魔法処女まむこちゃん

@nitopan

第1話 処女喪失

「私、処女だったんだ……」


そんな唐突で当たり前の自己嫌悪に陥っている、自称ビッチギャルの少女(10さい)。


幼い横顔が夕焼けに照らされ、肌と影のコントラストで

幾分か大人びて見える。……かも。


少女の名前は黒井まむこ。

名前だけはいよいよ正真正銘のビッチギャルである。


そんな少女が何故今さら自分が処女であるという

衝撃でもない事実に途方にくれているかというと、話は2時間前に遡る。



日曜。15時。



休日の街を意気揚々と闊歩している少女がいた。

まむこである。黒井まむこである。

その恥ずかしい名前……

いや、親から貰った人様の名前を恥ずかしいと言ってしまったら失礼か。


いや、これは恥ずかしいだろう。指摘すべきだろう。

こんな恥ずかしい名前をつけて……

親として何も責任を感じないのかと問い詰めなければならないだろう。


そう、これは恥ずかしい名前なのだ。


桃色まむこではない。


黒井まむこなのだ。


これは恥ずべき名前である。

そうであらねばならない。

全国に蠢く童貞男子の妄想を保護するためにも、

少女のデリケートZONEはキレイなピンク色でなければならない。


断じて黒ではない。


少々話が脱線してしまったが、闊歩しているのである。


恥ずかしい名前の少女が。黒井まむこが。

むしろ誇らしげな顔で。自信に満ち溢れた表情で。矛盾だ。不条理だ。


こんな恥ずかしい名前の少女が、

こんなに堂々と御天道様に顔向けできるわけがない。


おかしい。状況がおかしい。いや、頭がおかしい。

まむこの頭がおかしいのか。私の頭がおかしいのか。


若干のパニックに陥りながらも、まむこの足が止まったことでふと我に返る。


「わたしってば最高なビッチギャルね♪」


聞こえた。確かに聞こえた。

齢10にして中身はピンクの黒井まむこは言ったのだ。


窓ガラスに映った自分の姿を見て、惚れ惚れしながら言ったのだ。

自分はビッチであると。

まさか。まさかである。10さいである両手で数えきれる年齢である。

初潮前である。であるにも拘わらず。


ビッチだと?誤用であろう。誤用でなくてはならない。

さもなくば、この自称ビッチと関係を築いてしまった輩が御用になってしまう。


そんなことは、あってはならない。エロ同人の世界の中でなければ、そのようなことがあってはならない。


そんなことを思っているうちに、まむこは建物のなかに入る。

どうやら、この店に入るために立ち止まったらしい。



その店の名は……スマターバックス……!!



スマターバックス。

如何わしいプレイを連想させる店名だが、その実態は只のコーヒーショップ。


そう、黒井まむこはここにコーヒーを飲みに来たらしい。


10さいがコーヒーを飲むわけないだろ!いい加減にしろ!

と言いたくなるところだが、注文したのはキャラメルフェ……もとい、

キャラメルフラペチーノだ。やはり10さいにコーヒーは早いらしい。


「今日はここでナンパ待ちをするわ!」


まむこが席に座ったかと思うと、わざとらしく周りに聞こえるようにそういった。10さいのガキがナンパ待ちである。世も末だ。


さて、ここでさらりと重大なことを言おう。この物語の語り手。

そう、私のことだ。私はいったい何者なのか。


私は神である。


唐突で申し訳ない。しかし、大胆な告白は神様の特権である。

許してほしい。

まぁ神にも色々な種類があるわけだが、私の管轄は治安維持、のようなもの。

人間のみならず、世界のバランスを保つ為に力を行使するものだ。


10さいの少女が、黒井まむこという名の少女が、ビッチギャルを自称している。

そして、こんなアダルトなコーヒーショップでナンパ待ちときた。

これは世界のバランスを崩す重大なバグである。

是正しなければならない。

この少女の純潔を18歳くらいになるまで守らねばならない。

力を行使しよう。神の力を。


私は、神の使いである神獣を地上へ派遣することにした。

まむこの元へ。黒井まむこの元へ。

神獣プリケッツよ、黒井まむこと接触し、更正させるのだ。

ビッチになどなってはならない。10さいのビッチなどいてはならない。

そんなことはこの神様がゆるしません!



