第6話 前兆

「カラス退治?」

「そう、使い魔のようなのだが一般生徒に被害が出る前にね」

私は職員室に呼び出され召喚術の主任の先生から話を聞いていた。

どうやら、校舎の東側にある林に強暴なカラスの集団がいるらしい。

野生のカラスでなく何者かの使い魔なのが有力な説なのだが飼い主らしき人はいないようなのである。

攻撃術のできる召喚術士は生徒では私くらいなので助っ人を頼まれているのであった。

「はい、分かりました。私で良ければ」

「早速だがこれから退治に向かうとするか」

数人の先生に混じって私は校舎の東側にある林の中を進む。

やがて、カラスの鳴き声が聞こえてくる。

何だろう?心が熱い……こんな気持ちは初めて、緊張とも違う。

さらに前に進むとほこらの様な石の周りにカラスが数匹いた。

やはり、野生のカラスではなく何かの術で生まれたカラスのようだ。

「ここは氷系の召喚術でカラスを退こう」

主任の先生が言うと皆一斉に召喚術を唱える。

私も氷の粒を召喚してカラスに向けて放つ。

カラス達は大きな鳴き声と共に消え去る。

ふーう、簡単な任務であった。

でも、いったいこのカラス達は何者なのだったのだろう?

カラス達の居たほこらは何かの封印術の様だし。

「ありがとう、アリスさん帰ったら、お茶にケーキでも食べましょう」

私達は林から小会議室で軽く食事をする事になった。


今日も図書室で召喚術の勉強です。

この張りつめた空気は独特で勉強意欲をかき立てられます。

こないだ召喚した自称『時』の精霊は家にいて、ドラ〇もん状態になってしまいました。

さてです、日本における召喚術の歴史を調べてみます。

明治維新により近代召喚術が伝来して召喚術が産業と結びつき近代化に貢献。

この県立精霊高校も旧制精霊中学として開校とあります。

元々は精霊召喚に特化した学校だったようですが時代を経て召喚術の総合科になったようです。

私が本に読み更けているといつの間にか隣に瞑夜さんが居ました。

「わ、瞑夜さん脅かさないで下さい」

「本に夢中の先輩も可愛くて」

「おだてても、何も出ませんよ」

瞑夜さんは時々意地悪なところがあります。

それでも何か憎めない不思議な方です。

「日本史ですか先輩はやはり勉強熱心ですね」

「解らない、宿題でも出たの?」

「秘密です」

と、言って瞑夜さんは隣で勉強し始めた。

まるで、私の顔を見れば落ち着くかのようにです。

ほんの少しだけ親近感が増しました。

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