第14話 破壊する者
チチッ。
背後から雀がさえずるような連続音がした。
業務用コンロの着火音だ。一瞬の間をおいて四つの大型コンロが同時に天井まで炎を吹き上げ、瞬く間にレンジフード一杯にあふれた炎が天井に引火している。
俺はドアへ突進した。この際、閉鎖空間は後回しだ。
「くそっ!」
「どうしました」
「ドアが開かねぇ!」
ドアに全体重をかけて引っ張っているがびくともしない。
「なにやってんだ! 手伝えっ」
古泉は何も言わず、俺の手を握った。
めまいとともに、前進をスキャンされるような感覚が襲いかかってきた。
……一瞬、気が遠くなる。
気がつくと、すべてのコンロと電灯から熱と光が失われている。
唯一の光源は赤色光に包まれる古泉だけだった。閉鎖空間……か。
「なんでこんな場所で閉鎖空間が発生するんだよ?」
「涼宮さんの心的圧力は長門さんへの攻撃でかなり上昇していました。我々の到着が遅れているのが最後の引き金を引いたんでしょう」
「閉鎖空間はおまえの仲間にまかせるしかないな」
「こんな場所では、我々のチームが到達するまで時間がかかりすぎます」
「じゃ、どうやって神人を倒すんだ?」
「長門さんの抑止、我々の能力拡張、閉鎖空間の発生、そして進入となると、おそらく観察者は、すべてこれが目的だったのでしょう」
古泉は俺の手を握ったままドアに近づいた。
「閉鎖空間への進入を見極めた以上、ここに閉じ込めておく理由はないはず」
調理室のドアはかすかな音を立てて滑らかに開いた。
「急ぎましょう。閉鎖空間がこの時間のゆがみにどれくらい影響を受けるかわかりません」
俺と古泉は荷物を持って、エントランスホールに向けて走った。
ここに来てすぐにみんなでお茶を飲んだ食堂を通り過ぎようとしたときだった。古泉が足を止め、開け放たれた食堂の扉から中に姿を消した。
あとを追った俺の視線の先、窓ガラスごしに半透明の青い巨体が見えた。
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