【神獣】神に遣える獣。普段は天上界に住み、神の指令により地上へと降りてくることがある。その姿は人の目には見えないが、条件によって例外があるらしい。



神獣プリケッツ。

それがこの度黒井まむこの元へ派遣された神獣の名である。

その名の通り、特徴はプリっとした臀部である。


全体的にはヒヨコのようなフォルムであるが、

ウサギの耳のようなものも付いており、まぁプリケッツだなぁといった感じだ。


「まむこちゃん!待ってるプリ!」


今のプリケッツのセリフを甲高いキュートな声で脳内再生したと思うが、

それは誤りである。

実際は、アメリカの人気ドラマ『24時間営業』の主人公ジャック・バイヤー(吹替版)のような渋く低い声だ。

なので、もう一度脳内再生をし直して欲しい。


「ま"む"こち"ゃん"!待"ってるプリ"!」


うむ。


声のイメージの共有ができたところで、

今度は外見のイメージを忘れていないだろうか。


いつの間にか姿までジャック・バイヤーで脳内再生していないだろうか。


待て。慌てるな。

確かに私は先ほどヒヨコのようなフォルムと言ったが、良く見て欲しい。


プリケッツはいつの間にか渋いオッサンに変身している。

神獣には、下界の者と接触する際のカムフラージュとして人型に変身する能力がある。まむことこの姿でコンタクトを試みるということだろう。


かくして、さながらジャック・バイヤーのような渋いオッサンは、スマターバックスという如何わしい名のコーヒーショップへと入っていったのだった。



「キャーーー!!!!!!」



突如コーヒーショップに鳴り響く悲鳴。

何が起こったのか。


プリケッツの擬態は完璧だ。

どこからどう見ても人間であるし、バレたところでそもそも人間は

神獣という存在すら知らないはずだ。


何が起こった。

プリケッツと同時に強盗でも入ったのか。


いや、ちがう。


明らかに皆がプリケッツの方を見ている。


黒井まむこも。黒井まむこという奇異な名前の少女からも、

奇異なものを見る眼差しを送られている。


重ねて言うが、プリケッツの擬態は完璧だ。


いくら低級の神獣だからといって、変身能力に欠陥があるというわけではない。

擬態は完璧なのだ。

いや、完璧だからこそ、渋いオッサンの細部まで再現しているからこそ、

まずかったのだ。



……盲点だった。


聡明な読者はもうお分かりだろう。

そう、プリケッツは……


全裸だったのだ……。



しかしながら、プリケッツ。

人間に、くしくも渋いオッサンに変身しているとはいえ、

見事なまでにプリっとした臀部である。

ちょっと撫でてみたい感すらある。


いや、今はそんなことを言っている場合ではない。

辺りの客が変質者を捕らえようと食って掛かってきている。

言うまでもないが、変質者というのは黒井まむこのことではない。

プリっとした臀部の渋いオッサンの方である。


「痴漢だ!!」


「捕まえろ!!」


最初の悲鳴から絶妙な間を置いてから、

正義感溢れる大人達がプリケッツへと駆け寄る。


瞬時にプリケッツは自分のミスに気付き、

自分の不甲斐なさを悔いて頭を抱え……たかったが

抱えるのは頭ではなくむしろ股間であるということに気付き、

股間の細部まで再現されたソレを抱えて一目散に外へ逃げていった。


その様子を、黒井まむこはキョトンとした表情で眺めていた。

その反応からは、彼女がビッチであるかどうかの判断は中々難しかった。



全裸のオッサンが街中を走っている。

休日ということもあって人も多い。辺りは騒然としている。

警察も間もなく到着することだろう。

にわかにSNS上では全裸で街中を駆け抜ける猛者現るwwwとトレンド入りしそうな勢いだ。


腕を振って全力で逃げたいところだが、そうはいかない。

腕を振ってしまったら股間にそびえ立つ第三の腕も振るうことになってしまうからだ。


ブルンブルン!と。ビタンビタン!と。

慣性にその身を委ね、感性の赴くままに振られてしまうからだ。


であるからして、プリケッツはやむを得ず両手で股間を抑えながら

街中を駆け巡る。はて、何やら既視感を覚える光景であるが、何であったか。


そうだ。これはその昔、地上派で放送されていた馬鹿殿だ。懐かしい。

昔は馬鹿殿の中盤で流れるお色気シーンを心待ちにしながら

ブラウン管テレビにかじりついていたものだ。

ゴールデンタイムに大人の女性の胸部が晒されていてまかり通っていた時代。

いい時代だった。なのに、今はどうしてこうなった……。

深夜という時間帯のアニメにも拘わらず謎の光や湯気で秘部を隠すなど。

嘆かわしい。戯けにも程があるぞ。


などとどうでもいいことを思い巡らせているうちに、

プリケッツは路地裏へと逃げ込む。危険だプリケッツ。

その先は行き止まりだ。身を隠す場所もない。絶対絶命だぞ!


