第5話 精霊


今日は高度な精霊を召喚する為に図書室でお勉強ですの。

火や風を操る精霊を召喚するのはとても難しく、中でも『時』をつかさどる精霊は最も難しいとされ召喚術の研究機関でないと無理とされているのです。

専門書を何冊か読んでみましたが、この学校の施設では不可能なようです。

試しに私は紙を取り出し簡単な魔法陣を書くと『時』の精霊を呼び出す事を試してみました。

すると、魔法陣は輝き煙が出始め『ポン』と軽い爆発して猫のぬいぐるみの様なモノを召喚してしまいました。

「誰だ!!!図書室で召喚術を使ったのは?」

不味いです、先生です、私は猫のぬいぐるみを持って図書室を後にしました。

いつもの空き教室で猫のぬいぐるみと睨めっこです。

「言葉は分かりますか?」

「何だ、にゃあ?」

うーん、使い魔でもないし、やはり何かの精霊のようです。

「お名前は何ですか?」

ぬいぐるみのようなモノはめんどくさいようにして。

「シータと言う事にしておこう」

うぅぅ、変なモノを召喚してしまったな。

仕方ない、魔法陣を使って消術を掛けよう。

私はシータを召喚した紙を取り出してみると魔法陣は跡形もなく消えていました。

どうしよう、消術が出来ない。

「どうした、アリス?呼んでおいで返すつもりか?」

「どうして私の名前を?」

「こう見えても『時』の精霊だからな」

は?魔法陣一枚で『時』の精霊が呼べるわけがない。

「その目は疑っているな。よし、時の流れを止めてみるぞ」

――――……。

「どうだ、凄いだろ」

「あのー?何も起きませんでしたよ」

「そら、そうだろ、お前も止まっていたからな」

「……」

「久しぶりの世界だしばらく、やっかいになるかのう」

可愛くない、可愛くない、可愛くない、異界スライムの方がまだましです。




などと思っていると瞑夜さんが空き教室に入って来ました。

「何です?その不細工な猫のぬいぐるみは?」

瞑夜さんはシータを見るなりつい不細工と言ってしまったようです。

「ですよね、このぬいぐるみに憑りつかれてしまって」

「お前ら失礼な。シータという名があるぞ」

怒るシータを見て瞑夜さんは首をかしげました。

「先輩、精霊のようですが何の精霊ですか?」

「自称『時』の精霊だそうです。何かの野良精霊を間違えて召喚してしまったようなのでが……」

「もう、怒ったぞ、我の奥義を見せてやる、これは時空の流れに微妙に生じる摩擦から生まれるエネルギーを集約して放つ技だぞ、この建物ごと消え失せてしまえ」

そう言うとシータの目が光、

『次元崩壊波……』

空き教室に雷が生じてシータに直撃する。

「にゃににににににに……」

黒焦げになったシータは

「本来召喚この娘にはされないはずが次元の端末に穴が生じて何らかの偶然に召喚されてしまった為、我の力が多次元化して逆流したのか、無念」

と言い残してパタリと倒れる。

こうして何も出来ない『時』の精霊を飼う事になったのでした。


ここに居ても仕方ない、帰りましょう。

私が帰り支度をしていると、シータはむくりと起き上がり。

「何だ、帰るのか、我も連れていけ」

うーん、ここに置いて行くわけにも……。

「何だ、その目は、よしこれならどうだ?」

シータはポンと煙と共に軽く音を発するとサイコロサイズに成ると私の肩に飛び乗り。

「よーし、出発じゃ」

いや、深く考えるのは止めよう、間違えて召喚した私が悪い、連れて帰ろう。

そして、私の部屋に着くと、

「うん?本体はずいぶんと若いな」

本来の私を見てシータは呟く。

「あれ、驚かない、やはり、ばれていましたか」

「髪は長く白百合の様な細く白い体……ま、予想通りじゃ」

「私は前学園長に頼みこんで召喚術の特待生として特別に入学出来たの」

「あそ、それより飯じゃ飯」

興味ないのかよ、ホント可愛くないな。

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