拠点防衛

鯣 肴

拠点防衛

ドンドンドン。

ドンドンドン。


 あの音だ。また、また、やって来たのだ。私の拠点へ侵攻しようとしているのだ。私はそれを何としても阻止しなくてはならない。防衛を始めて今日で730日目。丁度二年目だ。


ゴンゴンゴン。

ゴンゴンゴン。


 音が強くなる。低く、腹に響く音。強く、強く、攻めてきている。もう我慢がならない。


ドゥン!


 渾身の力での応戦。ただの一発。それで事足りる。忌まわしいあの音はそれで止んだ。これで今日一日は安泰だ。


 体から力が抜けて、座っていた椅子から体が少しばかりずれ落ちる。安堵。達成感。それが体を包んでいる。


 しかし、その後、いつものあの気持ちがこみ上げてくる。


 ああ、このままでいいのだろうか。いつになったら拠点を放棄できるのだろうかと。そう、私は部屋にひきこもっているのだ。今日で二年になってしまった。


 侵攻者は母。


 防衛者は私。


 扉をそっと開け、その前の床に置いてある夕食を回収する、いつもと同じように。一口目。涙の味がした。

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拠点防衛 鯣 肴 @sc421417

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