第9話「秋山家へようこそ・後編」
結局その直後お姉ちゃんが部屋に乱入してきて「はいはーい。お姉ちゃんのお手製のオムライス作ったから食べて食べてー」と、そのまま私の部屋に居座り続けたので、百合子との初めてはうやむやになってしまった。
このタイミングで乱入とか、外で待機してたに違いない。
しかもお手製とか言ってるけれど、お姉ちゃん料理がまるっきり出来ないから、きっとコンビニで買ってきたものだろう。
おいしいかったからいいけれど。
「で、お姉ちゃんいつまで私の部屋に居座る気?」
私は不満げに言う。
「そう邪険に扱わないでよ。お姉ちゃんも比奈とそのお友達とお話したいんだけどな」
「私はゆりちゃんと二人で話がしたい」
主に今日穿いてきたショーツについて。
百合子の性格的には白色だと思うけれど、青色とか赤色とか紫色とかも似合いそう。
色々着せて眺めて撮っておきたい。恥ずかしがってる百合子とか可愛いわ。すぐに襲っちゃいそう。
「それで、ゆりちゃんだっけ? は、今どんなパンツ穿いてるのかな?」
「ちょ! お姉ちゃん何訊いてるのさ!」
「だって今時の女子高生がどんなパンツ穿いてるか知りたいじゃない」
確かに百合子のショーツなら毎日報告してもらいたいくらい知りたいけれど。いやいや今はそう言うことを言ってるのではなくてしかし百合子のショーツ、お泊りの記念に私のショーツと交換してくれないかな。してくれないだろうな。
「恥ずかしがることないよ、百合子ちゃん。今から私も比奈も脱ぐから」
「なっ!?」
何言ってるのさ! と抗議しようとするが、姉に押し倒され服を剥ぎ取られていく。やたら慣れた手つきだけれど、まさか日常的に誰かを脱がしていたりするのか。ちょっと気になる。
そうして私は何も抵抗出来ずに、全ての服を剥ぎ取られてしまった。そのとき姉が浮かべた妖艶な笑顔はとても綺麗だった。
「なんだかいけないことしてる気分になるね。これ」
「いけないことしてるんだよ! いきなり何するのさ!」
私は両手で下着を隠すが、手遅れだった。
「比奈ちゃん。意外」
私の下着の色を遠慮がちに見た百合子が、感想をくれる。
「悪い? 私が白色の下着してたら」
顔が真っ赤になってるのが分かる。百合子は笑いながら「いや、おかしくないよ。ただ、比奈ちゃんもそういうところは女の子らしいなと思って」なんて言う。
百合子の中の私のイメージって、本当にどうなってるんだろう。一回訊いてみたい。
「もってことは、ゆりちゃんの今日のパンツは白色なのかい?」
私は姉の姿を見て驚愕する。
「なんで全裸になってるのお姉ちゃん!?」
「だって、暑いし」
「そうじゃなくて! 今はゆりちゃんもいるんだし、何か着てよ!」
「いいじゃない、女の子同士なんだし。それに」
四つんばいの体勢で百合子に近づいていく姉。
「この子、結構可愛い顔してるし、そっちもありかなって」
やばい止めないと。目が本気だ。
「お姉ちゃん! 百合子に変なことしたら、私許さないからね!」
百合子と姉の間に入り、抗議の目を向ける。
「そんなに本気で怒らないでよ比奈。あ、もしかしてお二人はまさかまさかのそういう関係だったりするのかな?」
「なっ! ばっ!」
動揺する私。
今ここで否定すれば、きっと後で百合子が不機嫌になるし、かといって肯定すれば姉にずっといじられる。くそ。さっきまであんなにいい雰囲気だったのに、なんでまたこんな難しい選択に迫られてるんだろう。
「そうですよ、お姉さん。私達、付き合ってるんです」
後ろから声が聞こえたかと思うと、さっき私がしていたように後ろから百合子に抱きつかれる。
嬉しい! 百合子から私に抱きついてきてくれるなんて! けれど、それを二人きりのときにして欲しかった。残念ながら、今は姉が目の前にいるので、そういうことが出来ない。
「さっきも、比奈ちゃんが私を襲おうとしてたところに、お姉さんが部屋に入ってきたので比奈ちゃんきっと今欲求不満だと思いますよ」
耳元で言われると、余計欲求不満になってしまうのですが。
「今日のショーツは白色なので、興奮してたらすぐ分かっちゃいますしね」
そう言って百合子は下に視線を移す。
百合子がそういうこと言うなんて、今日は本当にどうしたんだろう。まぁ私は嬉しいし、興奮してるのは間違いないのだけれど。
「百合子ちゃん。そのまま比奈を押さえてて、今確認する」
「え、待って、それは、それだけは」
待って待って待って。私の大事なところを確認するって言ったのかこの姉は。
「大丈夫大丈夫。見るだけだから」
見られたくないんだよ! 特に今は!