「追い込んだぞ!!」


言わんこっちゃない。チェックメイトだ。

数人の警官達が路地裏の入り口を包囲している。地元の警官だ。

この先に逃げる場所がないことなど分かりきっている。

警官達が薄暗い路地裏をライトで照らしながら詰め寄ってくる。


この先に全裸のオッサンが待ち受けているというのはどういう心境なのだろうか。凶器こそ持っていないだろうが、間違いなく狂気であることに違いない。


これは始末書ものだな……。低級神獣と言えど、立派な部下である。

神獣が下界に何かしらの迷惑沙汰を起こしてしまった場合は、

然るべき処罰がある。

天界にもルールがあり、神といえども何でもしていいという訳ではない。


何でもしていいのであれば、それこそその辺のビッチを拉致して、

あんなプレイやこんなプレイを嗜みたいところではあるが。


何を想像している。ゲームの話だ、ゲームの。



「にゃー」


薄暗い路地裏の行き止まりに、1匹の猫が警官のライトに照らされている。


「なんだ、猫か」


先頭の警官はそう言うと回れ右をし、他の警官に他を探すように指示し、

散り散りになった。無論探しているのは全裸の変質者である。


さて、その全裸の変質者。プリケッツは何処へ行ったのか。

この路地裏へ逃げ込んだはずのプリケッツがいない。

いるのはやたら臀部がプリっとした可愛らしい猫だけである。


その見事な臀部の曲線美に危うくケモナーとしての癖を開花させてしまいそうになったが、よく見てみろ。付いている。こいつは雄だ。


ははん、合点がいった。この見事な臀部の猫。

こいつがプリケッツなのだ。

路地裏に逃げ込んだ隙に、猫へと擬態したのだ。

猫ならば全裸でも問題ない。むしろ人間以外の動物は皆全裸なのである。


もちろん、神獣とて例外ではない。神獣もまた、普段は全裸なのである。

そう考えると、プリケッツが全裸のオッサンに化けてしまったのは

不運としか言いようがないのかもしれない。

何せ彼らは普段服を着ないのだから。


言い訳を考えている場合ではない。

黒井まむこと接触せねばならない。

黒井まむこと対話し、己の生き方を否定せねばならない。

10歳にしてビッチなどになってはならない。

その為には、猫では話にならない。

人として、一人の大人として、注意しなければならない。


その為には、まず服の調達だ。

暫くは猫の姿の方が都合が良い。

擬態もそうポンポン出来るものではない。

猫のまま紳士服売り場へ潜入し、首尾よくオッサンに見合う服を盗まねばならない。

文字通り、泥棒猫という訳だ。

泥棒は犯罪であるが、これは世界のバランスを保つための必要悪として報告しておこう。平和には犠牲がつきものなのだ。


さて、猫に化けたプリケッツ。

化け猫のプリケッツは最寄りの百貨店へトコトコと入っていた。



百貨店から制服を着た可愛いお姉さんが猫を抱えて出てくる。

受付嬢だろうか。顔もスタイルも中々良い。私も抱かれたい。


「ごめんね、あなたは入れないのよ」


そう言うと、可愛いお姉さんは猫を優しく地面へとリリースした。

可愛らしい臀部の猫は悲しそうな顔でそこへ座りこんでしまった。


プリケッツよ。失敗しているではないか。

何をやっているのだ。早くしないと黒井まむこを見失ってしまうぞ!


我々が急いでいるのには理由がある。

プリケッツは24時間以内に帰って来ないといけないのだ。


何故か。それは、そういう24時間で下界へ降りる申請をしたからだ。


天界というのは中々窮屈なところで、仕事の仕方がまるでお役所。

期限には大変厳しいのである。

24時間で目的を達成できなければ罰則は免れない。

急げプリケッツ。24時間以内にことを済ませないと懲罰が待っているぞ!


「くそっ、一体どうすればいいプリ……!」


渋い声と24時間という緊迫感でいよいよ本物のジャック・バイヤーを見ている気分だ。この日本、安全と水はタダという言葉もあるだけあって百貨店のセキュリティも大変厳しい。

猫一匹通さない厳重さだ。


プリケッツは暫く百貨店の周りをウロウロしたあと、

室外気の上で昼寝をし始めた。時間がないというのに。

どういう風の吹き回しだ。


「閉店した後に忍び込むプリ」


なるほど。ならば仕方ない。作戦は現場の判断に委ねる。

頼んだぞ、プリケッツ……!



トゥルルルルル……

トゥルルルルル……


電話の音だ。

どこの電話の音かというと、私……神の側にある据え置きの固定電話だ。


その音はまるでカラオケで残り15分前に掛けてくる

フロントからの電話のようにやかましい音だった。


えっ、もう2時間経ったの?と。えっ、15分前とか急かしすぎなんだけど?と。

10分前でいいんだけど?と。

そんな微妙な嫌悪感を覚える音だった。


今は黒井まむことプリケッツの動向が気になって電話どころではない。

そもそも、なぜこの天界にこんな色褪せてヤニで黄ばんだ若干ベタつく受話器があるのか。

そんな焦りと電話に対する場違い感で更に私のイライラは増していた。


トゥルルルルル……

トゥルルルルル……


電話は尚も鳴り響く。

いい加減に出ないとらちがあかないので、

私は受話器を取り不機嫌そうにもしもしと返事をした。


「こちら天界HQです。終了1時間前になりますが延長なさいますか?」


何を言っているのだ?

