幕間4
USB・MicroUSB端子対応スマートフォン充電機能付き手回し式充電LEDライト懐中電灯型AM/FMラジオ
USB・MicroUSB端子対応スマートフォン充電機能付き手回し式充電LEDライト懐中電灯型AM/FMラジオ : SSV-2020型
・AM/FMラジオ
・LEDライト
・USB端子
・MicroUSB端子
・手回し式ハンドル
・警報サイレン
・方位磁針
・プラス/マイナスドライバー
・六角レンチ(4、6、8mm)
・メジャー(2.0m)
・缶切り
・ミニナイフ
多岐に渡る機能を取り揃えた万能防災グッズです。手回し式充電はUSB、MicroUSBに対応しており、通常時でも携帯用スマートフォン充電器としてお使いいただけます。
AM/FMラジオ、LEDライトは緊急災害時にきっとお役に立ちます。警報サイレン機能も搭載されていて防犯グッズとしても重宝するでしょう。
女性の方でも持ちやすい手のひらサイズで、電池のいらない手回し充電ですので、突然の停電時だけでなく、急なスマートフォンのバッテリー切れにも即座に対応できます。
2026年3月廃番。在庫終了。
スマートフォンの画面上を日差彦の指がするすると華麗に踊る。有花は手回し式充電器のハンドルをぎこぎこと回しながらそれを眺めていた。
「ダメだな。メーカー廃番で、さっぱり情報がない」
結局、ホームセンターの地下迷宮で手に入れた充電器は何年も前に型落ちしてすでに廃番商品となっていて、ネット上でいくら検索をかけても得られる情報はほとんどなかった。
品薄状態からプレミアが付いてオークション価格が高騰しているとか、稀代の名器として後世に語り継がれているとかそう言うのもなく、どこにでもある汎用機で特別価格千円と言う代金も至極妥当なもののようだ。ウグイスに聞いてみても、やはりジョイトコ店内に在庫はなく、現在ではもはや入手は困難な商品だと言う。
自動販売機コーナーの片隅のウッドテーブルで、日差彦と有花は肩を寄せ合い、日差彦はすでに緩くなったコーヒーの紙コップを傾けて、有花はハンドルを巻き疲れてテーブルに突っ伏して、はあっとため息をついた。
あの迷宮で出会った白髪リーゼントの老人は何者なのか。臨時売店はいつどこに現れるのか。そもそも何故あんな場所で店を開いているのか。いつからそんな事をしているのか。解らない事ばかりだ。
「なんかリアルな夢の中にいてさ、このまま夢から覚めないんじゃないかって思ったよ」
有花は唇をぷいと尖らせてつぶやいた。
「ここは無茶なホームセンターだからな。何が起きても不思議じゃないって。ほら、代わるよ。充電器貸して」
日差彦が有花の手から充電器をさらった。ありがと、と有花はテーブルに顎を付けたまま言う。
「無茶なホームセンター?」
「うん。ホームセンターの常識を疑えってとこかな」
「ホームセンターの常識って何さ?」
「そりゃあ……、隠れて住めないって事か?」
そう。ここはホームセンターなのだ。想定外のホームセンターであると言うれっきとした事実の前では何もかもが些細な事だ。
ホームセンターはどんな物でも手に入る店であり、何でも夢を叶えてくれる場所であり、日常生活において道具に関して迷える人類にとっての最後の砦なのだ。
こんな事だってあるだろう、と小さな悩みなんて甘ったるいコーヒーとともに飲み干してしまえ。こんな小さな有花でもそんな大きな気持ちになれる場所。それがホームセンターだ。
「普通は住もうなんて思わないよ、あいたっ」
テーブルに突っ伏しているせいで、首から下げていた臨時タグが有花の胸に当たっていた。ふと、有花は何気なしにタグを裏返してみた。
「あ、名前書いてある」
「名前って、先に気付きなよ」
「いいの。えーっと、ショウジラクイチ、さん?」
日差彦は有花の胸元を覗き込んだ。ちょっとだけ、胸に近付き過ぎな日差彦に、ドキッとして距離を置こうと身体を捻る有花。日差彦はそんな仕草に気付きもせずにその名を早速スマートフォンで検索かけてみた。
「庄司楽市さんっと。うおっ」
「何? 誰なの?」
「……ジョイトコの社長さんだよ」
「うおっ」
社長さん。何やってるんだ、あんなところで。有花は心の中で一発突っ込んでおいた。
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