第16話 闇を統べる者
人型の膝あたりにまで達する異様に長い髪は、暗がりの中に半分溶けている。
露出した手首はマイセン人形のような陶磁器の質感だ。俺と年齢的には同学年といっていい肢体と、場違いな制服姿……。
いつしか長い髪がぬるりと伸びて、古泉の体に到達する。
髪の毛の先端は妖しく光って伸び続け、やがて古泉の体はすっかり覆われている。
不気味な振動音が厚いガラスを通じて響いてきた。神人はもう洋館の上半分をぶっこわしている。見上げると天井にひびが入っていた。
古泉が立ち上がった。全身を覆っていた髪は潮が引くように去った。
また古泉の周囲を赤い光が包んだと思うと、まっすぐに上昇していく。
古泉は再生されているのに気がついていないのか。
ぎらついた赤い球体の飛行速度が加速していく。キチガイじみた鋭角で方向を変える。
徐々に巨人の速度に追従し始めた。
異様な角度で巨人の触手が伸び、次の瞬間、古泉の胸を貫いた。恐ろしい勢いで伸びた髪の束が、流れ寄って光り始める。
刺し貫かれ、踏みつぶされ、切り刻まれ……そのたびに黒い髪が何度も復活させ、古泉は立ち上がる。戦うのをやめない。
「古泉、もういい、やめろ。やめろぉぉぉぉ!」
赤い球体の輝きが、よみがえるごとに、復活するごとに、どんどん増していく。
もう、まぶしくて見ていられない。赤い球体が移動するたびに室内が赤く染まる。
吹雪を縫って古泉の描いた軌跡が、巨人の首と右手を寸断した。
首からあふれ出る蛍光色の液体……もう流れは止まらない。次の一閃で両足がくずれ折れた。
巨体が輝く液体をまき散らしながら、津波のように庭を流れていく。力尽きた古泉の体と一緒に。
空はまた暗黒に包まれ、激しい吹雪がすべてを覆っていった。
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