私はカラオケ店に入っていたつもりはないし、よしんばここがカラオケ店だったとしても終了1時間前ってお前それ催促が早すぎるのではないか。

10分前でいいのだ。

もっと言うと5分前でもいい。



「何の終了1時間前ですか?」



私は不機嫌な態度を露骨にアピールしながら答えた。


「プリケッツ様の下界申請です」


「下界申請?24時間でしょ??」


「いえ、2時間の申請となっております」



なん……だと……?



2時間?終了1時間前?訳がわからない。

私は24時間で申請した。確かにした。

キーボードの数字の4を叩いた感触が今でも指に残っている。

この感覚は嘘ではない。

私は不安に駆られながらも続ける。


「私は24時間で申請しましたが……?」


「いえ、2時間での申請となっております」


そんなはずはない……そんなはずは……!


慌てて申請書のコピーを見直すと、確かに2時間での申請となっている。

何故だ?


確かに私は4のキーを押したはず……。

と思いながらキーボードを叩き直してみると……4がきかない。壊れていたのだ。キーボードの4が潰れていたのだ。


ちょっと待ってよ、と。2時間で目的達成できるわけないじゃん、と。

HQも申請見てあれ、おかしいなくらい思ってくれよ、と。


そんな幼稚な言い訳を胸のなかに溜め込みつつ延長は不要と伝えて電話を切る。

ヤバい。相当ヤバい。


HQは延長しますか?などとマニュアル通りに冷酷に対応してくるが、

これは罠なのだ。

延長申請にはそれ相応の理由を添えた資料を提出せねばならないし、

そもそも延長した時点でペナルティなのだ。

懲罰なのだ。

残酷である。


一方、下界ではそんなことは露知らず1匹の猫が室外気の上で気持ち良さそうに眠っていた。



(プリケッツよ……目覚めるのだ……!!)


プリケッツの脳内に直接声が響く。若干のエコーが掛かっている。

しかし、その声はプリケッツには届かない。寝ているからだ。


(プリケッツよ……起きろ!起きるのだ……!!)


何度脳内に語りかけてもプリケッツは大きなお尻をデロンと転がして呑気に眠っている。ちょっと可愛い。だがそれが逆にムカつく。


「もうダメだぁ……おしまいだぁ……」


私はどこぞのヘタレ王子のように両膝をついて涙を飲んだ。

もうダメだと思った。

一人の少女の更正などぶっちゃけどうでも良かった。

唯々懲罰が恐かった。

最近は懲罰続きで神を降格させるとの人事からの警告も出ている。

背水の陣なのだ。



少し愚痴を聞いてほしい。

私は頑張っているのだ。

頑張っているからこその、失敗なのだ。


他の神々はどうだろう。仕事をさっぱりしようとしない。

サボタージュである。怠慢である。

失敗しようにも、何もしていないのだから失敗のしようがない。


報われない。報われないのだ。

私は一人の少女の為だけにこんなにも頑張っているというのに……!



愚痴を聞いてくれてありがとう。

もはやこれまでと腹をくくっていたが、奇跡は起きた。


まむこが。黒井まむこが来たのだ。1匹の猫の元へ。プリケッツの元へ……!


まむこはナンパ待ちにくたびれたらしく、フラフラとここまでやって来たのだ。

偶然に。奇跡としか言いようがない。


「猫ちゃん可愛い~」


まむこはそういうとプリケッツを撫で始める。


「大きいお尻~!かぁわいぃ~!」


モフモフの臀部をモフモフしている。触りたくなる気持ちは凄く分かる。

物凄いプリっとしたモフモフなのだ。


「にゃ~」


プリケッツは夢見心地である。

起きろ!起きるのだ!


