#3

スーパーヒーロー謎掛少年ッ!:現代ドラマ

【ピタゴラスの定理】 【勧善懲悪】 【砂糖菓子】 【必要な犠牲】


「うぁっぁぁぁっぁぁぁっ、に、ニゲロー! 怪人が、怪人が出たぞー! 逃げろォ!」


 だぁっと人混みが雪崩のように歩行者天国を移動していく。

 ここは大都会のオフィス街。の近くにあるちょっと日陰で寂れた商店街の出入り口だ。

 当然小さな商店街のため必然的に車は侵入できず歩行者天国となっている。

 そして、そのうらぶれた商店街の大体真ん中らへんにでぇぇんと仁王立ちをする影がある!


「げひひひっ、このピタゴラスの定理怪人様を証明できるやつはいるがぁー!」


 頭に三角形の定規をたくさん生やした顔色の悪そうな全身真っ青いタイツを身につけたがっしりした大男!

 通称ピタゴラスの定理怪人、ピゴス君っ!


「げひひっ、この俺様を証明できるやつはいねぇがー!」


 全身タイツだから表情は見えないが、きっと笑っているぞ!

 高笑いするピゴス君ッ! を見つめる一対の眼が眼光鋭く電柱の裏から覗いている!


 説明しよう!

 彼の名前は謎掛なぞかけ流夜るよ。普段気弱な十四歳だ!

 ビン底眼鏡にもじゃもじゃ頭っ、ヒョロヒョロ体系なもやしっ子だ!

 だがっ!

 謎掛ケーキ店に代々伝わる砂糖菓子を一口食べることによって彼は勧善懲悪のスーパーヒーローへと変身できるのだッ!


「うぅ、こわいよぉ!」


 だがッ!

 何故か電柱の影から顔だけを覗かせて、じぃと怪人の様子を伺うばかりだ!

 何故!?

 説明しよう!

 彼は極度の怖がりなのだ!

 超もやしで超人見知り! 良く分からない怪しい人の前にさっそうと踊りだすなんてそんなことは出来ないのである!


(だけど、だけど……!)


 しかし!

 彼は内心にはアツイ思いを秘めているのだ!


「そっ、そうだ! いいことを思いついたぞ!」


 謎掛少年が表情を明るくして手を叩く!


「げげへへへぇ、こっちに出てくる気になったか!」


 何とも嬉しそうにピゴス君ッ! が声をあげる。

 だが、謎掛少年はそんなことを気にも留めずにカバンの中へと手を突っ込んだぞッ!

 ごそごそと、何かを探して取り出したるは――ッ!

 スマートフォンっ!

 そしてなんとっ!

 一一0をダイヤルしたッ!


「あの、もしもし警察ですか? ハイ、○×通りに不審者が現れたので……」


 三分後ッ!

 サイレンを鳴らして到着したパトカーへとピゴス君ッ! は収監されて連れていかれたのだったッ!

 完ッ!

 これぞまさに必要な犠牲、コラテラルダメージだぞッ!


「町の平和は守られたね、警察のお力によって!」


 再度ッ!

 完ッ!

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