け嬢に話しかけると手元の書類をめくって確認する。

「そうですね…魔物の種類と出現頻度が増えた事と、最近は旅人の方が減ったようです」

「旅人が減った…」

「ええ、特に獣人の旅人はめっきり少なくなったようで王都の方でも減ったという情報が来ていますよ」

「…そっか、悪いんだけど俺も用ができて村を離れることになったんだ」


俺たち獣人の旅人プレイヤーはこの世界中を巡り、魔物を倒したりあるいは生産をしたり、もふもふ生活を楽しんでいた。

それぞれが好きなことをするためにこの世界を訪れていたが全てが戦闘を生業としていた訳じゃない。

だから俺たちが減ったからと言ってすぐ困ることはないはずだ。

けど、寂しいと思ってくれているのは彼女の茶色の耳と尻尾がシューンと垂れているので分かる。

サラさんは犬系獣人なので感情を簡単に見抜けてしまう。

申し訳なく思いながらも告げると目を丸くして驚く。


「用、ですか…大事な用なんですね」

「うん、用事がすんで落ち着いたらまた来るからそんなに落ち込まないで」

「はっ、はい」

「じゃあちょっと食事してから行くから」


ギルドの受付の隣の食事スペースへ行くと少ないながら冒険者数人がここの一番人気のバゲットサンドにかぶりついていた。

俺は手伝いに入っている少年に木苺の炭酸割りジュースとクラブハウスサンドイッチを頼んでその冒険者パーティーの隣の席に座った。

彼らは人間三人のパーティーらしい。

今日の戦果について話し合っている。


「いやー、今日は疲れた!」

「まったく、後衛の攻撃を待ってからやれってのにお前は…」

「うぅ、スマン。けどよまさかあんな大物に出会でくわすたあ思わなかったぜ」

「おお、そうだな。あんな気持ち悪い化け物は冒険者になって初めて見たなあ」

「…確かに。ありゃあミミズのでかいのってとこか?」

「うえ、しばらくあの辺には近づきたくないぜ…」

「まあな、けどあそこ通らなきゃ西の大きな街へは行けないからなあ…」


彼らの会話から見えてくるのはやはり最近見ない魔物が増えているってことだな。

しかも察するに街道に近い場所のようだな。

さすがにここで聖獣もふもふの情報は得られないか。

あらかた食事も終わりジュースを持って立ち上がろうとしたとき。

「そう言えば一瞬獣が見えなかったか?」

「獣?」

「足元を通りすぎたような…」

「俺は見てないけど…」

「えーいたって!」

「そう言われてもな、見てないもんは見てないんだって。なんだ?もう一回あの魔物に会いに行くか?」

「イエ、ケッコウデス…」


目的の聖獣もふもふかは分からないが西の大きな街へ行って見た方がいいな。

アイテムの品揃えもいいし。

情報を収集するにも人の多い場所は都合がいい。

俺はまず西の大きな街、サイオウに行くことに決めた。

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