奇跡との遭遇に私が若干の興奮状態だった為か、

プリケッツは私の念に応じるように目を覚ます。と同時に目を丸める。

仰天している。何しろ目の前にターゲットがいるのだから。


幸い、ここは百貨店の裏側。人気がない。

ここでなら、説得出来る。

私はもう時間が無いことをプリケッツの脳内に直接叩き込み、

即直談判するように促した。


プリケッツは猫である。

正確に言うと、猫ではないが猫に化けている。

猫は、喋れない。

まむこと話すためには、人型になる必要がある。


プリケッツの体が突然眩しく光り出し、まむこは思わず目を瞑る。

光が収まり、まむこが静かに目を開けると……。



そこにいたのは、全裸の渋いオッサンだった。



「君が、黒井まむこちゃんプリね」


全裸の渋いオッサンは少女の目を見つめながら言った。

ジャック・バイヤーに瓜二つの声で言った。

発音に気を付けながら言った。


うっかり歴史的仮名遣いで読んでしまうと、

途端に卑猥な語句になってしまうからだ。



「ど、どうして私の名前を知ってるの……!?」


まむこは目の前に全裸の渋いオッサンいるという事実と、

自分の名前が割れてしまっているという事実に動揺を隠せなかった。


「アンタ……どっかで見た顔ね……」


まむこがふと気付く。

それはそうだ、先ほどスマターバックスでこの二人は既に出会っているのだ。

その衝撃的な出会いに顔を覚えるだけの余裕があったかどうかは別の話だが。



「アンタまさか……ジャック・バイヤー!?!?」


マジか。

そっちか。

そっちで来るのか。


確かに今のプリケッツは容姿・声共にジャック・バイヤーのような雰囲気を醸し出してはいるが、あれは海外ドラマの吹替えの声だ。

アメリカ人があんなに流暢に日本語を話すわけがない。



「どうしたの、ジャック・バイヤー!また事件に巻き込まれたの!?」


どうやら黒井まむこはプリケッツのことをジャック・バイヤーと思い込んでしまったらしい。10歳の少女はフィクションという概念も、日本語吹替えという演出も知らなかったのだ。


「そうプリ。今は重大な任務の真っ最中プリ」


プリケッツは神妙な面持ちでそう言った。

私には分かる。こやつ、ジャック・バイヤーに間違われて浮かれていやがる。


「詳しくは言えないプリが、まむこちゃん。君を救うために僕はやって来たプリ。」


プリケッツはいつも以上に渋く低い声で言った。

低音だとうっかり歴史的仮名遣い読みになってしまいそうになる。

気を付けろ。


「一つ確認があるプリ。」


「何……?」


まむこも大概だ。

すっかりドラマの中の役者になりきっている。

お前の目の前にいるのは全裸のオッサンなのだ。

百歩譲ってジャック・バイヤーだったとしても、それは全裸のジャック・バイヤーである。おかしいことに気付け。

いや、今の場合このまま事が進んでくれた方がいいのか。


「まむこちゃん。君は……ビッチなのプリ?」


「そうよ!私はビッチなの!」


プリケッツからの質問に、黒井まむこは目を輝かせながら言い放った。

決して声を大にして言えるようなことではないのだが。


「まむこちゃん、君はビッチの意味を知っているプリ?」


この少女はとても頭が弱そうなので確認してみる。


「もちろん、知ってるわよ!」


まむこは得意気そうに続ける。


「ビッチってのは要するに超イケテる女子力高い女の子ってこと!シューハチでゴードンして、イケメンからフツメンまでみ~んなにマタをカンノンビラキして、ドーテーダンシには優しくロッコーオロシしてあげるのよ!」


滅茶苦茶である。

覚えたてのカタカナ言葉を使いたいだけの意識高い系の人と同じ臭いがする。

尚もまむこは続ける。


「逆に超イケてなくて女子力低い子の事は処女って言うのよ!私はエリートだから、生まれつきの果たし状付きのビッチよ!」


果たし状?あぁ、血統書と言おうとしたのか。

血統、決闘……このようにこの娘の言葉はいちいち脳内通訳が必要である。

生まれつきのビッチだと?女の子は皆生まれつき処女なのである。

こやつ、さては意味を分かってないな?