姉はそんな私に対して笑顔で(よだれを垂らしそうな表情と言ったほうが正しいかもしれない)にじり寄ってくる。
「いやだいやだ、ごめんなさいやめてください」
私は必死に抵抗するが、後ろの百合子が体を密着させているので二つの柔らかい感触に力を奪われる。その感触で余計に興奮してきた私は、確認するまでもなくショーツが危険状態なのが分かった。
今誰かにこんなの見られたら、恥ずか死出来る絶対。
「ゆりちゃん離してお願い」
私は百合子に懇願する。
けれど、百合子は笑顔で「ダーメ。さっき私の恥ずかしいところ見られちゃったから、私も比奈ちゃんが恥ずかしがるところ、見たいな」と言って離してくれない。
気にしてたのかあれ!
「さーて、比奈の下着の下はどんな具合かな?」
姉の魔手が、徐々に私のショーツへと近づいて来る。
「いーやーだー」
「えいっ!」
姉の元気な声と共に私の白色のショーツが宙を舞う。
高く高く舞い上がる私のショーツの軌道は、今日の私のように高い場所から一気に落ちて行く。
深夜。
私と百合子は決して広いとは言い難いお風呂場で、互いの体を洗いっこした後、湯船に浸かりながら他愛ない会話で盛り上がっていた。
それにしてもやっぱり百合子は着やせするタイプらしい。私より確実に三つは上のカップだ。
「さっきの比奈ちゃん面白かったね」
「もうその話はやめて」
「だって、比奈ちゃんのあんな姿、滅多に見れないもの」
百合子は笑いが抑えきれず、おなかを抱える。
決めた今度絶対に百合子を同じ目に遭わせよう。早ければ今日の夜とか。
「比奈ちゃん、今自分と同じ目に遭わせようと思ったでしょ?」
「なんで分かったの?」
「んふふ、それくらいなら分かるよ。だって、私比奈ちゃんが大好きだもの」
そう言われると何も言えなくなる。
そこでそういえば、と私は思い出す。
どうしても寝る前に確認しておかなければいけないことが、ひとつだけある。とても大事なことだ。
「ゆりちゃん。今日は、してもいいんだよね?」
「えっ、えっと……」
途端困惑した表情になる百合子。
形勢逆転。
今度は私が百合子を弄繰り回す番だ。
「だって、さっきはお姉ちゃんが乱入してきたからうやむやになったけど、今日は百合子も襲われるの覚悟でお泊りに来たんだよね。ならいいでしょ?」
「で、でも……」
百合子はこういう話や行為を他人にする分には羞恥が薄いが、自分がやられる立場になると恥ずかしさが勝るらしい。本当に可愛い子だ。
「それにさっきは結局百合子ショーツ見せてくれなかったし」
お風呂に入るときも「先に入ってて、私も後から入るから」と言って見せてくれなかった。もう妄想が止まらなくなってきて、本当は百合子は下着をつけてきていないんじゃないかと思ってる。
「あの時は比奈のお姉さんもいたから。その、初めて他人に脱がされるわけだし、初めてくらいは比奈ちゃんと二人きりのときがいいなって思って」
何この子ちょう可愛いんですけど。
「ここで襲っていいですか?」
「駄目。ちゃんとベッドに行ってからね」
「ということは襲ってもいいってことだよね?」
言葉をつまらせるが、やがて観念した百合子は「う……うん」と、なんとも恥ずかしそうに頷く。
一々可愛いなちくしょう。
「百合子」
私は百合子の顔をこちらに向けさせると、おでこにキスをする。喜ぶかと思ったが、なんだか不満そうな表情の百合子。
「おでこじゃ不満?」
「全然。比奈ちゃんは私の唇とのキスは飽きちゃったのかなって思っただけ」
「半年前まではおでこであんなに喜んでたくせに」
「今は口がいいの!」
そう言うと今度は百合子から私にキスをする。もちろん唇に。
長い時間唇を重ねていたが、私のほうが我慢できず一旦百合子を離す。
「このままだと本当にここで襲いそうだから、今はこれくらいにしておこう」
「んふふ。比奈ちゃんはじらされるのが嫌いなんだね」
どうやら百合子は眼鏡をかけていないと積極的らしい。これは他の人がいる前では絶対に眼鏡を外さないように言っておかないと大変だ。
「もうそろそろ出ようか」
私が立ち上がると、百合子も少し遅れて立ち上がる。
そして百合子は私に擦り寄ってきて、耳元でささやく。
「今日は、寝かしてあげないから」
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