第8話 終わりの始まり

何時からだろう?瞑夜さんが隣にいて微笑んでくれる。

大した話をする訳でもなく。ただ、隣にいる。

でも……。

「瞑屋さん?ハーブの召喚を試してみませんか?」

「ハーブって、あの香りの付いた草ですよね」

私はなにを言っているのだろう、そんな小学生でも出来る簡単な事を言い出すなんて。

「先輩?」

「いいから、聞いて!外国のおとぎ話で……」

『孤独な少女が庭に何種類ものハーブ植えていました。ある日、その綺麗な庭に少年が引き寄せる様に訪ねて来ました。少女は心よく一杯のハーブティーを少年にもてなしました。少年の心は一杯のハーブティーで恋に落ちました。孤独な少女と普通の少年の恋物語』

「知っています、おとぎ話と言うか民話ですね」

「私、思うの、このお話は孤独な少女が毎日、休まずハーブの手入れをしていたからでないのかと……」

私は目をつぶり空の言霊を聞こうするが何も聞こえない。召喚術において感じるのが一番大切なのに今日は何も聞こえなかった。

「それがハーブの召喚と……?」

不安そうにしている私に心配そうに声をかける。瞑夜さんの優しさに心が痛んだ。

私から召喚術を取ったらなにも無くなる。瞑夜さんさえも……。

私は必死に魔法陣を書き、ハーブの召喚を試してみるが何も起きない。

「何で……」

「アリス、我の誤召喚で召喚術に歪みが出ているな」

それはシータの残酷な呟きであった。

そう、この頃、私の召喚術が……薄々気が付いていた。

それから

私は鏡であるアリスの召喚にもままならず。ただ、眠れない日々を過ごしていた。

鏡を何とか召喚出来た日はとにかく学校に行く事にした。

しかし、鏡であるアリスは弱々かった。

「先輩?体調悪そうですね」

昇降口で瞑夜さんに見つかってしまう。

「ええ、完全にスランプで……」

本当はスランプなどと言ったレベルではなく自体は深刻であった。

得意の召喚術演習の授業などは見学であった。

「大丈夫ですか?」

瞑屋さんは優しいな……このまま抱きついて泣いてしまったらどれだけ楽になるか。でも、出来ないでいた。

それは私の弱さなのかもしれない。

何時からだろう?こんなにも素直になれなくなったのは……。

私は逃げる様にその場を立ち去る。

半分の私が……そう、外の世界と繋がる鏡であるアリスの時間は少ないのが感じられた。

早く、解決方法を見つけなければ。

頼れるのは前学園長くらいか、あのお方の居場所は分からない今は引退して自由の身なのであるから。

そうだ、パイプオルガンを弾いてみよう

校内にあるパイプオルガンのある建物に来ていた。

しかし、先客がいた。ピアノ同好会の人々が練習をしていた。

どうすれば良い?弾かせてもらう?違う目的は前学園長に会う事であって今弾いても意味が無い。

ピアノ同好会がここに居るということは音楽室のピアノは空いているはず、行ってみる価値はありそうです。

音楽室は静かだった。ここならばきっと……。

私はピアノに向かい弾き始める。

名も無き曲を奏でる。込める想いは『再会』されど鏡であるアリスの指が上手く動かない。

私は涙を流しながら弾き続ける。

届いてこの音色が前学園長の心に……。

弾き終わり音楽室が静まり返っていく。

ダメかと思った瞬間

一人の拍手が聞こえる。

前学園長だ。私は顔がくしゃくしゃになるまで泣いていた。

そして、事の経緯を話すと前学園長は

「それは、『時』の精霊のイタズラかもしれない。本当は術を解き自由にさせてあげるのが一番なのだろうが……仕方ない、このビスケットをその『時』の精霊にあげてみてはどうだろう?」

前学園長は小さな小箱を取り出す。

「これは?」

「召喚した悪魔や邪神など強暴なモノと仲良くなれる特別な物です」

「ありがとうございます」

私は急いで家に帰った。

「おぉ、そのビスケットは!!!」

シータは小箱を見るなりはしゃぎ出した。

何かドっと疲れが出た。

私は魔法陣を書くとハーブの召喚を試してみた。




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