「まむこちゃん、処女ってどうやって喪失……なくしちゃうか知ってるプリ?」


プリケッツは簡単な言葉で言い直してあげた。


「ア、アンタそんな恥ずかしいことを女の子に言わせる気!?」


まむこは顔を真っ赤にして声を荒げる。

本当の意味を知っているならばそれは是非とも10歳の幼い口から聞いてみたい。

プリケッツは何かいけないことを期待しながら黙っていると、

まむこはモジモジしながら言った。



「お、女の子はぁ……は、初めて……」


いいぞ。頬は紅潮し息遣いが乱れている。

その調子で続けるんだ。


「初めて自分のお小遣いでシマクロのお洋服を一人で買いに行けたら、処女をなくせるの!」



確定的だった。

この少女は、黒井まむこは処女である。


名前とは裏腹に処女である。


先ほどの言動から論理破綻も甚だしいが、そもそも処女の意味を分かっていない。


しかしながら、このチャラチャラした格好と行動。

いつ性犯罪に巻き込まれてもおかしくない状況である。


本人が意識せずに本当に処女を喪失している可能性も0ではない。

確定的ではあるが、確定ではないのだ。


目的をおさらいしよう。

黒井まむこの純潔を証明し、その純潔を18歳くらいまで守り抜くこと。

そう自覚させること。


説得する時間は僅かしかない。

もうすぐキレイな夕焼けが拝めそうだ。


「きっとまむこちゃんは、ビッチじゃないプリ」


プリケッツは切り出した。


「それどころか、きっと処女プリよ」


「何言ってんの!?こんなに超イケイケな私が、処女のわけないじゃない!」


確かに黒井まむこという名前は処女には相応しくないかもしれないが。

超イケイケな名前でもない。


「魔法少女……って知ってるプリ?」


さぁ、いよいよ出ました。このストーリーのメインキーワードだ。

魔法少女。プリケッツめ、なかなか考えおるな。


「まむこちゃん、君を魔法少女にしてあげるプリ」


「な、何言ってんの!?あんなのアニメの中だけの話でしょ!?」


ドラマと現実はごちゃ混ぜなのにアニメと現実は別らしい。

そういうところが、なんとも子供らしい。


「なれるプリ。ボクはその為にここにやって来たプリ。」


「私を……魔法少女にするために……?」


「魔法少女になって善行……つまり善い行いをすれば、どんな望みも叶えられるプリ。そう、まむこちゃん。まむこちゃんならば、伝説のビッチギャルになれる才能があるプリ」


最低な誘い文句だ。誰がなりたいんだそんなもの。


「ホントに!?私、魔法少女になりたい!伝説のビッチギャルになりたい!」


とても危険な状態だ。

色々と。


「でもまむこちゃん、魔法少女になるためには条件があるプリ」


「条件……?」


「そう、魔法少女は処女にしかなれないプリ!」



【魔法少女】天界との契約により神の力の一部を与えられた巫女の俗称。契約は主に神獣を介して行われる。魔法少女になるには神聖な肉体が求められる為、18歳未満かつ処女である条件が求められる。



そう、魔法少女には処女しかなれない。

魔法少女は魔法処女ということでもあるのだ。


プリケッツが黒井まむことの契約に成功すれば黒井まむこは処女確定となる。

そして、18歳となる満期まで処女を守ることが出来れば、

性犯罪も回避されるし、まむこのビッチギャルになるという夢も叶う。

最終的にビッチになってしまうのであれば本末転倒のような気がしないでもないが、まぁ18歳なら自己責任の範疇で遊べばよい。

もっとも、善行の積み重ねによって叶えたい望みも変わってくれれば言うことはないのだが。


とにもかくにも、この限られた時間のなかでこの最適解を導き出したプリケッツに称賛を送りたい。

全裸で街中を走っていたときはもう駄目だと思っていた。


「じゃあ私は魔法少女にはなれないわね、だって私処女じゃないもん!」


「試してみるプリ?」


「いいわよ、出来っこないわよ」


「では……契約を始めるプリ……!!」


そう言うと、プリケッツの体が中に浮き、全身から目映い光を放ち出した。

言うまでもないが、全裸のオッサンの姿のままである。

両手を広げ、さながら十字架に掲げられたキリストのように。

心なしか光の中心が股間のような気がするがそこは気にしないでおこう。



「神の遣いプリケッツの名の元にっ!」


光るオッサンは詠唱を始めた。


「汝黒井まむこに神の力を与えん。その肉体、精神がこの力に適うものならば神との契約はここに成立せり。この意にそぐうならば、いざ授けん。プリプリプリーっ!!」


更に眩しい光が黒井まむこを包み込む。

まむこは若干苦しそうな気持ち良さそうな、

何とも悩ましい表情を浮かべながらあぁっと吐息を漏らす。


光が一気に弾ける。

キラキラとしたキレイな粒子がビッチギャルを包み込んでいる。

変身したのだ。金髪、ガングロ、栗のような睫毛、ネイル、ヘソ出し、どこからどう見てもビッチにしか見えない魔法少女が誕生したのだ


だが安心して欲しい。

彼女は処女だ。ビッチビチの処女である。

処女ビッチ魔法少女が誕生したのである。



「これが……私……?」


いつの間にかプリケッツが用意していた鏡に映る自分の姿をみて、

黒井まむこは惚れ惚れしていた。


変身後の姿は、ある程度自分のなりたい姿になる。

まむこはビッチに憧れているのだから、

ビッチのような外見に変身したというわけだ。


「超ビッチじゃん!えっ、私もう伝説のビッチギャルになっちゃったの!?すごいすごい!!」


黒井まむこはぴょんこぴょんこ跳ねて喜んでいる。


「いや、まむこちゃんはまだ処女プリ」


「なんで!?こんなに可愛いのに!」


「まむこちゃん、ビッチとは見かけや服を何着持ってるかでは決まらないプリ」


「どういうこと……?」


そう、ビッチの最大にして最低限の条件。

それは性行為抜きには語れない。


「処女というのは、エッチをしたことがない女の子のこプリ」


「!?」


「そしてビッチとは、誰彼構わずエッチする性的にだらしいない女の子への悪口プリ」


「!?!?!?」


驚くことも無理はない。まだ10歳の子供だ。

そんな破廉恥なことを言われたらショックに決まっている。

自分の勘違いに顔から火が出る思いであろう。


「なにそれ……」


プリケッツは目を閉じてプリっと頷く。


「なにそれ最高じゃん!私、ビッチになりたい!!超なりたい!!」


「プリっ!?!?!?」


なん……だと……!?

