第2話

 小池の話を聞き、何かしらの影響を受けたその五人は、放課後いつもなら真っ直ぐ帰るのだが、どうやら今日は違った。自分達に何が出来るか、という事を少し考えよう、と空き教室に集い、五人で話し合いを始めた。

 ただ彼ら個人は確かに何らかの能力には突出していたし、何よりもバイタリティはそんじょそこらの高校生とはずば抜けていた。所謂不良少年ならではの物よりも確実だ。

 例えば、輝一だが、彼の場合は自分の知らない世界でも興味さえあれば何のためらいもなく飛び込んで行く。今までやったことがないような事でもだ。彼の行動力の源は全て「面白そうだ」の一言で片付ける。そしてその世界に飛び込んだ後は、辛い事もあるが人に語る時は面白い部分しか言わないのだ。そして彼が今夢中になっているのは格闘技だった。キックボクシングジムに通い、体を鍛えると同時に楽しみながら運動として、強くなるためとしてそれを続けてもう半年になる。


 続いて准だが、彼は芸術的な表現が得意だった。油絵を趣味として、観察力とそれを絵として表現するのはずば抜けている。そして観察力があるせいか、人の長所短所を一発で見抜く。それ故に自分から敵を作りやすいが、その長所短所合わせて人付き合いをするから周りと比べて少し大人びいた部分もある。しかしそれは決して大人ぶっているのではなく、彼の性格上だ。


 そして統、高い芸術性は准にも引けをとらないが、彼の場合は日本の伝統三道である華道、茶道、香道を、彼の母親がその三道の師範であるが故に、彼の行いはどことなく気品がある。それと同時にそれがコンプレックスにも成り得ているからこそ、他の四人と一緒に行動したり、学校に逆らってバイトをしたり、という行為に走る。あくまでも悪い事だと分かっていながら、自分の生活や自分の生い立ちに反発している。


 続いては飛鳥だ、彼の素晴らしい所はその洞察力とリーダーシップだ。彼は沖縄生まれで沖縄育ちだが、中学の頃母親と父親が離婚し、母親に引き取られ東京に来た。そこで新しい生活に馴染めず、一時ひとりぼっちだったが、どうすればいいかというのを幼いながらに考え、自分が指揮を執るという事を覚えた。そしてそのノウハウは、近所に住んでいた暴走族のリーダーと一緒に遊んでもらいながら少しずつ覚えて行ったそうだ。

 

 最後は秀、彼も輝一と同じだが、自分に興味のあることはとことん極めるまでやりつくす。今彼の中にあるカードは空手とギター、そしてそれを動かすのは想像力だった。「もしバンドを組んだら」という自分の理想をどう体現するか、という物をさも自分がそうであるかのように語る事が出来る程、そしてその理想に近づくための練習をしているので、そのイメージ力はずば抜けている。そして空手は単純に「強くなりたい」というだけの理由で、高校一年から始め、通いだして一年が過ぎようとしていたが、その期間ではありえない程の昇級をしている。


 彼らは自分以外の長所短所は全て把握して、その上で友人として過ごしている。以前にも言ったが、彼らは決して頭が悪い訳ではない。しかし、勉強は確かに不得意だ。彼らの通う学校で成績は上位だとは言えど、周辺にある名門校と比べるとオチコボレどころかまず学校に入れるかどうかすら怪しい。

 しかし蓋を開けてみると、何かしらの個性、技術は習得しているし、それを伸ばす努力もしている。恐らくだが、小池は彼らの可能性を見出しているのだろう。

 彼ら五人で少し話し、結果が分からないから、小池に会いに行こう、何をすればいいか、何が出来るかのヒントをもらおう、と彼らは小池のいる理科準備室に足を運んだ。

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