第15話 終わりなき戦い

「彼らは閉鎖空間への侵入だけでは物足りないようですね」

「神人、か」

「ええ。おそらく僕が戦うところを観察したがっている」

 古泉はかすかにほほえんでいった。なぜそこで笑う?

 だが俺にも観察しているやつの考えがわかってきた。

 つまり、こういうことだろう。


 問題を解けるまで、自力でやれ。ここでの問題は神人に勝つまでやれってことだ。


「一人で大丈夫なのか?」

「いつもは集団戦なんですがね。増援が全く期待できない以上、やるしかないでしょう」

 古泉の周囲をいっそう強く赤い光が覆っている。ふわりと浮かんで窓の外に飛び出した。以前見たときより遙かに強い輝きになった。もう目を開けていられない。

 窓からなだれ込んできた吹雪が一瞬俺の顔をなでる。

 古泉が飛び出すのと同時に青い巨人は顔をこちらに向けた。明らかに俺たちを認識している動きだ。

 だがその巨体にしては異常に素早い動きで神人はその長い腕を振り上げた。

 巨大な窓枠に手をかけ、俺は上を見上げる。

 途端にはじかれた。あの緑のスクリーンが窓の全体に展開されている。ここから出られるのは古泉だけなのか。くそっ。

 あいつの問題、あいつの試験だからだ。

 かすかな燐光を放つ空を背景に青い巨人が浮かび上がる。

 前に見たのよりでかくなってないか。輝く赤い球体に、もう古泉の人型は溶けている。輝きが赤から目に刺さるようなぎらついた近紫光へと変調している。

 光を曳航しながら鮮やかな円弧を描いて、電車くらいある巨人の腕を一閃する。

 腕に輝線が走ったかと思うと、肘から先が落ちた。輝く液体が流れていく。

 否! 輝く液体は向きを変え、……腕が再生されている。

 再生した腕の先端が吹き出すように延伸する。触手が古泉の球体へ爆発的に伸び、突き刺さった。

「古泉っ!!」

 液体をばらまきながら落下する古泉には見向きもせずに、伸びた腕はこの洋館に激突し、轟音とともに破片がなだれ落ちる。

 無理だとわかっていたが、俺は食堂の椅子を窓に叩きつける。椅子の脚が微塵に散ったがガラスには傷一つ付いていない。

 古泉が落下したのはこの洋館の庭と周囲の針葉樹林の間だった。赤い光を失った古泉はぴくりとも動かない。

「誰だ?」

 横たわった古泉に誰かが近づいてきた。


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