真のビッチの意味を知り、尚もビッチに憧れているだと!?

流石……黒井まむこの名は伊達ではないということか。


「どうすればいいの!?何をすれば伝説のビッチギャルになれるの!?」


いや、そんなものわざわざ魔法少女にならんでも勝手になればいいのでは……だがしかし、ここでこの少女を本物のビッチにするわけにはいかない。


「魔法少女になって夢を叶える方法は、2つあるプリ」


プリケッツは何処からともなく手のひらサイズの宝石を差し出す。


「これはラブドリプリズム。魔法少女の証プリ」



「ラブドリプリズム……?」


まむこは不思議そうに宝石を受けとる。

以外と軽い。中が空洞になっている。

そして、中には光る液体?のようなものが入っている。


「魔法少女として善い行いをすると、ラブドリプリズムがドリームチャージされるプリ」


「????」


突然の専門用語だもんね。

困惑するのも仕方ないね。

だが、聡明な読者ならばなんとなくニュアンスでお分かりいただけるだろう。


「善い行いを沢山すると、ラブドリプリズムの光が溜まっていくプリ。その光が満タンになったとき、どんな夢でも叶えられるプリ」


「そうなんだ!じゃあさっそく善いことしよう!」


「まぁ落ち着いて最後まで聞くプリ。色々と条件があるプリ」


「何よ」


黒井まむこはさっさとドリームチャージをしたくて堪らないらしい。


「まず、期限プリ。18歳の誕生日までに満タンにドリームチャージしないと魔法少女の契約は解消されるプリ」


「あと8年もあるじゃない!余裕よ余裕!」


「この光……ラブドリームはそんな簡単に満タンにはならないプリ。どんなに早くても3カ月はかかるプリ」


「そんなに!?」


「そしてこのラブドリームは魔法少女の力の源プリ。これが空になると魔法少女としての契約は終了プリ」


「なんで減っちゃうの?溜まる一方じゃないの?」


「魔法少女として活動するにはラブドリームを使わなければならないプリ。そして、ドリームチャージするには魔法少女として善い行いをしなければならないプリ」


「普通の姿でいいことをしても?」


「ドリームチャージされないプリ」


プリケッツは続ける。全裸で続ける。


「魔法少女としてちょっとのラブドリームを使い、沢山の善いことをして多くのラブドリームをチャージするプリ。効率的なドリームチャージは結構難しいプリ」


「ふーん、面倒くさいのね」


黒井まむこのやる気が一気に下がっていくのが分かる。


「地道にコツコツ溜めるのが一番プリ」


プリケッツは得意気になっているが、まむこはどうも不服そうだ。


「それと、魔法少女の契約が解消された場合プリ」


「なーに?」


「魔法少女として願いを叶えたとき、もしくは途中で諦めてしまったとき。いずれにしても魔法少女の契約が終了すれば、魔法少女としての記憶は抹消されるプリ」


「記憶喪失になっちゃうの!?そんなの聞いてないよ!」


「安心するプリ。魔法少女に関する記憶だけが上手いこと消えるプリ。だから願いを叶えたときは偶然幸せが舞い込んだ風に感じるプリ。願いが叶えられなかったときは普通の日常を過ごしていただけになるプリ」


「そんな都合よく記憶を消せるのかしら」


「良い感じに消されるプリ。案外、人間は多くのものを忘れてしまっているプリ」


「確かにそうね。言われてみれば、私がなんでここに来たかも覚えてないもん」


「それじゃあ改めて黒井まむこちゃん、これから頑張ってドリームチャージしていこうプリ!」


「えい、えい、おー!」


ビッチな格好の少女と全裸の渋いオッサンは拳を高々と上げたのだった。



案外、人間は多くのものを忘れてしまっている……か。

確かにそうだ。喜びも悲しみも忘れていくから、

人は何度でも感動することができる。

もしも全てを忘れることができないならば、

感情がリセットされずに心がパンクしてしまうのではないだろうか。

脳が自分の都合の良いように記憶を改竄する。

だから思い出は良いものとして残る。

記憶なんてものは、そんなものなのかもしれない。


プリケッツの何気ない一言に物思いにふけっていると、

またあのけたたましい音が鳴り響く。



トゥルルルルル……

トゥルルルルル……


終了10分前の知らせか?目的は概ね達成できた。

あとはプリケッツを一旦天界に呼び戻して、魔法少女としての……あっ……。



トゥルルルルル……

トゥルルルルル……



私は冷や汗を流しながら受話器を取る。

大きなミスをしていたことに気付いてしまったからだ。


「終了10分前です」


「はい……任務は完了したので神獣の呼び戻しをお願いします……」


私は辿々しく、恐る恐る答える。


「わかりました」


バレていないのか……?やり過ごせるのか……?



「ところで」


「ひゃいっ!」


完全に気が動転している。



「魔法少女契約をなさったようですが」


「はい……」


「申請書は出されましたか?」


「いいえ……」


そうなのだ。魔法少女の契約を人間と交わすときは、事前の申請が必要なのだ。

もし、申請が漏れるようなことがあったら……



「懲罰ですね。詳細は追って報告します。お疲れ様でした」



がーん、というひび割れたゴシック体の文字が私の頭に落ちてきたような感覚だった。

機械じみた冷たいHQの対応。それが何より恐ろしかった。

慈悲はないのか。


今日まで溜め込んできた減点の数……。

数えることすら恐ろしくて出来ない。

神性の剥奪。私は最悪の結末を思い描きながら、

受話器を持ったまま固まっていた。



「ここでしばらくお別れプリ」


全裸の渋いオッサンは清々しい表情でまむこに言った。


「あれ、帰っちゃうの?」


黒井まむこはキョトンと尋ねる。

魔法少女の横にいるマスコットキャラクターといえば、

四六時中主人公の傍らにいるイメージだからだ。


「一旦天界に帰って、今度はまむこちゃんの守護精霊として戻ってくるプリ」


「何が違うの?」


「今のままだと一般人にもボクの姿が見えちゃうプリ。守護精霊として降臨すれば、ボクの姿は魔法少女にしか見えなくなるプリ」


確かに、全裸のオッサンが四六時中少女にまとわりついていたら誰もが不審に思うだろう。


「ふーん、じゃあここで待ってればいい?」


「その必要はないプリ。魔法少女の契約を交わした人間の位置は把握出来るプリ。こちらから会いに行くプリよ」


「そうなんだ、じゃあ私も帰ろうかな」


空はもう茜色に染まっている。

小学生ならばそろそろ門限の頃合いだろう。


「いい子で待ってるプリ!ボクが戻ってくるまで魔法少女にはなっちゃダメプリよ!」


全裸の渋いオッサンはそう言いながら天へと昇っていく。

暫くしたところで、すうっと光りながら消えていった。


プリケッツが消えるのと同時に、まむこの変身が解ける。元の可愛らしい女の子だ。名前以外は。


まむこはプリケッツが消えるのを確認すると、

そのまま夕焼けに染まる空を見上げながらボソっと呟いた。



「私、処女だったんだ……」



当たり前である。

シマクロで服を買っただけで処女を喪失していてはキリがない。

それにしても、今日は黒井まむこにとって激動の1日であったに違いない。


変質者との遭遇、処女とビッチの意味、魔法少女の契約……。

果たして、自分は伝説のビッチギャルになれるのだろうか。

そんな不安と期待を交えた複雑な表情で、黒井まむこは流れる雲をぼーっと見つめていた。



「あの人……結局ジャック・バイヤーじゃなかったんだ……。てゆーか……誰?」


肝心なようでしょうもない疑問を最後に、黒井まむこは家路へとついた。



「ただいまプリ!」


ひよこのようなシルエットにウサギのような耳がついている奇妙な生き物が勢いよく飛び出してきた。

そのプリっとした臀部を見ればわかる。

これがプリケッツの本当の姿だ。

因みにこのなりにして声はジャック・バイヤーそのものである。


プリケッツがどこに帰ってきたかというと、天界である。

神の書斎である。


しかし、その神の様子がおかしい。

真っ白に燃え尽きた灰のように、今にでも風に飛ばされそうな状態だった。


「おお、プリケッツよ……戻ったのか……」


かすれた声で神は言う。


「どうしたプリ神様!?」


その変わり果てた姿に流石のプリケッツも驚く。



「プリケッツよ、わしはもう……神ではないのじゃ……」


「プリ!?」


衝撃の発言である。

お使いから帰ってきたら神が神でなくなっていた。

どういうことだ。


「プリケッツ……お前は……黒井まむこを魔法少女にしたな……?」


「プリ……」


「申請をな……出していなかったのだよ!」


「ボクのせいでプリ……!」


「いやぁあそれは違うそれは違うぞプリケッツお前は悪くないだってわしはお前の行いをずっと見ていた申請も出す余裕はあったのだーーー」


神は息継ぎをしていない。

自暴自棄になっている。


「懲罰が決まったんだよ……神としての座を剥奪……天界ではなく、地獄行きだそうだ……」


「じ……地獄……!」


天国も地獄も管轄の大本は同じらしい。


「だが安心しろプリケッツーお前には何の懲罰もない何のペナルティもない全ての責任はワシだけがワシだけが負うんじゃーーー」


相変わらず息継ぎをしていない。

目の焦点が合っていない。危険な状態だ。


「プリケッツよ……だからワシはお前の守護精霊申請は出せない。新たな上司が決まったら、そいつに頼むのじゃ……」


「神様……!!」


「元・神様な……」


そう言って真っ白な老人は乾いた笑みを浮かべながら消えていった……。

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魔法処女まむこちゃん @nitopan

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